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鬼斬忍法帖  作者: 海星
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幼馴染

「ここが早くんの住んでいる下宿ね」由美は緊張気味にインターフォンを押す。


可愛らしい少女が玄関から出てくる。


下宿だもんね。


他の人がいてもおかしくない。


でもこんな可愛らしい女の子と一緒に暮らしてるのか・・・胸がチクッと痛む。


「由美!久しぶり~!」私は由美にハグをする。


もちろん男だった時に由美にハグなんてした事はない。


でも今ならしても大丈夫だろう、同性だし。


イヤらしい気持ちは微塵も無いし。


「あんた一体誰よ!?早くんは一体どこよ!?」私のハグをはね除けて由美が叫ぶ。


「いや、私が早くんよ?」自分の事を「くん」付けするのはムズ痒い感じだ。


「ふざけないで!杉本さん家のお兄さんみたいに都会に行って帰ってきたら、オカマになってた・・・なんて事はたまにあるみたいだけど、『三重のちょっと住んでるところより都会に行ったら別人になっちゃった』なんて話は初耳よ!


早くんが女の人の格好をしているんだったら、ショックだけどまだ理解出来るのよ!


だけど、あなた全くの別人じゃない!


早くんはこんなコンパクトサイズじゃないわ!」と由美は叫んだ。


「くっ!気にしている事を!


悪かったわね!コンパクトサイズで!


好きで貧乳やってる訳じゃないわよ!


それより杉本さんの家、今そんな事になってるのね・・・」私も負けじと叫び返した。


「だいたいこの趣味の悪い部屋に早くんが住んでる訳ないじゃない!


このピンクの障子紙、どこに売ってるのよ!?」という由美の叫びに対し諭すような声色で答える者がいた。


「このピンクの障子紙は特別注文で、一応あと5年分はストックとしてこの屋敷の物置き小屋にあるわよ。


はいはーい、話が違う方向に行ってるわよ。


ここは一旦私に預けてくれないかしら?


申し遅れたわね、私は『百地悠子』。


一応『百地グループ』の総裁をやらせてもらっているわ」


「『百地グループ』と言えば『えんぴつから戦車まで』と言われているあの『百地グループ』・・・」恐るべし百地グループの信頼度・・・猜疑心の塊だった由美を一瞬である程度、信頼させた。


「あら、知ってくれているのね。


そして、このシェアハウスのオーナーでもあるの。


口を挟むのも差し出がましいとは思ったんだけど、ここで起きたトラブルは一応私が責任者となって片付けなくちゃいけない事になってるのよ。」と悠子さん。


「いつの間にシェアハウス?


いつの間にオーナー?


そういや私、一度も家賃払ってないわ・・・」と私。


「家賃なんていらないけど、どうしても家賃払いたいなら私に払ってね。


この屋敷は私が買い取った私の持ち物だから」とサラッと悠子さんは言った。


「驚きの新事実をタメなしで言わないで下さい!」と私。


「アラ、ごめんなさい。


ついでに驚きの新事実をもう一つ発表します。


今日、このシェアハウスに新人が増えます。


じゃあ、自己紹介して下さい」そう言うと悠子さんは物陰にいた誰かを連れて来た。


「こんにちは。


みなさん、初めましてではないですね。


私は焼蛤高校二年生の『高山晶』です。


今まで住んでたところを色々あって出て行かなきゃいけなくなって困ってたところで悠子さんに声をかけてもらいました。


みなさんには迷惑をかけた事もありますけれど、仲良く出来れば・・・と思っております。


よろしくおねがいします!」と晶さん。


「よろしくおねがいします!」と由美以外の面子。


「何で私を差し置いて和気あいあいムードなのよ!?


早くんの話はどこに行ったのよ!?」由美はツッコんだ。


「色々あって早くんは女の子になっちゃいました!


因みに私も元は男子です」新人の晶さんが説明してくれる。


「色々って・・・端折りすぎなのよ!


そんな話で『はい、そうですか』って言える訳ないじゃない!」由美は「お前はツッコミマシーンか」というぐらいツッコミまくっている。


「え~、だって~」


晶さんの態度はしょうがないものだ。


絶対的なルールとして「一般人に忍者、忍術の存在を明かしてしまってはいけない」というものがある。


なので『鬼斬忍法帖』の存在は一般人には決して明かしてはいけないのだ。


だが『鬼斬忍法帖』の説明抜きで女性に変わった経緯を相手に納得させられる人間がこの世にいるだろうか?


いや忍者ではない相手に『鬼斬忍法帖』について説明しても、相手を納得させるのは難しいだろう。


「あ、由美は紀州忍者『梶野太左衛門満実』の子孫で、将軍吉宗に仕えた御庭番(スパイ)の家系だから『鬼斬忍法帖』の事を話しても良いと思います」と私。


「ちっ」悠子さんが舌打ちをする。


「?」由美が怪訝な顔をする。


「悠子さん、武士に仕えてた家系の忍者が嫌いな事は知ってます。


服部先輩を嫌いな理由の一つですもんね。


百地家は『天正伊賀の乱』で織田信長に根絶やしにされかけたんですもんね?


でも由美に罪はありません」慌てて私は二人の仲を取り持つように言った。


「ちょっと待ってよ!


周りに早くんしか忍者がいなかったから、ご先祖様の話をしたのは早くんだけなのに・・・


何であなたが私のご先祖様の話を知ってるのよ!


あなたもしかして本当に早くんなの!?」と私に詰め寄る由美に悠子さんが言う。


「ここは忍者のシェアハウスよ。


ここにいるのは、由美さん、あなたを含めて全員忍者よ。


腹を割って全てを話しましょう?」


忍者のシェアハウスだったのか。


私は住んでたけど全く知らなかった。

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