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鬼斬忍法帖  作者: 海星
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弱点

  別に衣食住についてあれこれ贅沢を言う気はない。


『築40年のアパート』別にかまわない。


去年リフォームしたみたいだし、そこまでオンボロじゃない。


霊感は全くないから幽霊が出るって噂もそれで安くなるならマイナス材料にはならない。


さすがに事故物件は良い気はしないけど、そうじゃないなら問題はない。


俺はアホな観光客じゃないから西日が照らしつける部屋を『日当たり良好だ』とか『夕陽が素敵だ』とか言う気はない。


そんな素敵さより干した布団がポカポカに暖かくなるほうが良いに決まってる。


たとえ西日しか差し込まないにしても家賃月々三万円は破格の安さだし、掘り出し物の物件だ。


でも問題は去年のリフォーム時に和室をフローリングに替えた、と言う事だ。


布団じゃなきゃ眠れない・・・確かにベッドで寝た事はないし、布団でないと眠れないかも知れないけどそれは問題じゃない。


いや、それが大きな問題になるかも知れないけど、今回はそういう話じゃない。


俺が使える忍術は一つだけ。


忍術『畳返し』が和室でないと、フローリングの部屋では使えないのだ。


俺の忍者としての最大の弱点は『フローリング』なのだ。


不動産屋さんは完全にアホを見る目付きだ。


真っ当な商売をしているのだろう。


普通、一見の俺に掘り出し物の物件を紹介しないだろう。


なのに俺は不動産屋さんが絶対に断られないだろう物件を紹介してくれたのに、断って「別の物件は無いんですか?」などと言っている。


一瞬呆れた表情をした不動産屋さんは、哀れみの表情を俺に向けた。


不動産屋さんはきっと「コイツは月々三万円も払えない貧乏人だ」と思ったに違いない。


確かに金はあまりないし、仕送りもないけど必死でアルバイトすれば三万月くらいは何とか払える。


だけど「三万円を払う金がない」と不動産屋さんに思わせておいたほうが色々と都合が良い。


忍者である事は基本的に秘密なので、「フローリングが弱点だ」とは説明出来ないのだ。


次に不動産屋さんが紹介してくれた物件が一軒家だった。


「家賃は二万五千円、先ほどのアパートより少し安いだけなのですが、この広さであればルームシェアも可能です。


この広さであれば五人で住む事も出来ます。


家賃は頭割りにすれば、家賃は一人数千円です。


あと数年間で取り壊す予定の家ですが、あなたが学生の間過ごす場所を探しているなら何の問題もないでしょう。


私が受け持っている物件の中で最も安い物件です。


もっと安い物件をお探しであれば、余所を当たっていただく他にはございません」不動産屋さんは申し訳なさそうに言った。


俺はこのオンボロ一軒家を借りる事になった。


この家を借りる理由は和室があるから、家賃が安いからというのももちろんある。


だが俺が即決した理由は別にあった。



床の間の板が浮いていたので、板の端を踏むと板が跳ね上がった。


板の中には忍者刀など物が隠せるようになっていた。


「この家・・・不動産屋さんにはわからないだろうけど忍者屋敷だぞ?」俺は必死で浮かんでくる笑顔を舌を噛んでこらえた。


忍者が住むための家・・・俺のための家だ。


そんな家を格安で借りる事が出来た。


 一人暮らし、高校生活に対して膨らむ期待と不安・・・


 段ボール内の荷物を出していた時に思った。


 「この忍者屋敷にはどんな仕掛けがあるんだろう?」と。


 「不動産屋さんに忍者という事は知られたくないんで、彼の前では忍者屋敷の機能を確認出来なかったし・・・確かめてみるか」・・・という事で俺は家の中を探索した。


 塀がひっくり返るところは四か所はあった。


 でもこの事を知ってるのが俺だけじゃないと、鍵がなくても壁をひっくり返して他人が家の中に入れてしまう。


 まあ隠密が隠密、スパイがスパイ、暗殺者が暗殺者、忍者が忍者とバレる事は死を意味するんで、この家が忍者屋敷だと知られる時は俺にとっても終わりなので考えなくても良いのか。


 それ以外にも軒下や天井裏にも仕掛けがあるようだ。


 それについては追々調べていこう。





 ふと気づく。


 今日の昼、見つけた床の間の仕掛けはどうなっているのだろうか?


 不動産屋さんの前で詳しく見る事は出来なかった。


 なので俺は床の間の仕掛けをよくは見ていない。


 





 床の間の板の片側を踏む、すると板が外れる。


 昼間は気付かなかったけれども板が外れたスペースに何かが入っている。


 「何だコレ?巻物?」


 その巻物らしき物には何かが書かれている。


 「何て書いてあるんだ?


 えーっと・・・『鬼斬忍法帖』?


 忍術の虎の巻か?」


 とにかく俺は巻物を読んでみる事にした。

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