孤独な青の世界~探索編~
真っ青な廊下は見た目からしてなんだか寂しく感じてしまう。
この世界から抜け出さない限りどこまでいっても真っ青だ。
(この鍵見たこと無い、それに私のお家に鍵なんてあったかな?)
疑問に思いながら鍵を調べていると、後ろに気配を感じ振り向くとそこには大きな目玉がハルを見つめていた。
(……さっき言ってた“イブツ”ってこれの事?)
ハルは取り敢えず音を立てないように先程の自分の部屋の中へと入った。
部屋の中にも毛むくじゃらの何かや、生首が彷徨いてはいたが、至ってここで考えるのには支障は無さそうだ。
触らなければ良い
声を出さなければいい
ゆっくりと足を踏み入れて音を立たせないようにベッドの近くに座り込み、鍵をまじまじと見つめた。
(まずはこの部屋でも探してみよう)
パジャマのポケットに鍵を入れる時チャリ! という音を立てるが、やはり音には反応しないのか襲っては来ないようだ。
ハルは自分の机を調べようと引き出しに手を掛けるがいくら力を入れても開く気配がない、鍵穴も見当たらず、また違うところを探そうとしたとき、ふと、自分の顔が鏡に映ったのが見えた。
「……」
自分の姿が映った全身鏡に近づき、鏡の自分と手を合わせた。
鏡の中の自分は一つしか無い目が妙に見開き、口元は裂けていた。
そんな物体を見ながらハルは昔いわれた父親の言葉を思い出していた。
(……そう言えば昔パパに私はお母さんに似て目がパッチリしてるね、って言われたことがあったきがする……なんでこんなときに思い出すんだろう?)
今はそれどころじゃないと鏡から手を離し、他を探索することにした。
だが、タンスも開く気配もなし、なにかが落ちていたり仕掛けがある気配もないため、ハルは他の部屋へと足を伸ばした。
一階に下りて廊下を突き当たるとそこにはリビングダイニングがある。
ハルはダイニングへ入ると食卓の上には真っ青なシチューが置かれていた、匂いは美味しそうなシチューだが色からして不味そうに見えてしまう。
(……美味しそう)
近くにあったスプーンで一口分すくうと、あまりにも美味しそうな匂いにスプーンが口元に近づく。
そんなとき視界の中蠢くものが見えた。
シチューの中が何やら騒がしい……
(?)
凝視していると蠢いている物の正体がわかり、驚きのあまりスプーンをシチューの中に投げ入れた。
(食べなくて良かった……)
シチューの中でバタバタと慌ただしく蠢いている白い物体を見て、息を飲み込みそのシチューの皿を持つとゴミ箱にそれを捨て去った。
ハルはしばらくゴミ箱を見て、それが出てこないことを確認するとキッチンの方へと探索を始めた。
キッチンには当たり前のように包丁が置いてあり、先程のシチューの材料なのか人参や玉ねぎが置かれていた。
「サイキンサー、ジャガイモノヤロウ、マジチョウシノッテルヨナー」
「ホントダゼェェェェェ!!!! スコシニエルノガハヤイカラッテヨォォォ!!!!」
異様に高い声で人参と玉ねぎが喋っていたのを見て、驚きすぎて声をあげそうになるが、両手を口元に当て何とか堪えた。
「アァア、ダレカオレタチヲウスクキッテハヤクユデラレルヨウニシテクンネェカナ」
「ソウダナァァァァァァ!!!!!!」
そう言いながら奴等二個はハルに目線を向けた。
「オォ! ニンゲンダ! ヤッタゾ、ニンジン、コレデオレタチ、ウスクキッテモラエルゼ」
「え」
「ヤッタァァァァァ!!!!!!」
「え、あの」
「オテヤワラカニ、オネガイシマス」
思わず声を出してしまったがその部屋には異物はおらず周りをみてホッとしていたが、ハルはもちろん野菜なんて切ったことがない。
断ろうと思ったがあまりにも期待がこもった輝かしい瞳をしていたため断るのもあれだなと思い人生初の料理を始めた。
コクりと頷くとワイワイと騒ぎ、自ら皮を剥ぎまな板に横になった
「き、切りますよ」
辺りにイブツが居ないことを確認し、ハルはもう一度人参と玉ねぎに向かって話しかけた。
「オネガイシマス!!」
恐る恐る震える手で少し人参に包丁を立てた瞬間甲高い声に頭痛がした。
「ギャャャャャャヤァァァァァア!!!!!イタイィィィィィ!!!!!!」
そして包丁を抜く
「サ、サァ、ハヤクキッテクダサイ」
「……」
だが包丁をまた入れると。
「ウギャァァァァァ、コロサレルゥゥゥゥゥ!!!!!!!」
「……」
ハルはこれでは良知が明かないと、ぶら下がっていた器具からすり下ろしきを取り思いっきり力を込めてすりおろした。
「フギャャャヤァァァァァォ!!!!!!」
綺麗にすりおろされた人参を見て、怖じ気ずつ玉ねぎに向かってハルはこう言った
「今度はネギの番でしょ」
「ア、アノォォォォ、タマネギハイイデス、オレイニコレォォォ」
「……?」
キッチンの隅から持ってきたのは一枚の紙だった。
その紙を広げてみるとその紙には紺色クレヨンでこう書かれていた。
《九、灰、門、漢》
(なにこれ)
必死に考えている間に玉ねぎは野菜の箱に入っていった。
ハルはその紙の意味を必死に考えたが分かるわけもなく、そのメモをポケットに入れて、ついでに包丁を持ってその場を後にした。