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鬼斬忍法帖  作者: 海星
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服部

 男に戻るために何もしていない訳ではない。


 『鬼斬忍法帖』の巻物から指紋やDNAなど様々な化学調査を依頼している。


 また女性に変化する科学的なメカニズムも大学の研究機関で調べてもらっているし、それが完全に解析出来たら男性に戻る方法も見つかるかも知れない。


 あと桑名に住んでいた風魔忍者の末裔についても調べてもらっている。


 『鬼斬忍法帖』の巻物を書いたのは風魔忍者の末裔で忍法帖の巻物を親戚が住んでいた忍者屋敷の床の間に隠していた。


 伊賀に伊賀者以外がいたら大事件だが、伊賀の近くに色んな派閥の忍者が集まる事はそれほど珍しい事ではないらしい。


 そもそも伊賀は三重県、甲賀は滋賀県でご近所のお隣同士だった。


 忍者はそこまで縄張り意識が強くなく排他的ではないのだ。


 だいたい「ここは伊賀者の領土だ」と主張する事は「ここに伊賀忍者がいます」と言っているのと同義なので、そこまで忍者は縄張りを主張出来ないのだが。


 なので桑名に風魔忍者の末裔がいても何もおかしくはないのだ。


 そもそも抜け忍の子孫である俺がノコノコと伊賀のそばに来ていても特に追手に狙われるような事はないのだ。


 百地の諜報部の調査によると、桑名にいた風魔忍者の末裔は有名な『風魔の小太郎』の末裔である可能性が高いらしい。


 その後のここに住んでいた風魔忍者の末裔の情報は今のところ掴めていない。


 しかしこれだけの調査が出来るのはひとえに百地家の力だと思う。


 調査にどれだけの金銭がかかったのだろう?


 もう俺は悠子さんに足を向けて眠れない。




 ついに高校が始まった。


 悠子さんは「残務処理が終わってから下宿に引っ越す」と言っていてまだ下宿に引っ越してきていない。


 何の残務なんだろう?


 まあ生徒会を手伝う約束はしたが、今現在生徒会がどんな仕事をしているのか俺にはわからない。


 色々な仕事の残務があるのだろう。


 





 新入生は約200人。


 この中に忍者はどれだけいるんだろうか?


 忍者である符牒を解答用紙に書き込んだら、俺は合格案内が届いた。


 つまり選考をする者の中に忍者がいて忍者を入学させているのだろう。


 生徒の中に他に忍者がいる根拠として、悠子さんのような忍者の存在があげられる。






 ただ悠子さんは言っていた。


 「忍者はその名の通り『忍ぶ者』よ。


 忍者である事を隠している以上、私を『百地の後継者』としては扱ってこないわ。


 相手が私のご先祖様の手下の祖先だとしてもこちらを敬うわけではないわ。


 そりゃそうよね、もし昔の関係を持ち出すなら、私のご先祖様を裏切って抜け忍になった男の子孫である早ちゃんの事を真っ先に殺さなくちゃいけないからね。


 昔の関係を持ち出しちゃいけない。


 相手が忍者かそうじゃないかで物事を判断しちゃいけない。


 だけどね・・・


 それも踏まえた上で風紀委員長の服部の娘にだけは気をつけなさい」


 「服部先輩・・・ですか?もしかして・・・」悠子さんは俺の言う事を引き継いで言った。


 「ご明察。


 彼女は有名な服部半蔵の血縁者よ」


 「血縁者?


 後継者じゃなくて?」と俺。


 「服部半蔵はフルネームじゃないのよ。


 しかも忍者だったのは初代の服部半蔵保長だけ。


 有名なエピソード、敗走する徳川家康を逃がしたのは三代目の服部半蔵正就。


 明治中期に十二代目の服部半蔵正義を最後に正当後継者は途絶えているわ。


 正当後継者に連なる者達の家系を『大服部』なんていうのよ。


 『服部半蔵』までが後継者の苗字と思ってもらえば良いわ・・・厳密に言うとちょっと違うけど。


 彼女は『服部半蔵』でも『大服部』でもないの」悠子さんが丁寧に説明してくれる。


 「彼女の野望は『忍術の大家服部家の再興』で、それには国の暗部の中枢、百地家が邪魔なのよ。


 おそらくあなたにも色々仕掛けてくるわ。


 気をつけなさい」悠子さんは忌々し気に言った。


 よっぽど服部先輩の事が嫌いなのだろう。 

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