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3 逃げる鏡助
昼休みになった。
俺はそそくさと教室を出た。
守菜ちゃんと室戸が、仲良く喋っているところなんか見とうないのや。
ところが意外な事に、俺が廊下をスタスタ歩いていると、守菜ちゃんがすぐに後ろから追いかけてきて、俺に声をかけた。
「鏡助、ちょっと待って」
その声に俺は足を止めた。
でも、守菜ちゃんの方に振り向く勇気がなかったので、背中を向けたまま訊ねた。
「な、何かな?」
「あのな、昨日の事やけど──────」
昨日の事。
その言葉を聞いた瞬間、俺の脳裏に昨日のあの出来事が蘇る。
黒タイツのオッサンに襲われた守菜ちゃん。
それを助けようとした俺。
でも、結局何も出来んかった俺。
そして室戸が守菜ちゃんを助けるところを、黙って見てるしかなかった俺。
無力な俺、臆病な俺、役立たずな俺、カフェオレ、抹茶オレ・・・・・。
そう思った瞬間、俺は守菜ちゃんの元から走り去った。
背後から守菜ちゃんが、
「あっ⁉ちょ、ちょっと待ちぃや鏡助!」
と声を上げたが、俺は構わず走った。
守菜ちゃんはその後を追っかけて来る事はなかったけど、それでも俺は走った。