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 番組放送翌日。

 ブログ最初の記事のアクセス数は、想定していた数の十倍。

 コメント欄も肯定的なコメントで溢れかえってた。

 中には「ブス」とか書いてる人もいるけど、言われなくても知ってるので気にしない。

 だって、あの超絶可愛い南美ちゃんのブログコメントにだって、そんなコメント書く人が居るんだもん。

 マロンが南美ちゃんの犬だって言うのは、有名だからマロンと私がセットなのが気に喰わない人も居るみたい。

 だけど、そんなのは最初から想定済み。

 沙織さんが、だけど。

「何をどうやっても、言う人は言うからね」

 名言だと思わない?

 で、コメント欄に見つけちゃった。

 美咲ちゃん!

 物凄い友達アピール。

 よく見ると、美咲ちゃんもブログやってたのね。

 楽しそうな稽古風景。

 皆さんにコメント返しは出来ないけど、美咲ちゃんにはしておいた。

『稽古、頑張ってね!』

 って。


 今日のブログは、マロンと公園で遊んでいる写真を使って。

 太一さんがスマホで写真を撮ってくれたんだけど。

 マロン、じっとしてないもんだから、ぶれ過ぎて、茶色の塊にしか見えないの。

「これじゃ、何かの怨霊みたいだから」

 と、改めてマロンを抱いてハイポーズ。

 ん?

 太一さん、耳赤くない?

「どうかしました?」

「いや、なんでもない」

 そう言って、スマホ突き返されちゃった。


 まだ、始めたばかりのタレント業。

 そんな直ぐにお仕事頂ける、なんて思ってなかったんだけど。

「沙知! 決まったで!」

 上機嫌の社長。

 事務所に呼び出されたので、慌てて行ってみると、そこに居たのはあの動物番組のプロデュ―サー。

「おはようございます」

 慌ててご挨拶。

「やぁ、さっちゃん。凄い反響だよ!」

 突然のさっちゃん呼ばわり。

 南美ちゃんに着いてスタジオに居た時なんて、挨拶したって返しもしなかったクセに。

「あ、ありがとうございます」

 笑顔のつもりだけど、出来てると良いな。

「沙知、喜べ。あのコーナーをレギュラーにするって!」

 レギュラー?

 と言う事は、毎週番組で放送されるの?

 で、それで幾ら借金返せるの?

 あ、いや、つい。

 だって、早く返したいんだもん。

「よろしくお願いします」

 プロデューサーに、頭を下げた。

「よろしくね、さっちゃん」

 そう言って、握手を求めてきたので応えたら、なんか手の握り方がイヤらしい。

 嫌だな。

 でも、顔に出すわけにはいかない。

 500万、500万、福沢諭吉が500人。

 とてつもないけど、やるしかない。

 やるって決めたんだから。


「プロフィールとアンケートを書いてくれる?」

 渡された紙の束。

 でも、これ、物凄く大事なのよね。

 大学で勉強してた時よりも、真剣にびっしりと書き込む。

 中には、どこまで脱げるか、何てあって、一瞬手が止まった。


「こう言うのは、出来ませんは絶対ダメ」


 前に南美ちゃんが言ってたな。

 本当に凄いよ、あの子は。


 悩んだ末に

『必要であると判断すれば』

 と書いた。


 まさかね、少なくともこの番組で「脱ぐ」なんて事はないわよ。

 子供も見る、娯楽番組なんだもん。

「やめとけよ」

 ふいに背後から太一さんの声。

 人が必死に記入してるのを、いつの間にか背後から覗き込んでいたみたい。

「もう、見ないでください」

 隠そうとしたんだけど、取り上げられてしまった。

「こんな風に書くと、あいつ、本当に脱がすぞ」

 プロデューサーを、アイツ呼ばわり!

 でも

「本当ですか?」

「うん」

 じゃぁ、書き直す。

 でも、何て?

「はっきり、ムリです。って書いとけ」

 って、書類突き返されちゃった。

 何なのよ一体。

 できないって書いちゃダメなんじゃないの?

 でも、やっぱり、嫌だもん。

『今は考えられません』

 で、良いよね。


 1週間のうち、ロケが二日か三日。

 で二週間に一日、番組収録。

 一日で番組2本分収録するの。

 そんなスケジュール。

 と言う事は、二週間に一度、南美ちゃんと会う事になる。

 機嫌悪くないと良いけどって、心配したけど、全然そんな事なくって安心。

 ただ、番組で『元獣医学部の学生』って紹介されたのが気になる。

 おばぁちゃん、見てないと良いな。

 大学時代の人達、見てないと良いな。

 高校の同級生、中学の同級生、小学校の同級生、見てないと良いな。

 やっぱり自分が、この仕事に100%乗り気じゃない事を、改めて確信してしまった。


 そして、私がタレントに転向したことで一番忙しくなったのは太一さんだと思う。

 あんまり寝れてないんじゃないかな。

 今太一さんは、南美ちゃんと私、二人のマネージャーをしている。

 元々私は太一さんの助っ人、として事務所に雇われたのに。


 つい、レストラン『ヴァン』の風子さんに愚痴ってしまう。

「もしかして、私太一さんに物凄く迷惑かけてしまったんじゃないかな」

 思わずため息をついた自分に驚いた。

 私、そんなに太一さんの事気にしてるの?

「あら、さっちゃんのマネージャーをやるって名乗り出たのは、太一自身なのよ?」

 どう言う事?

「山ちゃんは、南美ちゃんのマネージメントも怪しいのに、って心配したけど、私が太鼓判推しておいたの」

 あ、山ちゃんって言うのは、うちの事務所の山本社長の事ね。

「太鼓判、ですか」

 風子さん、何を根拠に。

「大丈夫、きっと頑張るわよ」

 でも、日に日に疲労感増していく太一さんの姿、本当に痛々しくって。

 南美ちゃんに着いてた経験もあるんだし、自分で出来る事は自分でやろう、そう決めた。

 

 

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