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狼は迷宮に酔う~現代ダンジョンで一攫千金を狙います~  作者: 矛盾ピエロ
2章:塔に挑むは一匹の狼、その行く末は未だ誰も知らず
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第11話 ずぅーっと一緒


虎鉄さんを連れて6層から帰還する。

いつもより少し早かった為か、並んでいる探索者も少なくスムーズに買取に移行できた。


道中、モンスターを鎧袖一触に葬る自分を見て、虎鉄さんが「やっぱ冒険者なんだなぁ。」と呟いていた。




(今日は........この人かぁ。)


「あっ!紫苑君!今日はちょっと早いね、どうしたの?どこか具合悪いの?無理しちゃダメだゾっ☆」


受付嬢は土日以外が休みになる週休二日制の仕事らしく、週に2日担当が豊島さん以外になる。1人は石渡瑞穂さん、そしてもう一人が今受付を担当している愛澤心美さんだ。


「いえ、少しアクシデントが発生したので早めに帰還しました。怪我ではないです。」


「ふーん、そちらの方は?遂にパーティーを組む気になった.....て訳でもないのかな。」


「こちらは――――」

かいつまんで今日あったことを報告する。

途中、虎鉄さんにも補足を入れてもらって鍛冶師が簡単にダンジョンに入れてしまうことを報告した時は、一瞬凄くめんどくさそうな顔をした気がするけど瞬きする間にいつも通りの輝かんばかりの笑顔に戻っていたため、踏み込むのはやめた。

彼女は偶に素の表情らしきものを表に出すのだが、探索者のほとんどが気づいていないらしい。一度指摘した時に凄い圧力を伴った瞳で否定されたので、以降は余程のことがない限り見ないふりをしている。


わざわざ藪蛇をつつく必要もない。



「鍛冶師が単独でダンジョンに潜ってしまう危険性については分かっていただけたかと思います。まぁ、ほとんどあり得ない話だとは思いますが前例が出来てしまった以上、上司への報告は必須になるかと。それと、買い取りをお願いします。」


「もー、こんなメンド――重要なこと私に押し付けないでよぅ。私たちの上司すっごく怖いんだからね。」


そんなことを言われても、不可抗力だからどうしようもない。


「今度、お詫びしてね?」

愛澤さんはこなれたウィンクで話を終わらせると、買取査定の作業に移った。

「フムフム、ゴブリンと森雀が幾つかと孤狼(アインズヴォルフ)が一つ、と。 ?...孤狼、孤狼!?えっ!?紫苑君、アインズヴォルフも倒したの!」


「なにっ!お前さん、孤狼を倒してたのか!素材は?!なんか素材は持ってねぇのか!」


興奮した様子で尋ねてくる虎鉄さんを一先ず押しやって愛澤さんに先に返答する。


「えぇ、6層に潜ったので。それと、素材はありませんよ。遭遇は虎鉄さんと会う前でしたから。」


「えぇ、そんな淡白な.....アインズヴォルフは機動力がかなり高いから6層から8層を主軸に活動してる墨田の探索者さんは皆、遭遇したらかなりまずいって言ってたよ。」


「必ず単体で行動しているなら、やりようはいくらでもあると思いますが。探索者はパーティーが基本ですし、囲んでしまえばそれほど苦労しないのでは?」


「それがね、大人数で囲めば囲むほど怒りだして手が付けられなくなるんだって。」

紫苑は誇狼とも呼ばれる由来を垣間見た気がした。


「その話はまた今度聞かせてください。それより、鍛冶契約を結ぶ際には書類が必要になると思っているのですがその書類はどちらで手に入れればいいんですか?」


「書類なら墨田支部(うち)に置いてるよ、持ってくる?」


「お願いします。」


「は~いっ☆」

書類を取りに愛澤さんが奥に引っ込むと、虎鉄さんがぼそりと呟いた。


「なんというか、個性的な嬢ちゃんだな。」


書類への記入を済ませると、いい頃合いだったのでみはるの迎えに行くためにその日は解散とした。




$$$$$

side:大神 美春



私のお兄ちゃんは、ダンジョンが出来てから少し変わったと思う。


世の中にダンジョンが出てきてから私たち家族にはいろんな不幸がやってきた。

私が風邪を引いてお留守番をした旅行の時にお父さんとお母さんが亡くなったと聞いたときは頭が真っ白になって何も考えられなくなった。

お兄ちゃんも意識不明で5日ぐらい眠ったままで、このまま起きなかったらどうしようとか、もうお父さんにもお母さんにも会えないんだと思うと、何も手につかなくなって。


一人っきりになった家で、泣いて、泣いて、体中の水分が全部無くなったんじゃないかってくらい泣いてからもうこのまま皆のところに行きたい、って思ったときに――――


「みはるっ!」

お兄ちゃんが来てくれた。


起きてくれて良かった、とか私は大丈夫だから、とかお兄ちゃんが起きたら言おうと思ってたこと一杯あったのに。


「どう..して...?」


それが病院で寝てたはずのお兄ちゃんがいることへの驚きから来たのか、皆のところに行かせてくれなかった怒りから来たのかは私自身分からないけど。


「みはるが、泣いてる声が聞こえたから。」


その言葉に確かに救われたの。


あの時抱きしめてくれた時のこと、今でもちゃんと覚えてるんだよ?

お兄ちゃん、私を安心させるために力一杯抱きしめてくれたけど、お兄ちゃんの体が震えてるのも分かった。きっと怖かったんだよね。

また自分の前から家族が消えちゃうかもって..........分かるよ、みはるもそうだったもん。

でもね、大丈夫。




「みはる、今日の夕飯は何がいい?」

学校からの帰り道、いつも通り迎えに来てくれたお兄ちゃんと手をつないで帰る。


「んーとね、ハンバーグっ!」


「フフッ、みはるはハンバーグが大好きだもんな。」


「うん!みはる、お兄ちゃんのハンバーグ大好きだよ。」


「そっか、じゃあ張り切って作らないとな。」

微笑ましいものを見るように笑顔を浮かべるお兄ちゃん。


事件があってからお兄ちゃんはあんまり感情を表に出さなくなった。元々、元気いっぱいって感じでもなかったけど、多分悪い大人を近寄らせないようにするため。

いつも感情を表にあまり出さないお兄ちゃんが、私といるときだけは無条件に笑ってくれる。私のことを一番に考えてくれる。

楓ちゃんも家族だけど、一番は私。


「お兄ちゃん、お仕事大丈夫?無理してない?」


「急にどうした?...兄ちゃんなら大丈夫だよ。それにな、楓さんと話してたんだけどもっと沢山稼げるようになったら楓さんも誘って3人で旅行に行こうって話もあるんだ。だからそれまで兄ちゃん頑張っていっぱいお金稼ぐから、みはるも勉強頑張るんだぞ。」


「うん!旅行楽しみだね!」


「あぁ。」


........ねぇお兄ちゃん、どうして教えてくれないの?

左腕、いつもよりちょっぴり辛そう。怪我とかは見た感じないないけど、何かあったんでしょ?

何でみはるに教えてくれないのかな?気づかないわけないのに。



つないだ手から強い圧迫感を感じる。

ダンジョンから戻ってきてみはるの迎えに来てくれる時はいつもそう、少し痛いぐらいに力が込められていて.......きっとお兄ちゃんは気づいてないんだよね。

無意識に私を求めてくれてると思うと、胸の奥がポカポカして背筋がゾクゾクして。



今でも怖いんだよね?あの頃のみはると一緒。

大丈夫だよ、お兄ちゃん。ずっと一緒にいるよ?

私ね、お兄ちゃんが思ってるよりずっとずぅーっと成長してるんだよ?

将来のこともちゃんと考えてるよ?

時間は掛かるかもしれないけど、上手くいけばダンジョンでも一緒にいられるの。

とっても素敵なことだと思わない?

何をするにもどこに行くにも一緒にいるの。


「お兄ちゃん。」


「ん?」


「旅行、楽しみだね。」


「あぁ、楽しみだ。」


ずぅーっと一緒だよ?





どうも矛盾ピエロです。

えーまずは、更新遅くなってごめんなさい。(;´д`)


まぁ、これはいつものことですので善良な読者の皆様は「更新はよせい!」と笑いながら作者のケツを叩いてくださることと思います。

........「ケツを叩く」って比喩表現ですよ?比喩表現ですからね?


閑話休題(それはさておき)


今回も短いですねぇ、作者としては1話あたり5000字くらいを基準に長い短いを判断しているので今後もそれぐらいで長短の判断をします。


......本題行きましょう。

今回の本題は勿論、美春ちゃんですよね。

美春ちゃん、元気いっぱいの女の子かと思いきや内側にとんでもねぇモンを抱えておりました。

俗にいう、ヤンデレというやつでしょうか。

良いですよね、ヤンデレ。

ヤンデレについて語りだすと本文以上の文量になってしまいそうなので割愛させていただきますが作者はキャラとして好きですよ、ヤンデレ。


ただですねぇ、いまだに悩んでおります。

美春ちゃんは別に元気いっぱいの女の子のままでもいいんじゃないかなぁと。

作者としてはどっちに転んでも美春ちゃんはかわいいと思うので、どっちでもいい気がするのです。


なので、感想とかで何か意見を貰えたら嬉しいです。

今後の作中での美春ちゃんの行動にもろに影響を及ぼすキャラの根幹ですので、ちょっと時間を取って感想待ちしようかなと思っております。

ちょうど(?)下書きの余裕も空っぽになっている所ですので。


というわけで!次話の更新は2週間後くらいですかね?正確なことは言えませんが、それぐらいを予定しております。

次話を楽しみにしていただけると幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 美春ちゃんについて彼女は主人公との対比や、帰る場所の象徴としてヤンデレじゃないほうがいいかなって個人的には思いましたマル
[気になる点] 個人情報もらしたっていってたのに主人公に、警戒心があまり感じられなくてモヤモヤした、
[一言] ヤンデレ苦手や
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