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現実主義者の転生のち召喚…からは逃れたい

作者: 朱屋


初投稿です。

ノリと勢いで書いたので、温かな目で見ていただけると幸いです…!


 

取り敢えず私の話を聞いてくれ。


それは、高校生活が一番楽しくなるであろう二年生初日。そう、始業式の朝である。

こんな日に限って寝坊してしまい慌てて家を出た私は、待ち合わせ場所で待っていてくれた心優しき幼馴染二人と共に学校まで急いでいた。

ダッシュで渡る点滅した信号。しかし、渡りきって一息ついた所で暴走トラックが幼馴染の一人、遥香(はるか)に向かってきた。

思わず遥香を突飛ばしたまではいい。そして恐らく私は暴走トラックに轢かれ、命を落としたのだろうことは想像に難くない。

…だというのに、目の前に広がるのは明らかに日本ではない、異国の風景だった。


その後は怒涛の展開。

私はどうやらお城の中庭に居たらしく、武装した兵士さんに追いかけられ、呆気なく捕まり、なんか偉そうな人が助けてくれたが更に偉そうな人の前に連れてこられた。

驚いたのが、そこには何故かもう一人の幼馴染である雄馬(ゆうま)の姿があったこと。

落ち着いた後に話を聞いたら、雄馬はトラックに轢かれそうな私を助けようとして、気付いたらあの場所に居たらしい。…ということは、雄馬もトラックに轢かれてしまった可能性が高い。

なんたか申し訳ない気持ちになりつつも、あの後一人残されてしまったであろう遥香が心配になった。あの子はとても優しくて寂しがり屋で泣き虫で、そして何より…雄馬が好きだったから。


…話を戻そう。

連れてこられた部屋はとても広く、所謂謁見の間?のようだった。数段高いところに座る人物は女と見紛うばかりの美形さんで、目がしぱしぱする。

その美形さん──まさかと思ったが皇帝さんだった──が言うには、今居る国は華黄国(かおうこく)といい、私達の世界とは違う世界だそうで、私達がここに居るのは彼らが喚んだからとのこと。


喚んだ理由が『世界の救済』。


今、世界は未曾有の危機を迎えていて、その危機を救うために異世界から伝説の神子姫(みこひめ)を召喚することにしたと。そして、その神子姫はなんの間違いか私らしい。異世界人は雄馬もいる事を指摘したが「神子()は乙女であると決まっている」と一刀両断されてしまった。

とにもかくにも、神子姫として大陸に散らばる五獣将(ごじゅうしょう)とやらを探し出して力を解放させることで、神獣を召喚する。そうすることで世界の邪気が浄化されて均衡が保たれ、平和が訪れる…らしい。


ということで、なんやかんや有りつつも旅をすることになった。

雄馬は危険な旅に関わらず、召喚特典か身体能力が上がっていたから問題ない、と愛用の竹刀を軽やかに振り回しながら笑い、着いてきてくれた。…皇帝さんまで着いてきた時には流石に吃驚したけど。

旅は波乱万丈ながら、五人中二人までは順調に見付かったし力の解放もできた。でも、漸く三人目らしき人物を見付けた時、予想だにしないことが起こった。遥香が現れたのだ。五獣将の一人と名乗る男と共に…。

その男は遥香こそが真の神子姫といい、私は偽物…いや、誤って喚び出され、神により代替として力を貸し与えられただけで、既に解放された二人も本来の力までは解放されていないと言われた。


まあ、その後色々と泥沼展開があったが割愛し結果のみ言うと、男は皇帝さんの兄で五獣将ではなく国を乗っ取ろうとしていた反逆者。但し、悪しき意志とやらに操られていたっぽい。

そして遥香自身は本物だったけど、神子姫ではなかった。私達がいなくなって塞ぎこんでいた時に悪しき意志が遥香を唆し、この世界に喚びだしたのだ。まさか遥香も死んでしまったのかと心配になったが、違う方法でこの世界に来たと聞いて心底安心した。

そうそう、ちなみに雄馬が四人目の五獣将だった。こっちには心底驚いた。


五人目はそれこそあっさり見付かった。四人揃った段階で、皇帝さんが五人目だと明らかにされたのだ。どうやら四人揃った時に、五獣将の証が発現したらしい。

皇帝さんの力も覚醒させ、いよいよ神獣召喚を行うという前日に雄馬と皇帝さんから告白された。突然だったし、明日は神獣召喚だしで戸惑っていたら、「全てが終わったらどちらかを選んでくれ」って言われて悶々としながら眠りについた。


そして神獣召喚当日。

準備も整い、祝詞(のりと)を唱えようとしたまさにその瞬間に敵が総攻撃を仕掛けてきて、それどころではなくなってしまった。皆は戦いに向かい、私は少しでも早く神獣を召喚しようと祝詞を唱え続ける。

しかし、あと少しのところで敵の幹部が私の所まで辿り着いてしまって、もう駄目だと思ったその時──私は遥香に庇われた。遥香の背中から流れ出る血。一瞬で私の頭は真っ白になった。


気付いた時には敵は消え、目の前には神獣がいた。

どんどんと冷たくなる遥香に焦りばかりが募る中、神獣が言った。

今すぐに元の世界へ戻せば遥香を救える、と。

但し、遥香を戻せば私や雄馬は戻れない。

そして例え遥香を還さずに私達が事故の前に戻っても、遥香が死ぬ運命は変えられないとも。

いつの間にか近くにいた雄馬は私の望みが分かっていたらしく、笑顔で頷いてくれた。

きっと遥香は怒るだろう。それでも、遥香を元の世界へ還す。どうか、私達の分もあの世界で幸せに生きてと願いながら。




その後、神獣のお陰で世界に平和が訪た。

告白の返事をいつすることになるのか内心どぎまぎしていたが、それよりも何よりも戦争の後始末が大変で、本当に全てが落ち着いたのは一年が経った頃だった。

神獣が現れたあの日が祭日となり盛大にお祭りが開かれた夜、二人に呼び出された。私の答えを聞くために。

私の答え、それは────。












──────という夢を見たんだ。


いや、まって。怒らないで聞いてほしい。

夢と言うのは正確ではない。正しくは夢ではなく『記憶』。そして『見た』ではなく『思い出した』なのだ。

実際に体験した事では勿論ない。でも私はこの流れを知っていた。


()()()()()


私には物心がついた頃から別の人間の記憶が混在していた。薄ぼんやりとした記憶だが、これが前世というものだろうことは幼心にもなんとなく理解していた。そして、その前世で読んだ漫画が夢の内容と同じだったのだ。

なぜ、今その漫画についてだけこんなに鮮明に思い出したのかは分からない。そもそも、前世とこの世界は同じだと思っていたのだが、実際は別世界なのだろうか?地球だとか日本だとかは同じなのに?

しかしあの漫画には、私だけでなく雄馬や遥香までいたのだ。

もしも夢が真実ならば、この世界は漫画の世界ということであり、夢に見た事がこれから起きてしまうのだろうか?


信じられない。信じたくない。


突然襲ってきた現実に、目の前が揺らぐ。

こんなもの所詮は夢だと切り捨てられれば楽だろう。だが、長年付き合ってきた前世の記憶と私の勘が、これが真実であると確信していた。…なんだか、頭が痛くなってきた。

いや、何よりも頭が痛いその理由。それは、その漫画の主人公が私、上城紫音(かみしろしおん)だということだ。


…正直に言おう。絶望しかない。


だってそうだろう?私はあんな女じゃない。

確かに基本的な性格は漫画の通りかもしれないが、それでも絶対に言わないだろう発言や行動をしていた。大体、私はあんな聖人君子じゃないし、理想主義者じゃない。私は現実主義者だ!


恐らく前世の記憶というイレギュラーにより漫画と性格が変わったのだろうが、夢を思い出す度に夢の中の私にイライラする。

敵に対して話せば分かるとか、夢見すぎだろう。


…とにかく夢が真実として、私は夢の通り召喚なんてされてやるつもりはない。第一、召喚される=死と言っても過言ではないのだ。私だけではない。こっちの世界で雄馬は死に、遥香に至ってはあっちの世界で利用され死にかける。そんなこと、私が許さない。


そう考えてみれば、この記憶を思い出せて良かったかもしれない。この先、夢の通りに進むのなら先回りをして危険を回避できるかもしれないのだ。幸い今はまだ春休み。作戦を考える時間はまだある。

そう考え、私は始業式の日を確認しようとカレンダーに目をやり…固まった。


…明日、だと…?


目を擦ってみるも、その行動虚しくカレンダーに印された丸の位置が変わることはない。

認めたくない現実を前に、非現実的な未来から逃れるため、私は丸一日かけて頭を悩ませることになるのだった。





ちなみに華黄国は中華風の世界なのです。


結果、召喚から逃れられたのか…は書けたら書くかもしれないので、書けた際は是非お読みいただけると嬉しいです!


最後までお読みくださり、有難う御座いました!


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