ここはどこ?
いつの時代どこの場所関係なく、私達人間は悩みます。そして悩みの内容は人それぞれ。私自体もクヨクヨ悩むたちなので、悩みを聞いてくれるお店があったら良いなと思い、作ってみました。
(ついていけない……)
詩織は途方に暮れて立ち尽くした。
詩織が立ち尽くしている場所は、見た目が外国の繁華街?の様な場所だった。
英国風の店、歩く人達、そこまでは至って普通の光景。
しかし目を凝らしてみると、看板の名前が可笑しい。
例えばあるお店の名前は<秘密屋>、その隣のお店の名前は<幸せ屋>と書かれている。
(なにこれ……)
救いを求める様に他のお店の名前を調べていっても、詩織の思っている普通のお店の名前ではない。
(悪い夢でも見ている気分だわ。どうして……夢? )
はっとした様に、それからいくらか気持を落ち着かせて、詩織は考え込む。
先程から道を行き交う人達にチラチラ見られている事に気付いて、邪魔にならない様に詩織は歩きだした。
(夢……なのよね? 随分とハッキリした夢だけど)
歩く度に足に伝わるコンクリートの固さが、夢を否定している様だ。
(それにしても歩いている人達は変な名前のお店に、違和感を感じている様子がないのよね)
心の中を見透かされない様に、詩織は歩き続ける。
大きな繁華街の様な道の果てに、詩織の立っている場所から左側に、路地裏がある様だ。
(現実世界にこんな路地裏ある筈ないわよね)
「しかも路地裏に石畳の階段があるのね! すてきね」
詩織の世界でいうヨーロッパ調のお店が何軒か並んでいる様で、ビニールの赤い屋根が目に付く。
(しばらく眺めていたいな)
『満足するのに時間かかりそう? 』
急に話しかけられた詩織はビクッと肩を揺らして、後ろを振り向いた。
「もしかして、通りますか? 」
詩織は訊きながら左に移動する。
(外国の子供? )
詩織の斜め左に立っていた子供は、6才くらいの男の子だった。
日に焼けた金髪と小麦の肌に、瞳だけは透き通った湖の様で、いつまでも見詰めたくなる綺麗な瞳だ。
「今度は俺を鑑賞? 」
「日本語上手なのね」
「日本語? 」
「今話している言葉、日本語でしょ? 」
「言葉は言葉だろう? 」
(この子、大丈夫かしら? )
詩織と男の子の間に沈黙が生まれる
それからいくらか経って、2人の間に固まっていた空気を和らげる様にテノールの声が響いてきた。
詩織が石畳の階段に顔を向けると、そこには東洋風の20才代の男性が立っていた。
「シン、あなたはまた道草ですか? ユリさんのところには」
「これから行きます」
金髪の男の子シンが慌てて、詩織が歩いてきた道を走っていく。
「あいかわらず……ところでお嬢さんは、シンのお友達かな? 」
詩織は再び東洋風の男性の方向に顔を向ける。
(この男性、執事さんみたい……)
「いえ、さっきここで初めて出逢いました」
「シンに何か悪戯されてないかい? あの子はすぐ、女の子にちょっかいだすから」
「ふふ、あれくらいの男の子って、大体悪戯っ子ですよね? 」
「違いない。ところでシンのお友達ではないというなら、お嬢さんはこれから、路地裏で買い物かい?」
(執事さんからお嬢さんだなんて、くすぐったいな)
「お嬢さんじゃなくて詩織、日高詩織って言います」
「ヒダカシオリ? 随分長い名前だね」
えっと、詩織でお願いします。
「シオリ、響きが素敵な名前だね」
(日本には誉める文化がないから、気恥ずかしいなぁ)
「じゃあシオリ、特に予定がないなら私の店に来るかい? 」
「あなたのお店があるんですか! 服の格好からして、ワインとか置いてありそうですけど」
(どう見ても、貴族に仕えている執事なんだけどな)
背が高く均整がとれた体を、黒いスーツベストとチェックが入ったスラックスが引き締め、形式張った 格好を違和感無く着こなす端正な顔立ち。横に流している前髪と襟足まで伸ばしたコシのある黒髪が、東洋風の顔立ちを引き立てている。
「ワインは置いていないなぁ。でも私の店に来たら、スッキリするかもしれない」
「すっきり? 」
「言葉で説明する事は難しいから、実際に来てごらん? 」
「そうですね。じゃあ案内してもらえますか……えっと、お兄さん? 」
「お兄さんじゃくすぐったいかな。ミチと呼んでくれた方が嬉しいかな」
(女性みたいな名前だなぁ)
「ではミチさん」
書き手としては初心者なので、読んでいて厳しい意見もあると思いますが、
きちんと受け止め、精進していきたいと思っています。できるだけ早めに、次回の作品をあげられたらと思っています。