過保護
救出してもらって以来、悠子さんと聡子さんは少し過保護だ。
二人とも「一人で行動させたからさらわれた」と思っているようだ。
二人とも私より遥かに強いので、頼りにはなるがそれだけではダメだ。
私も二人の力になりたい。
そう悠子さんに言うと「じゃあお風呂で背中を流してもらおうかしら?」との事だった。
お風呂の洗い場で悠子さんの背中を丁寧にこすっていた時、悠子さんに「最近、私の裸を見ても恥ずかしがらないのね」と言われた。
そういえばそうだ。
前は何をそんなに恥ずかしがっていたのだろう?
女の裸なんて毎日自分を見て見飽きてるじゃないか。
確かに悠子さんや聡子さんは自分と比べるのも失礼なくらいの胸の大きさで少しうらやましくもある。
でも違うのはサイズだけで基本的に同じ物が体についている。
クラスでも体育の着替えの時「絶世の美少女でも胸のサイズは残念なんだね」と友達にからかわれる事はあっても、以前みたいに目のやり場に困る事はなくなった。
双忍術を学ぶために覚え始めたメイク技術だけど、今はナチュラルメイクとスキンケアは日課になっている。
「最近、しゃべり方がやわらかくなったね」と友人に言われる。
「そうかしら?」と首をかしげるけれども自分ではわからないものかもしれないわね。
「服部さんが百地さんに負けたそうよ?
あなたも私の事を嫌いなら君主を百地さんに鞍替えしたらどうかしら?
百地さんも『鬼斬忍法帖』の研究をしてるみたいよ?
でも肝心の女の子になった子が男に戻る事に積極的じゃ無いらしいわよ。
フフフ、あなたと同じね。
百地さんの陣営にはあなたの愛するお兄様がいないものね。
気持ち悪い。
元男のクセに男を好きになっちゃったのね。
病弱で家督が継げない男と、男に恋慕した元男・・・半端者同士、お似合いかも知れないわね」声の主、藤林伊吹は目の前で頭を下げ動かない少女に罵声を浴びせる。
「お兄様の治療を続行して欲しければ、あなたは私のために働きなさい。
お兄様がどうなっても良いなら、他の陣営に鞍替えすれば良いわ。
百地なり服部なりに行きなさい」
「御意・・・」晶は一言だけ言うと闇に消えた。
風に乗り誰かが漏らした弱音が聞こえてきた。
「どうしたら・・・助けて・・・孝行樣・・・」




