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第7話 兄妹デート編②外からは冷やして内からは温めて

ジリジリと照らす太陽。それに加えて、フユキの笑顔を見てから体の内からもジリジリとしてきて暑く、熱く感じる。外と内から攻められて、のぼせてしまいそうだ。


「フユちゃん!友奈!ショップに行く前にどこかで休憩していかないか!?」


冬樹とフユキ、友奈の三人は、水着の専門店があるショッピングモールを目指して歩いている。

冬樹の前を歩くフユキと友奈は、冬樹とは対照的に「キャイキャイ」しながらお喋り…元気な奴らめ。


「冬樹くん、あと少しで着くよ。もうちょっと頑張れそう?」


「お兄ちゃん夏休み始まってから、ヒッキー気味だったから太陽に弱くなってるんじゃないのー?」


フユキは優しく諭すように。友奈は、からかってきやがった――


「夏休み始まってから?」


友奈の言葉が引っかかったのか、フユキは不思議そうな顔を浮かべて質問してきた。

ゲッ。マズイ。

僕は昨日から家に来た事になっているんだぞ。

それが、二週間前の夏休みが始まる前から知っているような言い方を、したもんだから怪しまれている……


「じゃなくて、前からヒッキーしてそうだな〜って思ったの」


友奈は子供が言い訳をするように、意味のない手振りを交えて、さっきの発言を無かった事の様にトボけて誤魔化す。

演技が下手クソだな友奈。


「た、確かに友奈が言う通り、ヒッキーだったかもなー」


フォローのつもりで友奈に合わせたが、焦って棒読みみたくなってしまった。僕も演技が下手クソだな――

でも、ヒッキーは本当なんだけどね…。


「そうなんだー」


あれ?フユキも顔では笑ってるけど、同じく棒読みみたいに返してきたぞ…それは二人を怪しんでなのか、ヒッキーに対してなのか分からなかった。それとも怒って真似したのか…?

それに、友奈みたいなジト目を僕に向けるのは止めるんだ、フユちゃん……。

くだらないやり取りをしていたら軽い熱中症を忘れてショッピングモールへ着いていた。

さすがに館内は冷房が効いていて気持ちがいい。Tシャツに滲んだ汗を乾かす様に、襟元を摘んで冷たい空気を送り込む――。


「ねえねえ、あっちでソフトクリーム食べようよ」


同じ仕草で襟元を摘んでいたフユキが提案する。


「いいね。僕は抹茶たべようかな」


「あ!冬樹くんも抹茶好きなの!?あの苦味が最高だよねっ」


嬉しそうに顔を近づけてきたフユキからは、柑橘系と甘い香りがこっちにィ!――

…何だか、みかん味かミルク味が食べたくなってきた……けどフユキの笑顔を見ると、とても訂正なんて出来ないな…。


「私も抹茶すきだけど、ストロベリーも食べたいなぁ~どうしよう?」


「じゃあ、お姉ちゃんと半分こっつにしよ?」


「!…えへへ。ありがとうお姉ちゃん♪」


満面の笑みを浮かべて、くっ付く二人を見ると本当に仲が良いなと思う。姉妹はもちろんだが友達同士にも見える。何だか微笑ましいな――


微笑ましさを感じて眺めているが、同時に「あの二人の間は凄く良い香りがしそうだ」と、真剣な眼差しでフユキと友奈の密着点を見つめる冬樹なのであった。


――。ソフトクリームを食べ終わったら、体の内からヒンヤリとしてきた。


「美味しかったね――、…もし私が違うの頼んでたら、冬樹くんは抹茶くれた?」


唐突な質問にドキッとした。フユキは可愛く笑う。

あざとさを感じなく、素で聞いてるんだと思う。でもさっきからドキドキさせられっぱなしで、少し悔しいから僕はからかってやろ。


「いいよ。でも間接キスになっちゃうよ~」


言った瞬間に「やっちまった」と思った。所詮DTが頭をフル回転させても、女の子ひとりもドキッとさせられない。気持ち悪いって絶対思われたぁぁぁ……視界が歪んで気が遠くなりつつも、フユキの方を恐る恐る見る。が――

フユキは目を点にしてパチクリさせている……こ、これはドン引きしているのか…。


「ん。そ、そ、そうね。間接キスになっちゃうのは頭に無かったよぉ。…でも冬樹くんなら別に私は―」


フユキの発言が全く耳に入ってこなかった冬樹は涙目だ。言ってしまった後悔が凄まじいが、(しら)を切り続けて忘れよう……。

その場から一刻も早く離れたくなった冬樹が友奈の方を向くと、まだ食べていた。しかも一生懸命にペロペロとソフトクリームを舐めているが全然減っていない。


「舌ベロ疲れたぁ~、お姉ちゃん食べてよ~」


僕とは別の理由で涙目の友奈はソフトを舐めすぎて疲れているのか、舌が全部戻り切っていない。

友奈の間抜けな姿を見ていたら少し元気が出てきた。


「ふふふ。……食べてあげる」


最初にフユキと半分こにしている筈なのに、そこから半分しか減っていないソフトクリームを受け取るフユキ。ペロペロと友奈と同じ感じで舐めているが、減りの速度がちがうなぁ。などと考えながらフユキがソフトを舐める可愛い横顔をニンマリ見物する冬樹。


クルッ。フユキがこちらに振り向いた。


「はい」


更に半分減ったソフトを僕に突き出す。


「え?」


「舌ベロ疲れた……」


フユキは焦る冬樹の目を見ようとはせずに、斜め下を見ながら口を尖らせ頬を赤らめる。

あ、え?ど、ど、ど、どうしよう。受け取って食べる!?さっきドン引きしてたよね!?間接キスだよね!?――


「……ありがとう食べる」


返事をするまで一瞬の出来事だったが、冬樹の頭の中では走馬灯が走るが如く様々な事を思い出し、考えていた……。ペロペロ。



兄妹デート編は④まで続きます。

今回も読んで頂き、ありがとうございました。

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