表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
枢軸国の栄光  作者: 真姫ちゃん推しの結月
4/90

日常と過去

 スペイン内戦が終結し、本国に帰還してから早二日が経過した。午後の商店街の中で一人軍服を着た男が時計台に背を預けて待っていた。

「すまんなヒルデ遅れた」

「気にしていません」

 時計台に預けていた背を離し、隊長の後ろに付いて歩くヒルデ。彼らの向かった場所はバーだった。しかし、普通の居酒屋ではなく総統自らが経営を担当しているので、基本は24時間営業。そして、各国の酒が集まっている事で夜には大勢の客が来る。だから、昼から飲みに来たのだ。

 一見周辺の居酒屋の収益が著しく低下し、経済が滞ると思われるが、あくまでここはバーなので料理があまりなく、精々枝豆や冷奴、ウインナー等で大抵の客はつまみと日替わり酒を飲み食いし、近くの居酒屋にはしごをする。

 では、何故直ぐに居酒屋に向かわないのか。それはここの店が周辺のお店と提携し、この店で飲食した者に周辺の居酒屋で使える割引券を与えているからだ。これにより、多くのお客はこの店を経由して他の居酒屋に行くのが定番となっている。

 ヒルデ達もそうなのかというと、彼らは単に酒を飲みたいが為に来ただけである。ちなみに、このお店は予約が可能。

 日が沈む頃合いにヒルデ達は店を出た。隊長は泥酔の一歩手前まで飲んだくれたが、ヒルデは酒に強いのかあまり顔では分からないが足の多少のふらつきを見るにやはり酔っ払っている。

 昼に集合した場所に戻り、隊長と別れると路地を通り帰宅していた。その時、少し汚れてはいるが淡いピンクの透き通るような髪で先が切れている元は白かったと思われるワンピースを着た少女がヒルデとすれ違った。

 ヒルデはその少女に既視感があり、誰かにも似ていると思った。足を止め考えるが、誰に似ているかは思い出せない。そんな疑問を持ったままで再び歩き始める。その時だった。

 彼女は五人の柄の悪い男の一人にぶつかり、脅され、行き止まりの通路に連れて行かれる。それを見ていたヒルデは彼らの横暴を止めるために声を掛けた。

「君達何をしている」

「何ってこいつが俺にぶつかって謝りもしねぇから体に教え込んでやろうとしていたのさ」

 ヒルデは男の話など耳に入らずにいた。思い出したのだ少女の顔を見て。自分の母を。

「そんなのは(てい)のいい言い訳だ。警察署まで連れていってやろうか?それとも、病院の方が良いか?」

 安易な挑発に腹を立てた男が殴り掛かってくるが、そんなものがヒルデに当たるはずもなく、空も切ることなく、強烈な鳩尾(みぞおち)を決められ一瞬で気絶する。

 仲間がそれを見て自身が危険に晒されているのを理解し、泡を吹いて倒れている仲間を四人で急いで運び去って行った。

「大丈夫か?いや、その恰好を見るに家は無いのだろう。・・・私の家で家政婦の様に働くのはどうだ?私は見た目から分かるように軍関係の人だ。戦争が始まれば家に帰る時間も無くなり、一人暮らしだから家が汚れるだろう。だから、どうだ?寝泊りは家ですればよい。基本書類や手紙などは振れないで欲しい。それ以外なら何を使ったってかまわん。給料も払う。どうだ?」

「はい。これからよろしくお願いします」

「こちらこそ」

 ヒルデは少女とともに二階建ての家に帰った。そして、直ぐに少女を入浴させた。その間暇なのでテレビを点ける。

 テレビに映るのは基本バラエティや料理番組、ドラマである。その日は総統閣下による演説があり、そのチャンネルを開き、見ていた。

 少女が浴槽から出る音が聞こえた。ヒルデは彼女に着る服装を自分の私服の中から探し、黒の長袖のシャツ、カーゴパンツに靴下、そして今は11月なので予備として持っている軍で使うジャケット、下着を持ち、何も考えることなく普通に脱衣所に入る。

 少女は驚き、タオルで瞬時に体を隠す。ヒルデも禁忌を犯したことを理解し、着替えを置くとすぐさま脱衣所を出た。

 数分後に少女が脱衣所から出てくると直ぐにヒルデは謝った。少女も事故だからといい許す。その後、ヒルデは玄関で少女の靴を見繕い、少女と共に再度外出した。

「あの、ヒルデさん。どこに向かうんですか」

「あぁ、君の洋服や下着、靴や生活用品買いにな。・・・ん?どうした私の名前が分かった?」

 少女はジャケットの内側にヒルデと書かれた刺繍を見せる。

「そうだった。じゃあ、服を貸した礼として名前を教えてくれないか?」

「ルナ・セリナって言います」

「良い名前じゃないか。これからよろしく頼む」

 衣服を買い、適当な場所でルナの夕ご飯を買い帰宅する。彼女の嬉しそうな顔はヒルデをにこやかにさせ周囲の人間にも笑顔をばらまいた。

 ヒルデは改めてルナを見る。赤い目を見つめていると深淵を覗いてるかの如く魂が吸い寄せられそうになる。彼女が視線を落とす。

「すいません、あまり見つめないでください。恥ずかしいです」

「す、すまない」

 ヒルデも入浴を済ませ、彼女の寝床として敷布団を用意し、二階の寝室でヒルデはベット、ルナは敷布団で寝た。

粛清中

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ