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思い出を食べられて。  作者: とまとケチャップ
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1話 出会い

この物語に少しでも目をとめていただきありがとうございます。

初めて物語を書かせていただき右も左もわからない素人で、読んでいて気になるところも多いかと思いますが、少しでも楽しんでいただけたらなと思います。

死のうと思ったのはこれで何度目だろうか。まあ、何回だっていい。もともと生きてる理由もなかったのに、仕事もリストラされてしまって本当になにもなくなってしまった。今回こそ俺は本当に死ぬんだ。


梅雨も終盤にさしかかり、天気は曇りとはいえジメジメした暑さが続く。

ビルの屋上にいるからだろうか、風がいつもより強く吹いている。そういえば少し早めの台風が日本にやってきたってテレビで見た事を思い出す。


フェンスを越え、下を見渡すと平和な日常がただただ進んでいる。この日常ともおさらばだ。別に悔いはない。運動も勉強も出来ずに人と関わることも苦手。何をやっても上手くいかなかったんだから。俺は空中に身を投げ出した。


ビルから飛び降りると時間の進む速さがゆっくりになった気がした。視界がだんだんと狭くなっていく。確か、人は長い間中に浮いていると反射的に意識を失うんだっけ。ああ、俺はもう死ぬんだな。意識が遠くなっていった。





「…っと、ちょっと、ちょっと田中さん!聞こえてます!?おーい!」


ビルから飛び降りたはずなのになかなか地面に着かず、少女の声が聞こえ、俺は思わず目を開けた。


「えっ!えっ、ちょっ、うわぁ!」

目を開けると、そこはまるで写真のフィルムのように時間が止まっていた。口を除いて俺も体を動かすことが出来なかった。


「大丈夫ですよー、田中さん。まだ死ねませんから。ねっ」


陽気な声でそう言いながら、少女は俺の視界に入ってきた。黒くて長い髪に、白いワンピース。大きな目のついた可愛らしい顔は、驚いている俺を見ていたずらな笑みを浮かべていた。


「な、なんなんだよお前!」


「私ですか?私はですねー、んー。少女?死神?天使?ですかね」


「は?」


「実はですね、田中さんの思い出をもらいに来たんです!」



何を言っているのか訳が分からなかった。それでも少女は当たり前のように話を続ける。


「私の食事はですね、人間の思い出なんですよ。もちろん思い出を食べちゃうとその人のその記憶は無くなってしまうんですけどね」


「それでなんで俺なんだよ」


「そこなんですよ!田中さんもーちょっとで死ぬじゃないですか。だからもう思い出もいらないかなーと思いまして。もらいに来ました!」


この子は何を言っているんだろうか。

少女は笑顔のまま話を続けた。


「その代わりですね、タダでというのもあれなんで、田中さんが死んだ暁には再び人間として生まれ変わらせてあげることを約束します!」


「もし記憶をお前にやらなかったら何に生まれ変わってるんだよ」


「んー。ダンゴムシとかそこらへんじゃないですかね」


「適当だな」


「まーまー、細かいことは気にしないで下さい」


「はあ、」


飛び降り自殺なんかしてしまったせいで俺の頭はおかしくなってしまったんだな。ならいっそのことこの少女の話を受け入れてしまおうか。俺が悪いんじゃない。ジメジメした暑さとこのあり得ない状況が悪いんだ。


「いいよ」


「本当ですか!」


「ああ」


どうせ俺の思い出なんて大したものなんてないし。それをやるだけで人生をやり直せるのなら儲けものだ。


「で、どーやってあげたらいいんだ」


「はい!それはですね、その思い出を見て回っていくんですよ!」


「見て回る?」


「はい、言ってみたら自分の思い出を追体験?する感じですね」


おいおい、このつまらない人生をまた繰り返さなきゃいけないのか。


「安心してください。思い出を見て回るだけで、動く必要は全くないんで。」


なんで考えてることわかるんだよ。


「そりゃ、天使ですからね!あれ、死神だっけ」


なんでもいいよ。


「ま、とりあえず私お腹減ってるんで早速思い出巡っていきましょう!」


少女がそう元気よく言うと、あたりの景色は真っ黒になっていった。

最後までお読みいただきありがとうございます。

もしよろしければ、コメントをいただけると嬉しいです。

具体的なものであればご批判のコメントも大歓迎です。よろしくお願いします。

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