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 聞いて。

 南美ちゃん、連ドラが決まったの。

 凄いでしょ!

 割と重要な役なので、あの南美ちゃんが、あの南美ちゃんが緊張してるのよ。

 主役の大物俳優さんの娘で、女子高生。

 今年の春、高校を卒業したばかりの南美ちゃんには、ぴったり!

 役柄は成績優秀な子なんだけど……。

 南美ちゃんの高校の成績表見ちゃったのよねー。

 ん?

 高校って、こんな成績でも卒業出来るんだー。

 嫌味じゃなく、本気で思った程の成績。

 馬鹿が、あ、言っちゃった。

 まぁ本当の事だし良いか。

 本人は周りに、少々残念な子だと気付かれてない、と思ってるけど、分かっちゃうよね。

 南美ちゃんとしては、そこを弄られるのは嫌なんだって。

 本人曰く。

「だって、私馬鹿じゃないもん!」

 だそうなんだけどね。



「何で、こんな漢字ばっなりなの? 」

 ドラマの台本を貰って、放った最初の一言です。

 太一さん、台本を見て余計な一言を。

「中学生でも読めるだろ」

 あーあ、言っちゃった。

 南美ちゃん、怒るだろうと思ったらシクシク泣き出したの。

 演技かと思ったら、本当に泣いてる。

 よっぽど気にしてるんだよね。

 そして、負けず嫌い。

「三流大出の太一なんかに、言われたくない」

 太一さん、みるみる顔を真っ赤にして、楽屋出て行っちゃった。

 南美ちゃん、地雷踏んだみたいですよー。

「良いの、あんな奴」

 完全にへそ曲げましたな、南美ちゃん。



 お願いだから、タレントとマネージャーで喧嘩しないでください。

 二人の間に挟まれた私は、大変なのよ!

 しかもマロンの世話もあるわけで。

 つい愚痴も出ますよ。

 相手は風子さん。

 オムライスの美味しい、犬同伴OKの隠れてるレストラン『ヴァン』。

 隠れ家じゃなわいよ、隠れてるの。

 そのくらい分かり難い場所にある。

 そこのマダム。

 行ってて四十代にしか見えないけど、実は五十代半ば、らしい。

 南美ちゃんや太一さんとは、随分親しいらしく、私の苦境も分かってくれる人。

「南美ちゃん、あの世界に入るまでは割と優秀な子だったのよ」

 え?

 本当に?

「あっと言う間に売れてしまって、学校に行けなかったからね」

 そうなんだ。

 ポテンシャルは高いのね。

「私、何とかしてみます」

 風子さん、突然の宣言にニンマリしてた。

 もしかして、私の性格も把握されちゃった?



「南美ちゃん、今からでも勉強して取り戻そうよ」

 突然の申し出に、南美ちゃん、きょとんとした。

「なに、何言ってるの沙知」

「クイズ番組、断ってるでしょう」

 そう、南美ちゃん、クイズ番組だけは何があっても拒否なの。

 理由は、分かるでしょ?

「でも、どうやって……」

「ここに家庭教師がいるじゃない!」

 南美ちゃん、暫くぽけーっとしてたけど……。

「うん」

 小さく頷いた。

 こうして、私は今まで以上に南美ちゃんと過ごす時間が増えたの。

 そのお陰で、知らなくても良い事を知ってしまったんだけど。



 ドラマの撮影も始まり、南美ちゃんはどんどん忙しくなった。

 逆に、マロンのお世話係り、の私は自由な時間が増えた。

「私が忙しくなると、沙知に時間が増えるって、どういう事?」

 と、ぼやいていらっしゃいましたが、そう言う事ですよ南美ちゃん。

 マロンにお仕事があると、私も同行するんだけど、今はドラマ撮影中心ですものね。

 とは言え、台詞を覚える相手をしたり、家事全般、ちょっとしたお使い、後は南美ちゃんのお勉強の準備、割と細々とあるんだけどね。

 この前は、忘れ物を届けにマロンと一緒に電車に乗って撮影スタジオまで行ったの。

 意外と遠いのね。



 ドラマ撮影って本当に大変で、南美ちゃんすっかり寝不足。

 なのでお勉強も、台本中心な漢字を集中的に進めてます。

 南美ちゃん、風子さんの言う通りポテンシャル高くて、割と直ぐに覚えて書けるようになるの。

 優秀な生徒さんです。



 お腹が空くと、あり得なく不機嫌になる太一さんも、ドラマ撮影で不規則な日々みたい。

 毎朝、南美ちゃんを迎えに来るんだけど、日に日に干からびて行ってる。

「太一さん、大丈夫ですか?」

 思わず声をかけてしまったの。

「ん……」

 それだけ。

 返事はそれだけ。

 なんだそれ!!!!



 と、思ってたら、数日後沙織さんから急な連絡。

「マロンは私が今から見るから、スタジオまでタクシーで走って!」

 沙織さんがあんまりにも、慌ててる様子だから、取るものもとりあえずスタジオに向かったの。



「ごめん……」

 撮影スタジオの楽屋で、太一さんがひっくり返ってた。

「どうしたんですか!」

「ごめん、タクシー呼んで……」

 フラフラとタクシーに乗って、行ってしまった。

「沙知、暫く沙知がマネージャーね」

 休憩で楽屋に戻ってした南美ちゃんに、突然配置換えを宣言されてしまった。



「タレントよりマネージャーが先にダウンするって、どういう事よ」

 沙織さん、大爆笑してますけど?

 太一さんは、風邪をこじらせて肺炎一歩手前だったらしい。

 ちゃんと、食べてなかったらしい。

 そりゃ、風邪もひくよ!

 ドクターストップが解除されるまでの、2週間程、私がマネージャーという事になった。

 細かいスケジュール管理は沙織さんがしてくれるので、私は南美ちゃんのそばに居るだけ、だけどね。



 で、知ってしまった。

 毎週金曜日の夜から土曜の朝にかけて、南美ちゃんは行方不明になる。

 今迄、撮影や収録が押してホテルにでも滞在してるのかと思ったけど。

「私にもプライベートな時間は要るの」

 と、言って姿をくらませる。

 んー、どこに居るかくらい把握しておきたいんだけどな。

「沙知にだったら言ってもいいかな」

 今迄見た事もないような、照れた表情をして、スマホで一枚の写真を見せてくれた。

 思わず三度見したわよ。

「南美ちゃん……、これって……」

 最近連ドラなんかで活躍中の俳優と、南美ちゃんが、明かに裸と分かる様子で、シーツで隠れてるけど、これ裸だよね? って様子の写真。

 思わず私まで赤くなったじゃない!

「内緒だよ」

 内緒だよ、じゃねーよ!!

 言えるわけ、ないでしょ!!

 その俳優さん、既婚者だからっ!!

 とも言えず……。

「う、うん」

 って、なっちゃうよね。

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