武器商人と旅4
「いらっしゃいませ、13名様で?」
「はい」
「それでは、こちらへどうぞ」
店員にレストランの個別室に案内され、メニューを渡された。メニューは様々な国の料理があった。中には日本の和食もあった。だがその中で最も存在感を放っていたのがイギリスのイワシパイだった。
「マキマキこれは何?」
「やめておいた良いと思いますよ。勝手な偏見ですけどイギリスの料理は食べない方がいいですよ。ちゃんとしたレストランなら信用してもいいけど、ここはイギリスの料理だけはまともなのが置いてないんだ。悲しいね」
ヒルデは察してそっとしておいた。メニューを見ているとやはり納豆パスタがあった。しかも日本の欄に。だが、日本のメニュー侵略はまだ続いていた。ヒルデが度肝を抜いたのはあんかけパスタだった。これはドイツでも見たことが無いためそっとしておいた。
「みんな決まった?」
みんなが頷きメルトが店員を呼ぼうとした時だった。店員が扉を開け入って来た。
「すいません、ただいまスターリン様がお店に入られるとの事でこの店では恒例のカチューシャを店員とお客様全員で歌わないといけないので、ご協力お願いします」
「分かった。みんな部屋から一回出るよ」
メルトが皆に言うと席を立ち一旦部屋の外に出た。ヒルデは窓から外を見るとミサイルを積んだ車が外に止めてありそれから白い髭のオッサンが下りてきた。
「あの白髭のオッサンがスターリンだよ。昔よくドイツの兵器を売ってくれって言われた事を今でも覚えているのは私だけじゃないはず」
スターリンが入ってくるとカチューシャが流れた。ヒルデはばれないように口パクで歌っている雰囲気を出した。ふと周りを見てみると皆真面目に歌っていた。マクソンの手を見てみると歌詞らしき紙を持っていた。この空間で歌っていないのはヒルデ一人だけである。スターリンがゆっくりと歩いてくる。スターリンは一人一人歌っているか確かめにきた。幸いな事にカチューシャは同じような歌詞が続いているのでヒルデも少しずつ歌えるようになった。ループ三回目の時にスターリンはヒルデたちの所にきた。スターリンが1一人一人確認していると五曲目に入った。そしてヒルデはカチューシャを五曲目初めから歌い始めた。
「Расцветали яблони и груши,Поплыли туманы над рекой;Выходила на берег Катюша,На высокий берег, на крутой.Выходила на берег Катюша,На высокий берег, на крутой.」
マクソンもパスされメルトに入った。
「Выходила, песню заводила Про степного, сизого орла,Про того, которого любила,Про того, чьи письма берегла.любила,Про того, чьи письма берегла.」
メルトも難なく突破した。そして、最後ヒルデの番が来た。
「Ой, ты песня, песенка девичья,Ты лети за ясным солнцем вслед,И бойцу на дальнем пограничье От Катюши передай привет.И бойцу на дальнем пограничье От Катюши передай привет.」
スターリンが頷いたがヒルデの耳元まで近づいてきた。
「この後あそこの部屋に来い」
そう言うとスターリンは手を上げて終了の合図を出した。その後メルトたちは元居た部屋に戻って行った。
「ヒルデさん心臓に悪すぎますよ!何口パクで乗り切ろうとしてるんですか!まぁ結果オーライだけど。ソ連に入ったらカチューシャぐらい覚えといてください!」
「それは理不尽だなー。ちょっとお手洗いに行ってくる」
ヒルデはそう言うと部屋から出て、スターリンに来いと言われた部屋に向かった。もしもの時のためにヒルデはポケットにナイフを忍ばせた。
「君がスペインの悪魔か?」
ヒルデが入ると同時にスターリンが声をかけてきた。
「いいえ違います。人違いですよ。世の中には同じ顔の人が三人いるって聞いたことありませんか?」
「では何故ソビエト国民がドイツ語を話せるんだ?」
「・・・あっ」
ヒルデは自然とドイツ語を話していたスターリンにつられてドイツ語を話していた。
「しかも、あの時私はドイツ語で誘ったんだぞソ連国民がドイツ語を理解できるはずがないかもしれない。まぁ、とりあえず座れ話をしたいんだ君と。」
スターリンは自分の目の前にある椅子にヒルデを誘った。ヒルデは警戒しながらも座った。
「護衛は付けなくていいのかい?ヨシフ・スターリン何が目的だ。国の情報か?」
「違う、それとポケットから手を出せ。行儀が悪いぞ。それとも、武器を隠しているのか?」
スターリンがヒルデのポケットに入っているナイフに感づき、警告をする。ヒルデは手をテーブルの上に置いた。
「それで、話なんだが。私がいま最も必要としている情報は国内なんだ。今日の朝、国民から銃撃音が聞こえたって話だ。しかも、その地域はバークー油田だ。何か知っていることは無いのかね?そこの警備隊に聞いたらドイツ軍人が現れたので対処したと聞いただけだった。」
「あそこには、イギリス軍人が居ました。あそこにはイギリスと共同で使用している研究施設がありましたが、研究施設は破壊し、残っているのは飛行場くらいでしょう。おそらく、彼らはまた別の場所で研究施設を建造しているでしょう。ここからは私の完全な推測ですが、ソ連内部には連合の内通者が潜伏しているでしょう。おそらく連合国との戦争中に忘れた頃に反乱してくるかもしれません。これで満足ですか?俺は帰らせてもらうよ」
ヒルデの言葉を重要な事は軽くメモをしていたスターリン。そして、メモが終わったらヒルデに一枚の手紙を渡した。
「ありがとう、参考にさせてもらうよ。それと、この手紙をヒトラーに渡してくれ。中身を見たらどこに居ようと粛清するからな」
ヒルデは手紙を受け取ると直ぐに部屋から出た。そして、何事も無かったかのようにメルト達がいる部屋に戻った。
「みんなもうメニュー決まったけど、もう決まってるの?ヒルデさん」
席についてメニューを見ているとメルトから遠回しに早くしろと言われた。ヒルデはたまたまメニューにあった日本食にした。
「ああ、決まってるぞ。このかつドゥンにする」
「かつ丼ね。すいませーん!」
メルトが店員を呼ぶと直ぐにやって来た。
「味噌カツ丼12個とかつ丼1個お願いします」
「味噌カツ丼12個とかつ丼1個、以上でよろしいでしょうか?」
「はい」
店員は注文をメモするとすぐさま部屋を出て行った。店員が出て行くと同時に愉快な会話が始まった。ヒルデはスターリンから貰った手紙の内容が気になって見ようとしたが怖くてやめた。
「今日はみんなお疲れー!いやー、バクー油田の時は驚いたよ。まぁこうしてみんな無事でいるし問題はなかったね。それと、今日はここに止まるよ。後は自由行動だからみんな買い物を楽しもう!」
ヒルデはナイフを掃除していた。{帰ったら閣下に報告しにいかないといけないな。手紙を渡したら少し休暇をもらおう。久しぶりにルナの買い物でも手伝おうかな}そう考えていると料理が出てきた。
「かつ丼のお客様」
ヒルデはそっと手を上げる。かつ丼が机に置かれる。店員は味噌カツ丼を残りの12人に配っていく。配り終えると部屋から速やかに出て行った。
「それじゃあ、いただきます」
メルトの言葉でみんな一斉に食べ始めた。かつ丼は玉ねぎやカツに味がしみ込んでおり衣はサックっとしており、肉も柔らかくご飯がすすんだ。ヒルデはテンポよく食べ付いてきた味噌汁を飲んだ。味噌汁を飲んだ後にはおしんこを食べ口の中をリフレッシュし、残っていたかつ丼を全て食べた。
「あー美味しかった。ごちそうさま」
ヒルデはそう言うと立ち上がり部屋を出ようとしたらメルトに止められた。
「これ、給料だから。ソ連のルーブルにしといたから。買い物を楽しんで!」
ヒルデは頷くと店を出た。その後集合場所を決めてないことを思い出した。だが、気にせず街を観光した。街はベルリンと変わらないくらい発展していた。ヒルデは商店街へ行くと居酒屋が無いか探した。数件見つかったが入らず今度は裏路地に行き居酒屋を探した。お店を見つけると直ぐに入ろうとしたがロシア語が喋れないことを思い出し、仲間を探した。
クソ雑魚ナメクジのまきゆづです。あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。つい最近止まるんじゃねえぞ・・・を見ました。ネタが豊富で良いですねー・・・タコス!!初日の出は見ましたか?私は見ましたよ。うん。と言うことで枢栄の第16話かな知らないなー。朗読お疲れさまでしたー。次は天転を書かないと!