第8話 兄妹デート編③何色のビキニが好き?
ソフトクリームを食べ終わり、内からも涼んだ三人は水着ショップへと向かう。
しかしフユキは一体どんな水着を選ぶんだろう…?
どんな柄?どんな色?さっきのソフトクリームの味はフユキが抹茶を選び、僕と好みが一致していた。でも、水着だったらどうだろう…?僕が好きな色は赤で、女の子のフユキも赤が好き。だという可能性は低いんじゃないか?そもそも女物の水着なんて未知の世界だから、サッパリ分からない―。
「なあ、フユちゃんは何色が好きなんだ?」
「ん?私はねー、水色が好きかなぁ。冬樹くんは?」
「ぼ、僕は赤色が好きだよ」
おぉ。
今までクセや食の好みまでもが、一緒だったのに、初めて違う点が見つかった。
やっぱり佐藤冬樹と佐藤冬樹は全くの同じ人間ではないんだな。でも、僕はフユキが今までどんな人生を歩んできたのか知らない。それがフユキの人格成形に、どう影響を及ぼしていて、この小さな違いが出たのか分からない。二人の「冬樹」の謎を解く為には、このフユキの事をたくさん知っていけば、先が見えてくるのかもしれない――
「私はピンク好き~ッ!!」
知ってる。僕が友奈には質問しなかった事が寂しかったのか、僕とフユキの間に割って入ってきた。
――。いくら血が繋がっている兄妹で似ている所がたくさんあっても同じではない。それと同じ様に、僕とフユキも似ているだけなのかもしれないな。僕が女の子になっても、こんなに可愛くなれるハズないし…
「すっごーい!どれ買おうかな~!」
ショップに着いて一番に、友奈は吸い込まれる様に店内へ入って行ってしまった。…友奈に続いて店内へ入る二人、冬樹は店内に入ると同時に少し足がすくんだ――
ゴクリ…。視界一面に広がるのは女性用の水着ばかり。お花畑が広がっているみたいに、色とりどりの水着が咲き誇っている…。てか、男が入っても良い場所なのか…???冬樹は感じる必要のない罪悪感を感じつつ、助けを求める様にフユキの横に付く。
「うーん、迷うなぁ」
見ているとフユキは三角ビキニばかりを手に取っている…ふむ。シンプルな物が好きなんだな。
「ねえねえ、どっちがいいと思う?」
冬樹の前に出したのは、赤色で手触りがツヤツヤしてそうなチェック柄のビキニを右手に。淡い青色でこちらもツヤツヤとした花柄のビキニを左手に。交互に自分の体に当てながら、冬樹に尋ねるフユキ。
「……。」
「…?ど、どうかな?」
僕は答えが出ないほど真剣に悩んでいた…
それを着ている妄想と、ただ単純な興奮が入り混じってオーバーヒート寸前だ。
「ぼ、僕はやっぱり赤の水着の方が好きかな」
「フフッ、やっぱり~。私は青がいいなーって思ってたけど、冬樹くん赤が好きって言ってたから選んでみたの」
妄想と興奮が混ざった何かに、フユキの可愛い笑顔も合わさって頭がおかしくなりそうになっていた。
「お兄ちゃん目がケダモノ」
横からいきなり友奈の声がしてハッとする。エッチな目とケダモノみたいな目って、どっちが下なの…?
例の如くジト目を向けてくる友奈を無視しながらフユキへ向きなおす。と、
……こちらもジト目を向けていた…。
「冬樹くんってエッチ?」
何だその質問は?「はい」「いいえ」どっち答えても詰んでるじゃん…。
アウェイな場所で、二人に追い詰められて逃げ場が無い冬樹。むしろ開き直ってやろうかとも思ったが、それは悪手な気がするし……
「お兄ちゃん、私に水着をプレゼントしてくれたら見逃してあげるよ~!」
「…!!じゃ、じゃあ私もプレゼントしてくれたら、ちょっとだけエッチな目で見ていいよ…」
条件を出した友奈に乗っかって出したフユキのそれに、「そこまで言うか――」と、ビックリさせてフユキの顔を見る友奈はまだ正常みたいだが、フユキのは何だ!??
からかって言ったのか、本気で言っていたのかは分からないが、考えもせずに言ったのは確かみたいだな…
「な、なんてね。じょ、冗談だ――」 「よし。プレゼントする」
フユキがはぐらかす前に了解を被せて確定させてやった。まだ何もやってないのに、達成感が出ている自分にキモさを感じるが…。
「ん…。ありがとう…」
赤面してモジモジするフユキ。反応から察するに本気だったのか!??
また色々なものが混じり合っていく冬樹を止める一言。
「お姉ちゃん反応がエッチだし、お兄ちゃんも目がスケベ」
また友奈の言葉とジト目でこちらに戻ってこれた…。それにしても、目がスケベとは…?
「わ、私はエッチじゃないもん!」
「まあまあ、それより試着室行こーよ、お姉ちゃん!」
少し怒り目になったフユキは反論するが、その抵抗も虚しく、流そうとする友奈に振り回されるフユキ。
…しかし、水着って試着出来る物なのか…?肌が密着するしどうすんだろう?
疑問に思いながら、二人が消えた試着室の前で待つ冬樹。
「…。」
「フユちゃん?、友奈?」
「「!」」
二人は返事を返してこないが、布が『シュルシュル』と擦れる音が聞こえてきた。
何か音だけでヤバイぞ…。その時、右のカーテンが開いた。友奈が体をカーテンで隠して顔だけ覗かせる。
「早く見せてみろよ」
「むー、恥ずかしい…」
僕は妹の友奈をそういう目で見た事がない。
世間では『妹萌え』が流行っていてそれは分かるが、そこから性的興奮する物もあるらしい。本当の妹が居て分かるが、どんなに可愛くても興奮はしないぞ……、萌えはするけど――。
シャッ。カーテンが開いた。
ピンクの水玉模様のホルタービキニを着けて出てきた友奈はもちろん萌え。であって、可愛い。
「どうかな…?お兄ちゃん…」
「うん。可愛いぞ、友奈。」
顔を赤くして恥らっていたが褒めたら、「えへへ~」とニコニコしている。
「これ買う…」
友奈は一着目で決まってしまったらしい。しかし、フユキは遅いな…まだかな…?
おあずけを食らっている犬の様にソワソワして落ち着かない冬樹…。
「冬樹くん…」
カーテンの奥から声がした。
ついにきたか!と即座に反応した。
「着たか…?」
シャーッ。ゆっくりとカーテンが開いた……
「…ッ!!」
ま、眩しい!!!赤いチェック柄の水着を着て現れたフユキが眩しすぎる…!
長い手足に、透き通る様な白い肌。しかも胸が大きいぞ……。
実際にはCカップ程度なのだがDTの冬樹はビデオの中でしか、女性の胸をじっくりと見たことはなく――
「ど、どうかな?冬樹くん…」
脚をモジモジさせて、目線はこちらへ向けないフユキに愛おしさを覚える……。
「か、か、可愛いよ…。それプレゼントする」
「カ、カワイイ!?……えへへ。ありがとう、冬樹くん」
冬樹に目線を合わせて、満面の笑みでお礼を伝えたフユキ。
「可愛い」の言葉が嬉しかったのか、後ろも見せる様にクルクルと試着室の中で回る――。
「あッ!!」
冬樹は気付いてしまった。
フユキのヒップから、白いパンティーが、チラチラとハミパンしていることに…!
赤い水着にテカテカ、ツヤツヤしている光沢が映える。
フユキが動くほど、ズレて下着が露出している面積が大きくなっていく。
嬉しそうにしているフユキに背徳感を感じつつも、凝視してしまう冬樹。
また友奈に注意されるかも。と興奮しすぎないようにギリギリを自制しながら、水着を試着する方法の謎が解けた瞬間でもあった……。
こんな事ばかり書いていても、ストーリーが進まないので兄妹デート編は次回で最後です。
今回も読んで頂き、ありがとうございました。