第13話 レイヴンズの実力
他の方々の小説から書き方を見て学び、模索し、完成形に近づいたら、一話から書き直していこうと思います。
主人公の性格が変化する前に、明確な出来事を載せていなかったり、最初に受けた主人公の雰囲気が完全に崩れていたり、と。
一作目と同じように、主人公の性格面をちゃんと考えていませんでした。
優しいのか、鬼畜なのか、異能の力に溺れているのか。
今は取り敢えず、書き続け、最新話での性格になるように合わせていきたいと思っています。
すいませんでした。また打ち切りをするつもりはないですが。
少しストーリーが変化するかもしれないです。
ここはこうした方がいいなど、ご指摘を下さると、とても助かります!
「いいってことよ!」
親指を立て、グッドポーズを向けるガルフさん。
ジノさんの爽やかさとは違う豪快さが、明るい声や笑顔から滲み出ていた。
「さっきから思っていたのですが……セシリアちゃんの耳は、無いのですか?」
突然発せられた爆弾発言。
レイラさんが、無表情でしれっと放った爆弾が今。投下された。
いや、無表情ではないか。アレはジト目だ。
「え!?」
「……あ、それ俺も思った」
「無いんじゃありません。隠してるんです!」
セシリアが叫ぶ。
椅子から立ち上がり、俯いて、手をグーで握りしめて。
ギリギリ。ギリギリ……と。
というかあれ、隠してるつもりだったのか……。
ガルフさんに同行してからは無くなったけど、その前は耳、ときどき見えてたんだけど。
あの斜めにとんがりとした耳。
流石の俺でも分かるぞ。あれは、エルフだ。
「何のために?」
うっわ、容赦ない。
ジノさんの目線がマサムネから外れた。
「うっ、うぅ……それは……」
今度は、力なくパタンと椅子に座り込むセシリア。
俺の方をチラチラと見てきた。
別にセシリアが、エルフだろうが、魔王だろうが、俺は気にしないんだが。
言葉を濁らせ、言いにくそうにしている。
「エルフ、だからか……?」
だが、ガルフさんがド直球で当ててきた。
一回も目に触れてなかったはずだから、知らないはずなのにな……。
む、もしや。俺の目の届かないところで見たのか!?
「何故それを!」
「図星、みたいだね」
ジノさん鋭い。
こんな、裁判所じみたやり取り、初めて見た。
完全に言葉を詰まらせたセシリアは、観念したように目線を下に下げた。
このままだと、手錠を掛けられそうな雰囲気だ。
「だって……変じゃないですか。オズもアウラも、他のみんなと同じなのに、ボクだけが……なんて」
ぽつり、ぽつりと言葉を紡ぐ。
俺の中でデジャブを感じた。
セシリアは自信が無いんだと。
さっきガルフさんに言われたことを思い出した。
「……そういうことか」
ガルフさんが、フッと笑う。
そして……。
「ほら、オズ。言ってやれ」
「え……? 俺、ですか?」
俺にふってきた。
何故に俺?
アウラでもいいとは思うんだけど。
いや、俺が嫌って思ってるワケじゃないよ。
「何言ってんだ。お前じゃないとダメに決まってるだろ」
「そうなんですか? ……分かりました」
セシリアの目には光る液体が浮かんでる。
突然、別の誰かに慰めさせるのは、俺が嫌だという思いが浮上した。
「俺はセシリアの耳、結構気に入ってるよ。エルフだってことは前から知ってたけど、俺も、アウラも。気にしてないから」
自然に口が動いた。
だが、まだ。終わりじゃない。動かせる。
「そもそも俺。セシリアのこと好きだし、嫌いな所なんか一切無いしな。もしあったとしても、好きになってやる」
言い切った。と思った。
かなりくさいセリフを吐いたとは自覚はしている。
「--オズっ」
目を見開く。
ドスッと押され、後ろに倒れそうになった。
辛うじて踏ん張った俺は、立ち上がり走ってきたセシリアに抱き着かれていた。
俺の質素な服に顔を埋める、セシリア。
そういや俺、2日間風呂にも入ってないし、着替えてもないし。ずっと外にいたし。
かなり臭いんでは……?
「ーーオズッ!」
と、思う前に第二弾。
次は、アウラだった。
……どうすればいいの……?
周りを見るが、レイヴンズの皆さんは生温かな眼差しで、見ているだけだった。
「羨ましいなこの野郎、やっぱ好かれてんじゃねぇか」
と、ガルフさんが俺の頭を小突く。
やっぱ、じゃないから。
他人事のように言いやがってと思い、俺が睨むと。
「こりゃあ、楽しみーー」
いやらしいニヤニヤ顔を浮かべるガルフさん。
だが。
途中でガルフさんの口元が歪み、驚愕に変わる。
ガクッと膝が折れた。
馬車が揺れた。
ただ、左に。何かに押されたようにただただ左に。
「ッ!? 何があった!」
「まずいぞ、ガルフ! 飛竜だ!」
「飛竜だと!?」
そんなガルフさんだが、すぐに指示を飛ばす。
俺は、叫び返すレノンさんの顔色が悪いことに気づいた。
彼は今、飛竜と言った。
つまりはドラゴンだ。
「全員、馬車から出ろ! それとオズ、アウラ、セシリア! お前らだけでも良い、早く逃げろ!」
「……!?」
突然、ガルフさんがそんなことを言い出す。
「何言ってるんですか! そんなこと、出来るわけ無いじゃないですか!?」
俺は、突風の中叫び返した。声が届いたかは分からないが。
レイヴンズは死ぬ気で戦おうとしている。
そう感じ取れたから。
「馬鹿野郎っ!! 俺は大人でお前は子供だ! それなら、子供を守るのが大人の義務だろ! それに、今の俺達なら勝てるから安心しろ。すぐに追いつく!」
「ッ!」
それと、ガルフさん達は、全滅する。
だが、今の言葉は強がっているワケではない。
直感だが、そんな悪い予感が頭の中をよぎり続けた。
「だから、早く逃げろ!!」
ガルフさんは、最後にそう言って、大剣を担ぎ馬車から飛び降りる。
向かう先では既に、戦闘が行われていた。
ジノさんが盾で火炎を防ぎ、リリーさんとレイラさんが遠距離攻撃を仕掛ける。
そして、レノンさんが斬り続ける。
確かに。
確かに、勝てそうではある。
ただしそれは、今と変わらない動きで動き続け、途方もないダメージを蓄積させれば、の話だ。
見た所、ダメージは飛竜まで届いていない様子だった。
痛くもかゆくもない。そんな様子だ。
あれでは、いつか負ける。
「オズ!」
「オズ」
「……」
既に、アウラが刀を抜き、セシリアが【纏風】を使っている。
ガルフさんにはああ言われたが、二人に逃げるつもりは毛頭無いらしい。
もちろん、俺も。
右手を握りしめ拳を作る。
狭い隙間をかいくぐる物がある。
「よし」
紅い稲妻が漏れ出た。
「潰すか」
ガルフさんを助けるため。自分達を害する者を殺すため。
それを合図に、アウラが真っ先に飛び出る。
次に、セシリアが俺に声をかけ飛び降りた。
俺もゆっくりと降りる。
そして……。
「んなっ!?」
一瞬でガルフさんの横まで移動した。
実際は走っただけなんだけど。
「ガルフさん、おれも加勢します!」
「お前、どこから……つか、あれほど逃げろって……チッ。まあいい、ちょうど人手が欲しかったんだ! 死の略奪と黒大蛇殺しの力、見せてもらうぞ!」
フッと笑ったガルフさんの顔が、にやりと変わる。
あれは、勝利を確信した顔だ。
気が早いっての。
「怪我人は出ないに越したことがないので、一発で決めます」
間違いではないんですけどね。
「おいおい……頼もしいじゃねぇか。そんなこと出来んのか?」
「出来ますよ」
それだけ返して、足を動かす。
片膝を曲げ跳躍しようと思った、その時。
「はぁっ!」
「やっ!」
交互に繰り出される斬撃が、深緑の風の刃が。
初めて血しぶきを散らした。
鱗を貫通し、肉に斬り込みを入れる。
アウラと、セシリアの。本気の攻撃だ。
「……マジか」
レノンさん、その気持ち分かります。
8歳の女の子でもこんな事が出来るんですよ。
「じゃあ、俺も」
走り出し、再び右脚を曲げる。
強靭なバネとして、力一杯地面を蹴った。
クレーターが出来上がり、砂埃が空中を舞う。
「ーーグア?」
稲妻を凝縮させたまま、土埃の中から飛び出て、飛竜と同じ高さまで上がったとき。
俺と、飛竜の眼があった。
爬虫類のような眼だ。細い瞳孔が俺を捉えている。
魔物でも呆然とすることってあるんだ。
初めて飛竜のあほっ面を拝めたことに感謝しつつ、右手を額に押し当て……。
「オズ! 一体何をーー!?」
ガルフさんが言い終わる前に、爆散させた。
ドンッ! ではなく、ビリッと。
いつもは跡形もなく消していたが、今回はそうはしない。
単純に稲妻を体内に遠し、心臓を止める。
飛竜は希少で凶悪な魔物だから、価値が高いと聴いたことがある。
こうすることで、後々役に立つと思ったからだった。
「ガッ!? ガガガガガガガガッ!!」
人間が『あばばばばば』なら、これはドラゴンアレンジ化させたものか?
ギャグマンガが、ひょこっと顔を出した気がした。
俺を狙った爪が空振り、虚空を切る。
最初のうちは当然反撃してくるが、直に心の臓が止まる。
暴れ回る飛竜の動きが、途中で遅くなり。
そして。
「……ガ」
地面に墜落した。
こうすれば、動きは封じられる。
ついさっき、動きを止めるために思いついた技だが、上手くいって良かった。
でもまぁ……封じるどころか、心臓止まらせちゃったけど。
……結果オーライ、気にすんな。
「……マジで、やっちまうか……。なあ、オズ。お前一体、何をしたんだ?」
声がした方を振り返ると、ガルフさん達が走り寄ってきていた。
「これですよ」
そう言って、手のひらから紅い稲妻を放つ。
「あのな……無能力者はそんなモン使わねぇからな……」
知ってます。
「まあいい。能力適性検査なら冒険者ギルドでも受けれるから、後でこっそり教えてもらうとして。コイツ、今から冒険者ギルドに持っていこうと思うんだが……」
そこまで言って、ガルフさんが唸る。
言いたいことは分かります。ドラゴンは高値で売れるらしいですからね。
「俺らは要らないので、あげますよ」
「ほ、ホントか!?」
ガルフさんの顔が、パッと明るくなる。
だが、すぐにバツの悪い顔になった。
俺は別にいいんだけど……。
でも、冒険者になるんだったら貰っといた方がいいのか?
「う……でも、やっぱそういうわけにはいかないよな……。……なあオズ。お前って、冒険者になる気はあるのか?」
何を今更。
「あります。というか、街についたら速攻向かう予定です」
「お、おう。そうか」
俺が早口でまくし立てると、ガルフさんは……。
おい、今若干引いてたよな。
すぐに顎に手を当て、考える動作をしても、俺は騙されんぞ。
「じゃあ、俺のパーティにはい……じゃない。俺らは一割でいいか?」
本音ダダ漏れじゃん……。
ガルフさんは、慌ててコホンと咳をした。
レイヴンズには入らないとして、配分はそれでもいいんだが……。
「俺は半分ぐらいでもいいですよ」
と言って、アウラとセシリアを見るが、二人も異論はなさそうだった。
対して、ガルフさんはエンジン組んで、仲間と話し合っている。
いつの間に……。
あ、終わったみたいだな。
「……いいのか? 本当にいいのか!? コイツ一体で王札四枚は下らないんだぞ!?」
まず、金がどういうものかすら知らないんですが。
「いいや、やっぱりダメだ。俺が許せん! せめて……二割で十分だ。それでも多すぎるぐらいだと思うが、すまん! それで、お願いしたい!」
わお、そこんとこ仲間に相談せずに自己完結しちゃったよ。
俺は大金とか要らないから、別にいいんだけど……ガルフさん、頭下げるくらい必死なんだよな……。
ジノさんとか、リリーさんとか。レイラさんに、レノンさん。みんな下げてるし………。
断っても、引き下がらなそうだし、ここは。
「分かりましたって。でも、どうやって運ぶつもりなんですか?」
いや、ホント。
こんなデカいのどうやって……。
ガルフさんが十人いても、まだ足りんのだが。
そういや、こういうデカいのを運ぶ時って、木の板に張り付けて引いて持っていくんだっけか。
でもさ……。それ、作ってる間に火が暮れちゃいそうなんですけど……。
「……そうだった」
おい、考えてないのかよ。
「すまん。早とちったが、高く売れそうな部位だけ切って袋に詰めるしかないんだ。一旦街に帰ってからじゃ、腐ってアンデット化しちまうし……。本当は全部持って帰りたいんだが、もったいないが残りは燃やすしかない」
ガルフさんは、そこで言葉を区切った。
アンデッド化。いわゆるゾンビ化か。
ほんと、もったいない。
日本人として、そう考えると惜しい物がある。
「でも、空倉の輪があれば話は別だ。指輪か腕輪、首輪。その大きさに似合わず、膨大な空間が中にある。様々な形状をしているんだが……すまん、俺らは持っていないんだ」
空倉の輪。
レイヴンズは持ってないようで期待の眼差しを向けてくるが、残念ながら、俺はそんなものがあると今初めて知った。
でも、一応同じことが出来そうではある。
試したことがないから、どうなるかは分からないけど。
例えば、いざ出してみようとすると消えていたり。
……ありえそう。
「ガルフさん、一応ボク。同じことは出来ます」
さっきの話を聞いて、何か思い出したセシリアが、飛竜の傍による。
「指輪とかじゃないんですけど、魔法で」
「魔法……? そういえば、そういう魔法があるのは聴いたことがあったが、ただ……そんな人はAランクでも無いと……!?」
流石、Aランク。
言っているうちに思い出したのか、ガルフさんがセシリアを見た。
そう、彼女はAランクだ。
Aランク万能だな、おい。
「わたし、同じ魔法を使う者として、自信無くします……」
「レイラ……。僕もだよ」
「ジノ……あなた。魔法使えませんよね」
「いやでも、オズ君や、アウラちゃんが……」
「そもそも、わたし達でも出来ないことをやられた時点でね……」
「……諦めよう。アレが、才能ってやつだよ」
すぐ隣で落ち込んでる人達がいるけど、無視しよう。
俺、これでも才能無しだから。
突っ込まない方が良さそうだから。
「ーーすいません。ボクの魔法じゃ入れられないみたいです……」
「……そうか……」
これなら、俺が未知の力に身をゆだねる必要は無いと思っていたが、セシリアは残念そうな顔をしている。
言葉通り、どうやら失敗したようだった。
また、すぐ隣で『才能があっても、無理なことはあるんだね』と。
少し嬉しそうな声が聴こえたけど、気のせいだ。
気にしてはいけないんだ。
「じゃあ、ガルフさん。俺がやりますよ」
やむ負えない。
消えても文句言うなよ?
「え、オズ……そんなことも出来るのか。お前、絶対無能じゃねぇだろ」
何度も言うようですが、無能です。
ガルフさんから、ツッコミが入った。
ここで能力適性検査できようもんなら、既にしてるから。
飛竜の腹辺りに手を当て、そして。
「……おお?」
力を集中させた。
間もなく吸収されるようにして、吸い込まれ、消える。
飛竜の死骸が奇妙な形になった後、そこには最初から何も無かったような錯覚すら受けた。
「お前、今何を……」
「いや、だから。例のやつですって」
今更何言ってんだこの人。
自分の眼に、しかと焼き付けたろ。
見たばっかりなのに何か違うのか、顎に手を置き頭を叩き、息を吸って、そして。
「……普通はそんな感じにはならない」
「は?」
いやいや、そういわれても、俺、普通を知りませんし。
というか、これも異能なんで。
次元が違いますし。
あ、そっか。教えてないから無理やり理解しようとは思えないのか。
「あのな……」
すぐに、訂正するようにガルフさんが教えてくれたのは、普通は渦に巻かれたようにはならない。
シュパコン! と、一瞬で消える、というものだった。
ちなみに、出るときはシュバッ! と。ポ〇モンみたいな感じらしい。
「え、マジすか」
「ああ、マジだ。……雷魔法もどきと言い、身体能力の高さといい……。お前が、パンドラの箱みたいな人間だってことは、よく分かったよ」
「……俺……ホントに人間に見えます?」
この前からずっと気になっていたことだ。
アウラにもセシリアにも、誰にも聞かず俺の中で貯め込んできた疑問だ。
死の略奪からバケモノと言われ、一撃で魔物を屠る人間。
果たして、そんなやつを人間だと呼んでもいいのだろうか。
「……」
ガルフさんは、俺の顔をじっと見て、一切表情を変えようとしない。
どう答えようか迷っているのか、判断に困っているのかは分からないが。
「いや、見えん」
ですよねー。なんか分かってました。
……あれ? ひょっとしてガルフさんの目には、俺は残念そうに思ってると映ってるのか?
一応言っとくが、俺はこっちの方が都合は良いと思ってる。
すぐそばに超能が二人もいるわけですし、その二人が俺を頼ってるというのに俺が非力だと、すごく情けないじゃん?
無いとは思うけど、二人が他の冒険者に引き抜かれたら、たまったもんじゃないし。
そういうのを防ぐためにも、俺自身の力は必要だ。
「そもそもな、お前の髪、眼。何だそれ。黒髪なんて見た事ねぇのに、紅いのが混じってるとか俺は知らんし、街に帰ったら鏡見て、自分の眼を確認してみろ。左眼は黒色なのに、右眼は紅だぜ。しかも模様まで付いてる。嘘だと思って確認してみろよ。前にも言ったがお前の雰囲気もだ。一般人とか下級冒険者とか、余程のバカじゃなければ、いくらガキでも侮れんことぐらい分かる」
ガルフさん。かなり熱心に語ってくれたけど、俺、一応子供だってこと忘れてんだろ。
ほら、セシリアが一般人とか下級の部分で首かしげてるし。
もしや俺の事、人間どころか子供だとも思ってないんじゃないか? ……実際そうだし。この人なら思ってくれても構わないからいいんだけどな。
……それはいいとして、やけにベタ褒めされたけど、同時に呆れられた気もする。
『いい加減気づけよ……』って聴こえたし。
自分で気づくとか無理な気がするんですが、それは。
でも、ガルフさんの言ったことから考えると、ガルフさんってその部類って事なんだろう。
つまり、どこから上級かは知らないけど、そこまで行けばなめられる事はなくなると……。
……ある意味、めんどくせぇ。
「オズは凄いものね!」
「ああ、俺でもそう思う! ということで、俺のパーティに入らないか!?」
何が、『ということで』だ。
あと、アウラ。俺を持ち上げるのやめい! 純粋な凄人に言われたくないやい!
瞳に星が映るアウラと、俺の肩に腕を回すガルフさん。鬱陶しく思いながら口に出した言葉は。
「嫌です、入りません」
ガーンと、ヒビの入った石のテロップがガルフさんの頭に直撃する……ように見えた。
「ま、まあそうだよな……。そんだけ強ければ、な……」
口を開け、ガクガクと震えるガルフさん。
今度は、魂が出ていきそうな……。
あ、出て行った。
後、三時間もすれば夕焼け色に染まりそうな空。
俺の目には、ガルフさんの魂がどこまでも高く、限界を知らず飛んでいくような気がした。
今日は、アクシデントはあったものの平和だな、と唯一思えた日だ。
これからも、この平和が続いて欲しい。
決して、大事な人を失う事があってはならない。
そう思っていても、当然のように奪っていくのが、この理不尽な世界だ。
なら、その理不尽を俺の力でぶち壊そう。
まだ、街までは時間がある。
ここからは歩きだが、その間に色々聞いておこうと真面目に思う俺だった。
いつも読んでくださり、ありがとうございます。