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短編集 冬花火

小麦の花

作者: 春風 月葉

 君は麦畑に咲いていた。

 日の光を浴びて金に光る髪を風に揺らし、細く繊細な線を薄い紫色のワンピースで包み、優しげな表情で会釈する様。

 そのあまりの美しさにしばらくの間、私の時間は止まってしまった。

 どうしてこのような美しい女性が麦畑なんかに一人でいるのだろう。

 そんな疑問を興味本意で彼女に尋ねたが、私はすぐにそれを後悔した。

 彼女は平民出身であり、教育というものを受けていないのだと言った。

 よく見ればワンピースの色も元々は深い紫だったようで、色の濃さにところどころ差があり、擦れた部分なども多くあった。

 暗く弱々しい表情を見せる彼女に、私は教育が受けられるよう自分が支援をしてやると言ったが、私はまた後悔をする。

 断られたのだ。

 私は理解ができず、彼女に尋ねた。

 この質問だけが、私にとって唯一の価値ある質問だったと思う。

 彼女は言った。

 教育を受けておらずとも、私は誇りを持ち今を精一杯に生きていると。

 私はこの瞬間に知ったのだった。

 なぜ彼女があんなにも美しく私の目に映ったのかを。

 私の時間は、今の今まで止まるどころか動いてすらいなかったのだと。

矢車菊の花言葉は、教育、優美、繊細、独身生活。

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