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枢軸国の栄光  作者: 真姫ちゃん推しの結月
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スペイン内戦前編

 一九三六年、四月九日この日一人の士官学校卒業生が第114師団に編入されることが決定した。その名はヒルデ・ユリウス。

 士官学校時代、彼の戦闘技術は現役の軍人をも凌ぎ、隠密作戦、護衛任務、襲撃任務、強襲上陸、空挺作戦、包囲状態からの大隊規模の脱出も一回で学習し、理想形をぶち壊し最適解を独自に編み出した。

 しかし、彼に一度模擬師団戦闘時に師団の指揮権を譲渡譲ろうとした佐官候補生がいたがヒルデは否定した。理由を聞いたら、自分にはまだ才能がないと言い前線に帰って行った。

 ヒムラーは彼の過去が気になり、調べた。彼の人生は小学生の頃に両親が目の前で死に、ドイツ郊外に住んでいた祖父の元に預けられた。

 経歴には何も異常はなく、軍が彼の天職だと推測が立った。

 しかし、ヒムラーはそれだけでは済まさず、周辺の情報を漁った。すると、彼が祖父に預けられて、通っていた中学校での虐めっ子集団が全員男女問わずケガを負っていたことが判明した。

 ヒムラーは彼以外の中学生のことも調べた。しかし、彼も含め全員が大人しかった。けれど、虐めっ子集団から一人虐められていた子が居たのだ。その子は彼の家の隣に住んでおり、名はプリンツ・マルク。毎日ヒルデと共に登校していた。

 詳細な事は本人から聞かないと不明だが、中学の報告書では週一回にプリンツに擦り傷や打撲等の傷が増えていたと記載されていた。

 更なる推測で、ヒルデが虐められている所を発見した。となると、近接戦闘能力の高さはこの頃から発揮していたと思われる。それと、それ以降彼女に虐めは無くなった。

 ヒムラーは彼の潜在能力を買って進行形で作られているヒトラー直属の小隊~大隊規模の部隊の隊長にすることを後々の軍事会議で発表することを決めた。

 ベルリン陸軍駐屯基地一九三六四月下旬

「諸君らが本日入隊するのがこの第一一四師団だ。この師団は新たな部隊運用を検討し作られたため桁が百となっている。では、諸君らが配備される大隊名を発表する。ヒルデ・ユリウス第一歩兵大隊・・・」

 その後、本日入隊した兵士らが次々と所属を言われた。

「以上、それでは各員今から紙を渡す。これが基地の一覧だ。頭に叩き込むように。ゴホン、では各大隊に集合をせよ」

 ヒルデは紙に書かれていた第一歩兵大隊の集合場所に向かっていると常に目の前に師団指揮官が居た。その後も彼はヒルデの進行方向にいた。

 集合地点の室内大型射撃演習場に到着すると師団指揮官はヒルデの方に振り返った。

「ようこそ、第一歩兵大隊へ。我々は君を歓迎する。あそこの机に置いてあるのが君の装備だ。今すぐ装着しろ。直ちに射撃試験を開始する」

「了解」

 ヒルデはすぐさま装備を自分流に装着し、師団指揮官の元へ行き射撃体勢に移行した。

「これより、射撃訓練を行う。これはヒルデの入隊祝いでもある。各員は新人に負けぬよう頑張りたまえ。負けた場合には第一歩兵大隊の全員に酒を奢るように。では、開始!」

 合図と同時に師団指揮官はスイッチを押した。すると、的が射撃場の遮蔽物のいたる所から飛び出した。

 ヒルデはKAR98Kを標的に構えた瞬間、ライフルの発砲音とは思えないほどの音が連続して聞こえた。

 ヒルデは隣を見ようにも障壁が邪魔で隣が見えなかった。しかし、その発射速度から射撃演習に参加している者はサブマシンガンを使っていることが推測できた。

 瞬間、ヒルデは装弾数が五発しかなく、発射速度の遅いライフルから、ハンドガンのマウザーC96<装弾数20発>に持ち替えた。

 右手で瞬時に構え、発射された弾丸は寸分違わず的の中央に命中する。そして、次々と命中を確認する前に射撃を行うヒルデ。

 残り一発となると弾薬グリップを左手に持ち、打ち切ったと同時に装填を行う。

 時間経過と共に近場の的は現れなくなり中距離、遠距離と変わって行った。それに応じて、遠距離はライフルを使用していた。

 他の隊員はサブマシンガンからハンドガンに切り替えていた。

 一発撃つたびボルトハンドルを引き排夾、装填、発射を繰り返す。そして、残り残弾が一発となったとき右手だけで構え撃った。

 撃った反動が右肩だけにかなりの負荷が加わり、大きく腕が上に上がった。けれども、弾丸は的の中央に命中した。

「この勝負はヒルデの勝ちだな。今回の射撃訓練の結果は後ほど発表する。ヒルデの装備はこっちだ」

 そう言い手渡したのはサブマシンガンのMP38だった。ヒルデはそれを受け取り、射撃演習所内にある自分のロッカー内にすべての武器を収納した。

「整列!本日の訓練は終了する。以後は各個の自由で訓練、帰宅しても良い。解散」

 ヒルデは帰宅しようとしたが師団指揮官に呼ばれた。指揮官について歩いて行くとそこは基地内にある知る人ぞ知る酒屋だった。

「師団指揮官どうなさったんですか?」

「今日はお前の入隊祝いだ、他の大隊でも行っているだろう。それと、隊長と呼べ」

 大将、ビールを二杯、注文をし再度ヒルデに向き直る隊長。そして、一枚の紙をポケットから取り出した。

「これが第114師団の試験的なコンセプトだ。前大戦の教訓を取り入れ、本隊はシュトース・トゥルッペ<突撃歩兵隊>の構造を更に発展させたものだ。では詳細を話すぞ、まず第一に塹壕戦はいかに相手の頭を押さえるかだ。よって、機関銃大隊を二つ抱えている。しかし、それで突撃を行うとまだ、側面からの迎撃でやられてしまう、そこで牽引車付きの砲兵大隊による一度きりの援護砲撃が行われる。防衛時はいつでも撤退可能なように牽引した状態での前線部隊の撤退支援を行う。そして、野戦病院も兼ね備えているため被弾した場合直ぐに簡易的な治療をできる。・・・・結論を言うと衝撃部隊だ。塹壕は連なっている事が多い、一つでも崩壊するとそこから連鎖的に崩壊していく。その崩壊させるための実験部隊が俺達だ。この部隊以外にも他の衝撃部隊が居る」

 長い部隊解説中にビールとお通しが出てきて、それを飲食し終わる頃には部隊解説は終わっていた。

 再度ビールの注文を済ませ、乾杯、と言い飲みあった。

 七月下旬

 いつもと同じように訓練に励んでいた第一一四師団、本日もヒルデに射撃演習で勝てる者は現れず逆に完敗し、時は昼になった。

 隊長が呼び出され、基地施設の参謀長官らが利用する場所に向かって行った。その事には誰も気には留めず、ヒルデは新聞を読んでいた。

「スペインが内戦に突入か」

 ヒルデの読んでる新聞にはスペイン内戦勃発と書かれていた。更に読み漁っているとファシズムと共産主義に分かれている事が分かった。

 食事も終わり、格闘での勝負が行われようとした際、隊長から師団集合命令が下った。

「我々、第一一四師団はスペイン内戦の義勇軍として派遣されることになった。五分で装備を整えろ!」

 その言葉で全員が自分の装備を取りに行くため全力で走り始めた。ヒルデも同様にロッカーを開けて、ライフル、サブマシンガン、ハンドガンそしてグレネードを持ち、勝負で賭け得た貴重な配給を使って入手した弾倉ベスト、マガジンポーチを装着し、先ほどと同じ場所に集まった。

 遅れて、機関銃大隊と砲兵大隊も集まり、五分もしないうちに全員が揃った。

「では、スペインに向かうぞ。各員直ぐにトラックに乗れ」

 かくして、ヒルデら第一一四師団はスペインへと向かう事となった。

 移動中にヒルデは隊長にある事を聞いた。それは、他の衝撃部隊も義勇軍として派遣されているかどうかだった。返事はYESだった。

 国粋派スペイン<ファシズム>に到着した第一一四師団と他の衝撃師団は陸軍元帥でもあり、国家元首でもあるフランコ将軍から戦況を聞き、各個の判断でそれぞれの戦線に向かった。

 数日間トラックに揺られていると目的地に到着した。現場の部隊から一通りのことを聞き、今夜はそこで休息を取った。

 翌日、目覚ましの代わりに前線から砲撃の音が聞こえ叩き起こされるヒルデらは直ぐに装備を整え、味方塹壕線まで急行した。

 先ほどの砲撃で負傷者を出した部隊はヒルデらが到着すると後退していった。そして、一時的に収まった弾幕を見て敵の部隊が塹壕から飛び出し、こちらの塹壕を制圧しようと試みていた。

 しかし、丁度MG34の給弾ベルトの設置が完了した。そして、圧倒的な弾幕の中敵の部隊は一瞬にして壊滅した。

 完全な味方の撤退が済むと、次はライフル部隊による塹壕から顔を出した敵の狙撃が始まった。

 塹壕外の土嚢からサイトと銃口を出し、ヒルデが狙うはこちらの貧弱な塹壕とは比べ物にならないトーチカの内部でマシンガンを構えている敵兵。

 針に糸を通すような感覚でサイトを除き、発砲。弾丸は空を切り、トーチカの隙間を通って命中する。

「機関銃大隊の装填は完了したか?」

「はい、既に準備は整っています」

「では、機関銃大隊、砲兵大隊に射撃を開始させろ」

 男はすぐさま走り機関銃大隊と砲兵大隊に援護射撃をするようにと知らせた。そして、砲兵大隊からの砲撃が始まり、着弾すると同時に機関銃大隊の制圧射撃が始まった。

 圧倒的な弾幕の中隊長は全歩兵大隊に突撃を命令した。ヒルデもライフルからサブマシンガンに持ち替え、塹壕から仲間が飛び出すと同時に先陣を切った。

 頭の上を多くの弾丸が通り抜ける敵塹壕ではヒルデ達の接近に気づかず、塹壕の侵入を許してしまった。

 サブマシンガンによる塹壕制圧は瞬く間に終わりを迎えた。

 奪取した塹壕内で弾薬の補充、敵兵の死体処理を行っているとあまりよろしくない報告が届いた。

「隊長先行していた偵察隊より報告です。ソ連の自動車化師団が接近中との事です」

「機関銃隊に今すぐ給弾させろ。砲撃隊も今回は盛大に使えと言っておけ」

「了解」

 隊員がすぐさま他の者に事情を説明し情報伝達作業を手伝ってもらった。

 そして、ソビエトの国旗が掲げられた自動車化師団が見えた。ハーフトラックに乗り意気揚々とヒルデ達の塹壕を突破しようとしていた。

 ヒルデは先ほどと同じように危険度の高いハーフトラックの銃席に乗っている兵士を狙い狙撃を行う。

 銃席の兵士を狙い撃つとまた新たな兵士が銃席に座ると同時にヒルデにまた打ち抜かれた。

 機関銃大隊の装填も終了し、一斉に発砲を開始する。しかし、ハーフトラックの装甲は貫けなかった。

 けれども、ヒルデは運転席に少しだけ開いている隙間を撃ち抜き運転手を殺す。操縦不能になったハーフトラックは付近の車両に当たったり、止まったり、横転したりしていた。

 それでも、圧倒的な物量を用いたソ連の人海戦術とドイツ軍の質を優先した優勢火力、機動戦術では相性が悪すぎた。多くの物量を目の前にゆっくりとだがソ連軍は押し寄せてきた。

「この塹壕を放棄する。直ちに撤収準備を行え。この塹壕は爆破する」

「「「総員撤退!」」」

 機関銃大隊の撤収が最優先で各自それぞれ援護しあいながら最後に残ったのは隊長とヒルデだった。

「先に行け、隊員のけつは俺が守る」

「隊長が先に行ってください。しんがりは射撃のうまい私に」

「そうか、俺の残った弾薬を使え。どうせ、このあと補給を行う」

 隊長はヒルデに自分の弾薬全てを渡し、撤退を始めた。ヒルデもゆっくりと後方にライフルを撃ちながら後退を開始した。

 相手との距離が2KMを切ったとき、本格的な撤退に移った。しかし、その時一つの無線が入ってきた。

「ヒルデ、今そっちに攻撃機が向かった。直ちに離脱しろ」

 ヒルデは大型グレネードのピンを抜き、敵に全部投げ終わると全力で走りだした。その速度は脱兎の如く素早く、先のグレネードで崩された編隊を再形成しながら進軍し続ける自動車化師団よりも早かった。

 ヒルデが全力で走り始めた頃とほぼ同じ時間に自動車化師団の横っ腹を突くような形で攻撃機による絨毯爆撃が行われた。

 攻撃機の爆撃が終わる頃にヒルデは部隊と合流し、弾薬の補充を済ませていた。

 進撃を開始して、はや二日が経過した。時折、伏兵による奇襲に遭うがしかし、この精鋭にはまったく通用しなかった。

 そして彼らは夜に敵首都目前まで迫っていた。

「先遣隊より報告、敵首都はここから数キロメートル進んだところにあるとの事です」

「そうか、ご苦労。本日はこれぐらいで休もう。明日は敵首都を強襲する」

「異論があります」

 そう言って手を上げたのはヒルデだった。隊長は、なんだと聞き返した。

「相手は我々が迫ってきている事を知っているはずです。でしたら、国家元首が違う都市に逃げる前に捕らえて早期講和した方が良いのでは?」

 隊長は数分考えた後に、先ほどの通信兵に耳打ちを行った。そして、全員に傾注させた。

「これより我が師団は敵首都の夜間奇襲を行う。先遣隊は既に首都内に侵入している。第一大隊から第三大隊は敵首都に潜り込み、官邸まで向かうぞ。他の部隊は周辺の警戒を行ってくれ。以上、諸君らの活躍を祈る」

 隊長の命令伝達が終わると、すぐさま各大隊が自分らのやる事を全うするため、装備の点検を各自行い、作戦行動に移った。

 ヒルデの属する第一大隊も同様に、隊長が合流すると同時に、二、三大隊とは別の場所から突入を行った。

 突入すると全員が中腰の体制のまま、街内をゆっくり進んでいるとヒルデの目の前には高台が映った。そこには敵兵がスナイパーライフルを持ち周囲を警戒していた。

「隊長、敵スナイパーの排除許可を」

「ここは敵地だ。しかし、厄介だな。今回は特別だ行け、敵には見つかるなよ」

 ヒルデは部隊と離れ、一人高台を目指した。その道中に幾人かのスペイン兵を発見し、その中で一人で哨戒任務を行っている人が居たため服を拝借した。

 高台の螺旋階段を上り終え、敵狙撃兵をナイフで首元を掻っ切り、狙撃兵のスナイパーライフルを奪った。

 モシンナガンか、噂には聞いていたがこれがソ連のライフルか。お手並みを拝見させてもらおう。

 ヒルデはサイレンサー付きのスナイパーライフルをゆっくりと構えた。

「こちらヒルデ、いつでも援護射撃可能だ」

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