狼組と子狼
狼組が書きたかったんです!出来心だったんです!!!
CP要素が無い、友達って良くないですか…生々しくないですが若干血表現あります。痛くもなんともないです。ただ二人と一匹がほのぼのしてるだけ
下腹部に走る鈍痛に無理矢理起こされる。
そう、今日から女の子の日…生理が始まってしまったのだ。
私は薬を受け付けない体質らしく、酷い時はとことん酷いし、軽い時は物凄く軽い。
それが、今月は酷い日だったのだ。それも、物凄く。
今日のスケジュールを手元にあった携帯で確認し、大した仕事も入っていない事を確認すると社に連絡する。理由は「体調不良」と。
私は自分で言うのもアレだが女らしくない。スカートなんてものは学生以来履いてないし、長く伸びた髪だけが、唯一女性と表してくれるものだと思う。
だがしかし、いくら男勝りでも、こればっかりには勝てないのだ。女に産まれた私を恨む。ついでに私を女として産んだ母も恨む。理不尽なんて言葉は知らない。私の辞書には理不尽なんて文字は生憎記載してない
無事に有給を確保した私は布団に包まる。動く気にもなれないし、腰が痛い。眠気が襲う、体全体が鉛になってしまったようだ
死にそう。冗談抜きで、普通に、どストレートに死にそう。一層の事死んでしまおうか、なんてぼんやりする頭で考える。
ぴんぽーん
インターホンが軽快になる。死にそう、立てない
「あれ?水雫さーん、おらんのー?」
聞き慣れた関西弁に、早く立たなければと腰を上げる。血がつつー、と内股を這う感触に顔を歪める。彼の側で「がう」と言う声も僅か乍であるが聞き取れ、恐らく散歩の途中で寄ったのだと推測できる。
「はい…遅くなりました…」
がちゃりと扉を開けると私より遥かに身長の高い、片目を髪で隠した月影さんと、その足元には子狼のヴォールク…。
いつものメンバー?にほっと胸をなで下ろす。
すん、と月影さんが鼻を動かすのが分かった。____バレた。直感でそう分かった。絶対バレてるこれ、只でさえ光の当たらない場所で生きているのだ、血の匂いなんてこびり付くほど嗅ぎなれてるだろう…
「水雫さん、どっか怪我してはります?
ほら、包丁で切ったとか…」
ほら、やっぱり。だから私はこの日嫌いなんだ。慣れた人には一発でわかってしまう、この異臭を発するから。
「…あ、もしかして女の子の日…?
あわわ、ごめんなぁ水雫さん、わざとじゃないねん、えっと、その、血の匂いがしたから、その」
大丈夫、月影さんが慌てる事じゃない。正直私が月影さんのリアクション見て焦ってる。
それに対してヴォールクは澄ました顔で大人しく座っている。
「そんな、大層な事じゃないですよ…?
上がっていきます?外、寒いですし、お茶なら出せます…」
確か、携帯を開いた時に少し見たのだが、外の気温は零度を下回っていた筈。冷気が部屋の中に滑り込み、生理のせいでかいつもより下がった体温の私を包み込む
「えっ、ええよ、ゆっくりして、な?」
赤面し、しどろもどろにそういう月影さんを見て、微笑む。
寒いのだ、早く扉を閉めたいのだ。頼むから早く入ってくれ、寒い
私のそんな目線を汲み取った月影さんは渋々、と言った感じでヴォールクを抱き、「お邪魔します…」と扉を潜った。私は潜ったのを見ると即座に扉を閉め、冷気を遮断する。私は月影さんに「先部屋行っといてください」と述べる。今日は居留守を決めこむことに決めた。但し、月影さんとヴォールクは別とする。
振り返ると月影さんが部屋に入るのを見たから、私も続いて部屋に入る。
良かった、昨日掃除しておいて。部屋だけ見れば立派な女性…だと思う。
「適当なところ座っといて下さい…。
何飲みます?珈琲?紅茶?」
「あ、っと…珈琲、ええかな?なんか手伝おか?顔面蒼白やで、大丈夫?」
「大丈夫じゃないです…子宮ロードローラーで轢かれてる感じします。死ぬほど痛いです。」
そんな喩えを聞くと月影さんはひょえ、と声を漏らし「女の人って大変なんやなぁ」と小さく零す。なんなら私の子宮と取り替えっこしてほしい。
そんなことを考えながら、少し上等な珈琲を淹れる。ヴォールクは何飲むんやろ、と考えた結果、ホットミルクを出すことにした。
暫くすると心地いい珈琲の香りがする。何気にこの匂いが好きだったりもするが珈琲は苦くて私はあまり飲まない。苦手である
「おまたせしました」
コトン、と一人と一匹の前に先程淹れた珈琲とホットミルクを置く。
私はヴォールクと同じホットミルクを淹れた。本当は紅茶の気分だったのだが、辞めた
「…ほんまに大丈夫?なんかこの世の終わりみたいな顔してはる」
珈琲を受け取るとありがとぉ、と例を述べられ、いいえー、なんてたわいない話をしながら珈琲を啜る相手をぼーっと見る
「大丈夫やないです…死にそう。交換しません?ね?」
「否、遠慮しとくわ…その、薬とか飲まへんの?」
「薬効かないんですよ…理不尽じゃないですか、やになってきます。」
「がうっ」
ヴォールクが私の膝の上に飛び乗る。
動物特有のあの温かさに、やんわりと頬を緩める。そっと、毛並みを梳くように撫でる私を見て月影さんが微笑むのが分かった。
「ん、ぬくい方が水雫さんのアレも楽になるかもしれへんからな…」
もぞもぞと動き出す月影さんを見て、はて?と首を傾げると月影さんは私の後ろに座り、抱き締めるような形をとった。勿論、抱き締められてはいないが、ふわふわとした月影さんの温かさが、私の体を駆け巡った。____暖かい。
「…月影さん、お仕事は?」
「今日は珍しく休みなんよ。やからヴォールクの散歩ついでに寄ったん。家、ここら辺ってゆーてたからな」
「あれ、私言いましたっけ、記憶にないんですが」
「そりゃあなぁ、だって水雫さん酔った時やったし。たまたま覚えてたんよ」
「あ、なら記憶にないの当たり前ですわ…。
…こんな所でこんな事してたら怒られないですか?」
「大丈夫やと思うで~?オフやし、あの人もそんなピリピリしてないし」
「そうですか…なら良かった。」
眠気が本格的に襲ってき、月影さんの方にもたれ掛かる。先程まで外に居てた筈なのに、凄く暖かかった。下腹部の痛みが、和らいだような気がした。
「…水雫さん、眠いんですか?」
「ん…。ヴォールクも寝てしまったので…つい」
膝の上に乗ってるヴォールクはもう既にお休みなのか、目を閉じ、静かに呼吸をして眠っている。
私はもう少しだけ、起きてようと決めた。人の声が少し恋しくなったのだ。
「そっかぁ、眠いんやったら寝てな。…その、辛いやろうし。」
「辛いですね…何回でも言いますけど月影さん子宮いりません?もう痛くって…」
「それやと水雫さんが赤ちゃん産めへんやろー?…興味はあるけど、こんな目の前で実演されたらなんかなぁ…痛そう」
「そうですねぇ…もう、痛いったらこの上ないです。もう、なんというか、言葉に表せない痛さ」
あぁ、駄目だ、寝てしまう。
瞼が重くなってきて、うつらうつらしてくる。意識が、霞む
「…おやすみ?」
「……おやすみなさい、です」
そう呟いたと同時に、私の意識は糸切れた様に、暗転した
____
起きた時は昼の3時を超えていた。
寝すぎた。
私はベッドの上に寝かされ、月影さんの姿も、ヴォールクの姿も見当たらなかった。恐らく帰ったのだろう
机の上にはオムライスが乗っていた。メモと一緒に
『水雫さん、おはようさん。
少しは楽になったかなぁ?
台所借りて、オムライス作っといたから食べてな。
冷蔵庫の中に食料らしきものが見当たらんくてびっくりした。どうやって生活してるん?
まぁ、ちゃんとご飯食べてな。栄養付けて、また遊ぼ?
あと、紫の拠点に無断で乗り込んでくるのはほんま危ないから、来る時は事前に連絡してな。
月影』
私はメモに目を通し終わると起きた時より楽になった下腹部を撫で、オムライスを食べ始めた。
台所に、使った形跡があるのが唯一月影さんが訪ねてきたという証拠だな、なんて考えながら。
ゆーきと話してたネタをようやく文に起こせて茂野は満足です
有難うございました!!