何でも屋[スメラギ]
雑多に散らかる事務室に一人の男が欠伸しながらだらけていた。
黒髪黒目に眠たげな眼、身長は190ほど、黒いコートに黒いズボンと黒いシャツ、髪は適当に自分で切ったような髪、整えれば誰もが振り向くような美男子に見える。
その男は手元をくるりと動かすとどこかで作ったかわからないピザを出現させおもむろに食べる。
「…腕あげたな、マルコの奴」
「あんた、いくら前払いだからといって不作法すぎるでしょ」
溜息をついて赤髪の美少女が現れた、胸元を開いた色気のあるチャイナドレスに頭を団子頭にした猫目の少女。
身長は170ほど、すらりとしたスタイルが彼女の魅力を引き出している。
「いいんだよ、顔なじみなんだから、リンファン」
「相変わらずね」
リンファンと呼ばれた少女は肩をすくめる。
「んで、俺に依頼か?」
「そうね、カイト、あんたに依頼よ」
カイトと呼ばれた男、この界隈…、いやこの世界で最強の一角と呼ばれる異端の魔法使いであるカイト=スメラギは欠伸をしながらリンファンの依頼を聞いた。
異世界ルーンベルク
剣と魔法が発展し、戦乱の続く世界。
かつて覇王と呼ばれた異世界より召喚されし王が世界統一をした後、王が死した後、大陸は分断された。
血族は我こそが王といい戦を行い、多くの民は自らが王となるために反逆をした。
その戦は世界を3度滅ぼし、今まさに四度目の危機にさらされた。
その理由は覇王の転生、王は魂のまま大地にとどまり民を見て嘆き苦しみ、また世界を統一せんとした。
一から滅ぼしまた己の選ぶ民を選び世界再生をしようと強大な力で世界を滅ぼそうとした。
だがその覇王の覇道に四人の人間達が立ちはだかる。
一人は傲慢であり民を愛し全てを宝として護る英雄王
ジン=ストラウス
人は彼をこう呼ぶ
[黄金の英雄王]
あらゆる財を持ち己の剣と魔法の力を持ちて覇王の軍勢100万を相手取った英雄王
二人目は穏やかな心を持ち全てを慈しむ半神の女神
リリア=シンフォニア
人は彼女をこう呼ぶ
[慈愛の聖母]
あらゆる聖なる力を持ちて傷つき倒れた者達を癒し鼓舞し多くの者を死地から助け多くの者を勇気づけた。
三人目は異界より転移してきた日本人と呼ばれる人種
藤堂仁衛
人は彼をこう呼ぶ
[狂乱の剣王]
侍と呼ばれる人種であり、そこに狂気の瞳を持ちながら多くの敵を切り伏せた四人の中で一番危険とされる男
四人目は魔法使いでありがら無手を得意とし古武術とされる謎の武術と身体強化魔法を得意とする無属性魔法使い
カイト=スメラギ
[拳の魔法使い]
この世界においてもっとも保有魔力があるとされる男、魔法使いでありながらあらゆる戦士を平定させた最強の男。
彼等は総じて四英雄と呼ばれ世界の抑止力として存在している。
ジン=ストラウスは北の未開の地にて黄金郷とされる国…エルドラドを統括している。
この世界でもっとも栄え富を生み出す魔法の都、そこの王として。
東の大陸では藤堂仁衛が国を興し彼を慕う荒くれもの達を纏め侍の都和国を纏めている。
そこで覇王戦役の時の孤児や家族を失った者達を引き取り過ごしている。
南の大陸ではリリア=シンフォニアが法皇として存在する慈愛の王国宗教国家シンフォニアが存在し
敬虔な信徒が彼女を崇め世界平和に今も尚尽力している。
そして西の大陸
ウエストタウン
唯一王にならなかった男が気楽に何でも屋をしている街がこの街ウエストタウン。
覇王戦役と呼ばれた覇王との戦いで多くの人命が失われ、生き残った者達が作った街。
治安はけしてよいものではないが王にならなかった男、カイトはこの街を気に入ってる。
それは恐らく前世にも影響しているのだろう。
カイト=スメラギは実のところ、藤堂と同じ日本人として前世を生きていたのだ。
実のところウエストタウンは断片的な知識を使い和洋折衷な街並みになっている。
時代としては大正初期か昭和初期程度だろうか、地球であり日本で過ごしていた時の利便性の高い水道や多くの家電製品は
もうすでにカイトの発明としてこの街に浸透している。
「(ま、この世界で知らんもんがいれば俺のもんだわな)」
少し悪い顔をしながらカイトはにやりと笑う、前世では2019年の時期を生きていた青年であったが、事故に会い、とある神に拾われ、魂の異質さを気に入られこの世界に転生してきた。
まあその辺の話はカイトがそのうち語るだろう、実の所その神というのが…。
Bar[神のヤドリギ]
「よー、不良神、息子がきたぞ」
「おー、よく来たな、バカ息子」
黒髪黒目でカイトによく似た50前後の男がくすくす笑いながらカイトを迎える。
男の名はカイル=スメラギ、神としての生を一度止め、人間に転生し、カイトの父親となった神だ。
神としての力を制限されてはいるが、人間として最高レベルの魔術師でもある。
冒険者ギルドではランクオーバーとして名を馳せ通り名は[エレメンタラー]
全ての魔道を修めたとされる賢者としての名として多くの者を魅了する。
「しかし無属性で英雄までいくなんてきもいな、お前」
「知るか、製造元にきけよ、母さんは?」
「ああ、リアナとセシルと買い物だよ」
転生前に出会った神とはいえ、現世では父親なので家族としての情を持っているのでカイルは今更神として敬おうとも思わない。
カイルもまた息子として応対している。ちなみに母親もカイルが転生前に部下であった癒しの女神が転生した女性だ。
カイルはちなみに創造神の一柱で神である時に別の女神と共に産み出したカイルの姉ともいえる創造神に仕事を任せている。
「時間かかりそうだな、んで依頼ってのは?」
父親にカイトはブランデーを頼み本来の目的を聞く。
「…昼間から酒か、肝臓大事にしろよ」
「丈夫だから問題ねえよ」
「たくっ、不良なのは俺似だな、あーリリアーナが来るからお前迎えいけ」
「…リリアーナ姉さんが?」
「ああ、仕事がある程度終わったらしくてな、うちに泊まりにくるらしい」
「…キャンセルで」
「無理だな」
「そうだぞ、カイル、姉さんは悲しいな」
「…母さんが買い物いったのはこれが理由か」
後ろを振り向くと銀髪の目を見張るような美女がにこやかに微笑みたっていた。