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第6話 兄妹デート編①柑橘系は甘い香りと共に〜

居間に光が差し込んだ。



「うぅ眩しい…」



「おはよう、冬樹くん」



フユキの姿が逆光の中、くっきりと浮かび上がる。

気付いたら眠っていたようだ。あんなに考え事をしていたのが嘘のように、気分は晴れ晴れとしていた。

友奈が泣きじゃくった姿も夢だったのかと思えてくるほどに――。


「おはよう、フユちゃん。起こしに来てくれたのか」


「フフッ、幸せそうな顔して眠ってたよ。いい夢みれた?」


「んー。まあね…」


冬樹は照れくさくて、後ろの頭を掻いた。

自覚しているけれど、照れくさい時に後ろ頭を掻いてしまうのは僕のクセだ。ちなみに友奈のクセでもある。記憶が曖昧だけど、今日の遊ぶ(デート)約束をした時にフユキもしていたような…していないような……。


「お、おはよう…お兄ちゃん」


柱の影から出てきた友奈は、横目で僕をチラチラ見ながら口を尖らせていた。

きっと昨夜の事が気恥ずかしいんだな…。大丈夫だぞ、お兄ちゃんは消えたりしないぞ。


「ん。おはよう友奈」


僕の返事を聞き終わったら、そそくさと台所へ行ってしまった。

僕は二人に遅れて台所へ向かった。フユキは昨日の残りの味噌汁を温め直してくれていて、友奈は三人分のご飯をよそう。……僕は婆ちゃんが作り置いてくれたおかずをチンするか~。……。


――。朝ご飯を食べ終わり、各々遊びに出かける準備を始める。僕の格好はTシャツにジーンズ。仮に『デート』だとしても、気合を入れすぎてはいかん。あくまでも自然体だ、自然体…。

フユキはどんな私服で来るんだろう…。女の自分がどんな格好をするのかと言う好奇心が半分に、フユキの可愛い姿を妄想して鼻の下を伸ばす冬樹。

すぐに支度が終わってしまった冬樹は居間へ寝転び、ニマニマしながらスマホをいじって暇を潰す――



20分くらい経っただろうか。二階からドンドンと、二人が駆け降りてくる音が響く。


「お待たせ~冬樹くん!」

「お待たせ~お兄ちゃん!」


声をハモらせながら襖が『スパーンッ!』と勢い良く開いた。

こらこら。家の襖はスカスカなんだから、ゆっくり開けないとだな……

ッ!!!僕は二人の姿に言葉を失った。


二人の格好がペアルック……!

七分丈の白のスキニーパンツに、フユキは薄い水色のTシャツ。友奈は薄い黄色のTシャツを。それぞれシンプルだがイラストも入っている。

そして何より、髪型が一つ結びで片寄せにしているのだ!フユキと友奈で左右逆から。何て、ザ・夏。って格好なんだ…しかも二人とも凄く可愛いし、薄っすら化粧もしているぞ……

これが俗に言う、『双子コーデ』ってやつか!?いや、『姉妹コーデ』か!?


「お兄ちゃん目がエッチ…」


友奈にジト目を向けられて我に返った。目がエッチとは…?


「冬樹くんどうかな…?」


上目遣いでフユキが尋ねてくる。


「うん…。二人とも凄く可愛い…」


思った事がそのまま口から出てきた。目がエッチとは釈然としないが…。冬樹は強めで後ろ頭をボリボリと掻きながら素直に褒めるのだった。

そしてフユキと友奈は褒められて嬉しかったのか、同じタイミングで後ろ頭を掻いていた――。


三人は家を出てからバスに乗って駅へ向かう。それから電車に乗って、駅を5つ越えて街に着いた。

僕と友奈は昨日の疲れからか、冷房が効いた電車でずっとウトウトしていたらしい。フユキが笑いながら教えてくれた。


ジリジリと、駅前広場のアスファルトを照りつける太陽。


「今日も暑いな~」


バス停に向かうまでに汗ダラダラとなっていた冬樹は薄目にして、恨めしそうに太陽を睨む。それにさっきから、フユキと友奈も汗をかいているのだが、柑橘系のいい香りがしてくる。爽やかさの中に甘さがあるような……。何ていい匂いなんだ…柔軟剤かな…?でも僕も同じ物を使っている筈だからも、もしかして僕にも柑橘系で甘い香りが……!!?

――。ドン!友奈に肘鉄を食らった。


「お兄ちゃんバカそうな顔してる」


バカそうなとは…?

目がエッチに続いて、バカそうな顔をしていたのか。それにジト目をお兄ちゃんに向けるのは止めろ、友奈。


「ふふふ。それにしても、友奈は冬樹くんと仲が良いのね。何だか本当の兄妹みたいね」


「え!?そうかなぁ!?えへへへ」


「えへへへ」じゃないよ友奈。少しは誤魔化せって。


「ま、まあ僕も歳の近い妹が居るから、友奈も可愛く見えるかなぁ!」


いかん。上ずって変な声を出してしまった。

それに対して、フユキからどんな反応が返ってくるのか気になり様子を伺うように見てみると、二人の視線が交差してしまった。


「私、何だか妬けちゃうな…。じゃあ冬樹くん、私のお兄ちゃんにもなっちゃう…?」


下から見上げる様に覗き込むフユキ。


「え?お兄ちゃんって?それって本当の兄妹(きょうだい)…とかそういう…」


顔を近づけられて僕の心臓は跳ね上がった。

それに柑橘系とミルクみたいな甘い匂いが混ざった香りがフユキからしてきて、脳ミソが溶けそうだ。

正常な判断が出来なくなってきた冬樹だが、それを止めるように微笑むフユキ。


「なんてね。私がそうだったらいいなー。って思っただけだよ。変な事言ってごめんね」


イタズラに笑うフユキは、柑橘系の甘い香りと共に冬樹から背を向け歩き出した。

「私がそうだったらいいなって思った」って……。意味深すぎるし、なんかドキドキが止まらない。しかし、その意味を深く聞くのは野暮な気がしたので、先を歩くフユキと友奈へ僕は黙って駆け寄った――



肝心のデートの内容が全く書けませんでした。デート編は全4話を予定しています。

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