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闘え!ひょっとこ仮面!  作者: 椎家 友妻
第二話 課せられた使命
14/40

7 誕生!ひょっとこ仮面!

 という訳で放課後、俺は再び校舎の屋上へとやって来た。

今日は補習もなくてすぐに来られたので、外はまだ充分に明るい。

校庭からは運動部員達の元気な声が響き、それが風に乗って屋上を吹き抜けて行く。

 そんな中、正面に立つ室戸に向かい、俺はややげんなりとした口調で言った。

 「で、室戸君、これから俺は何をしたらええんや?」

 「はい、僕の開発した変身アイテムを使って、まずは変身してもらいます」

 「変身すんの?ここで?」

 「そうです。まずここで変身をして、その状態での動きに馴れてもらいます。ぶっつけ本番で実戦という訳にもいかないでしょう」

 「まあそうやけど、でも、ホンマに俺で大丈夫なんか?」

 「勿論です。今日から鏡助君は、正義のヒーローに生まれ変わるんです!」

 「う~ん、でもなあ室戸君──────」

 「あ、これから僕の事は、気軽にエリックと呼んでください。これから僕と鏡助君は、ともに戦うパートナーとなるんですから」

 「パートナーねぇ・・・・・・」

 「とりあえず変身してみましょう。変身アイテムも持ってきましたから」

 「まあええけどやな、君が言う変身アイテムっちゅうのはどんなんや?やっぱりベルトとかブレスレットとか、そんなやつか?」

 「いえ、僕が開発した変身アイテムは、もっとカッコイイですよ」

 「ほう、どんなんや?」

 「腹巻きです」

 「ちょっと待てやオイ!」

 「カッコイイでしょ?」

 「ダサイダサイ!ダサッ!変身腹巻きって何やねんそれ⁉」

 「戦っている最中にお腹が冷えるといけないので、あえてこういうデザインにしました」

 「余計なお世話じゃ!何でこんなモンで変身せんとあかんねん⁉」

 「そうは言いますけど、この腹巻きにはですね、何と内ポケットが付いているんですよ!」

 「それがどうした⁉腹巻きにそんな機能性は要らんやろ!」

 「それでは早速装着してください」

 「マジで着けるの⁉かなり嫌なんやけど⁉」

 「これを着けないと変身出来ませんよ?それにお腹も冷えますし」

 「だからお腹が冷えるとかはどーでもえーねん!もうええわい!着けるわい!着ければええんやろ⁉貸せっ!」

 もう何かヤケクソになった俺は、エリックが差し出した変身腹巻きをふんだくり、カッターシャツの上にそれを着けた。

前ボタンを外した学ランから覗く腹巻き。泣きたくなるほどダサイ。

そんな俺にエリックは、引き笑いをしながら言った。

 「よく似合ってますよ」

 「やかましいわい!ていうかこの調子やと、変身したら更にダサくなるんとちゃうか⁉」

 「そんな事はないですよ。変身アイテムは腹巻きですが、変身後の姿は、テレビに出ているヒーローに負けないくらいカッコイイですから」

 「ホンマやろうな⁉頼むでマジで!」

 「任せてください!僕はこのヒーローコスチュームのデザインには、かなり自身があるんです!」

 「変身アイテムに腹巻きを選んだ時点で不合格やと思うけどな」

 「まあそう言わずに。じゃあ今から変身する為のかけ声を教えますので、僕が叫んだ後に、続けて叫んでくださいね」

 「それを叫べば変身出来るんか?というか、それを叫ばんと変身出来んのか?」

 「勿論ですよ。変身のかけ声は、ヒーローの見せ場のひとつなんですから。それではいきますよ」

 「おう・・・・・・」

 「『じいちゃん!この竹とんぼ、端が欠けてるよ!』」

 「待て待て待て!何やねんそのかけ声⁉そんな事言うて変身せなあかんの⁉」

 「いえ、今のはただの発声練習です」

 「そんなん要らんやろ⁉しかも発声練習の言葉の選択もおかしいし!」

 「じゃあ、本番いきます」

 「頼むでホンマに」

 「僕の後に続いてくださいね。『ひょっとこ!トランスフォーム!』」

 「『ひょっとこ!』・・・・・・なあ、ちょっと待って。ちょっと待とう」

 「え?どうしました?」

 「ひょっとこって、何?」

 「あれ?ひょっとこご存じないですか?」

 「いや、ひょっとこ自体は知ってるんやけど、何で変身する時にその名を叫ぶの?もしかして変身した後、ひょっとこになるとか?」

 「いえ、それは関係ないですよ。たまたま『ひょっとこ』っていう単語が混じっているだけですから」

 「たまたまなんか?ていうか、このかけ声も大概ダサイぞ?他に何かないんか?」

 「このかけ声でないと絶対に変身出来ない設定にしましたので」

 「何でそんな設定にすんねん⁉」

 「つべこべ言わず変身してくださいよ。ほら、『ひょっとこ!トランスフォーム!』」

 「こいつ何かムカツクわぁ。もうええわい!どうにでもなれ!『ひょっとこ!トランスフォーム!』」

 ヤケのヤンパチで俺はそう叫んだ。

するとその瞬間、腰に着けた腹巻きから、まばゆいまでの光が放たれた!

 「うわわっ⁉何やこれは⁉」

 驚く俺に構わず、その光は俺の全身を覆った。

そしてみるみるうちに、俺が身に着けていた制服が変形し、エリックが開発した変身スーツの姿へと変わっていく!

この腹巻きは、ホンマに変身アイテムやったんか!

 てな具合に感心していると、俺の体を包んでいた光はスッと消えた。

どうやら変身が完了したようや。

 「いかがですか?変身した感覚は」

 「お?おお」

 エリックの言葉に、俺は両腕をぐるぐる回してみたり、その場でピョンピョン飛び跳ねてみたりした。

すると変身する前よりも、何か体が軽くなっている事に気づいた。

 「何か、体が軽くなったな。それに、全身から力がみなぎってくる感じがする」

 俺がそう言うと、エリックは満足そうに頷きながら続けた。

 「そうでしょうそうでしょう。何せ今の鏡助君は、変身前より何十倍も身体能力がアップしていますからね。これで人造怪人とも互角以上に戦えるはずです」

 「そうか、まあ、それはそれでええんやけど・・・・・・」

 と言って、俺は変身後の自分の姿に目をやった。

変身後の俺の姿は、足元は裸足に水色のサンダルを履き、下半身は薄茶色のもんぺ(・・・)。

そして腰に変身腹巻きと、上半身には白で無地のTシャツを身に着けている。

更に顔には、顔全体を覆うマスクのような物が装着されていたので、俺はエリックに手鏡を借りて、自分がどんなマスクを着けているのかを確認した。

すると、その鏡に、


 ひょっとこのお面を着けた俺が映った。


 ・・・・・・。

 俺はとりあえず、エリックにブチ切れた。

 「何やねんこのダサ過ぎるコスチュームは⁉しかも何でひょっとこのお面やねん⁉」

 「どうやら気に入ってもらえたようですね」

 「気に入るかアホ!それにお前、変身後の姿はひょっとこではないって言うたやろ⁉」

 「僕、ひょっとこじゃないなんて絶対に言ってないです」

 「嘘つけぇっ!何でそんなキッパリと嘘つくねん⁉」

 「まあその事はもういいじゃないですか、ひょっとこ仮面」

 「うぉーい⁉何やねんそのダサイ呼び名は⁉まさかそれが変身した時の俺の名前か⁉」

 「イカしてるでしょ?」

 「イカれとるわ!せめて名前だけでももっとマシなのにしてくれや!」

 「じゃあ、腹巻きマン」

 「更にダサくなっとる!」

 「もんぺ太郎」

 「もはや何者か分からん!」

 「ひょっとこ大好き、鏡助君」

 「何かキャッチコピーみたいになってるし!しかも俺全然ひょっとこ好きとちゃうし!もうええ!ひょっとこ仮面でええわボケ!」

 「それじゃあ早速行きましょうか」

 「ああ⁉行くって何処へ⁉」

 「決まってるじゃないですか、人造怪人をやっつけに行くんですよ」

 「ええ⁉こんな格好で行くんか⁉俺絶対嫌やぞ!」

 「じゃあ昼休みの二百五十円返してくださいよ!」

 「いつまでムシ返すねん⁉分かった行くわい!人造怪人なんかブッ倒したるわい!」

 かくしてひょっとこ仮面は、最初の戦いに臨むことになった。

ていうか、これの何処がヒーローやねん・・・・・・。



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