レポート9
「ちくしょー、やられた!」
街へと戻され、デスペナが終わるまでの時間、俺は街をうろうろしていた。
ユウにフレンドチャットを送り待っているのだ。
槍が折れた理由がよくわからないからだ。
そして待つはじめて20分立った時。
「おー、ユミ待たせたか?」
「俺がよんだんだから待つのが当たり前だ」
「そうかそうか。そんでどうした?」
「それがな――」
俺は森の奥に行ったらクマにあったことと、槍が折れたことを説明した。
「あぁ、それは中ボスのグリズベアーだな」
「グリズリーかベアーかどっちかにしろよ……」
「そんで槍が折れたのは耐久力がなくなった」
「ほうほう、耐久力が……このゲーム武器に耐久力あんのか!?」
「おうともよ、でも普通盾と鎧はともかく武器は序盤なくなんねぇと思うんだけどな」
なんとなく俺はわかってしまった。
槍の細い持ち手を無理やりガードに使っていたのが原因で耐久力がゴリゴリ減ったんだろう。
「ユミは1時間後ぐらい暇か?」
「ん? まあゲームはできるけどなんでだ?」
「その中ボス倒しパーティー組んでいくからいかねってこと」
「俺でいいなら行く……が、その前に武器買ってくる」
1時間後に森の入口で集合という約束をしてユウと別れた。
俺は武器屋に到着し、NPCからスピアを購入した。
「初期武器とはいえ、初期状態の俺からすればいい値段するな」
早くもっと奥に進み、金を稼ぎたいと思う俺だった。
1時間が立ち森の入口で待っているとユウと数名の人達がやってくる。
「はやいな、ユミ。そんじゃまあいくとしますか」
「ユミさんよろしくお願いします」
一人はレールさんだった。
その他にも男女一人ずついた。
「おいユウ。その前にそこの人達が誰かをだな」
「おっとこいつはすまねえ」
こいつはいつも一部抜けてる気がするな。
「俺はユミ。そこのオレンジ髪との腐れ縁だ。武器は槍を使ってるよろしく」
「おっとこいつはすまねえな。俺はガンツってんだ。見ての通り盾と斧を使ってる」
「私はナルっていいますです。弓を使って援護します!」
体のでかいガンツと小さいナルか、ガンツは頼りがいがありそうだが、ナルはちょっと不安だ。
「そんじゃ出発!」
ユウの掛け声とともに森の奥へと進んでいく。
俺が死んだ少し広いエリアへとたどり着いた。
あの時と同じようにグリズベアーが奥からでてくる。
「ガンツが正面、俺とユミで横から攻撃! レールとナルは状況を見て援護を頼む」
「ガッハッハ! 任せておけ!」
「了解しました!」
「あいよ」
「わかりましたです!」
ユウの作戦通りに動きを進める。
まずはガンツが盾を構え正面から攻撃を防いで囮をする。
「ぬぅっ! なかなか重い一撃。だが俺はこれしきでやられはせん!」
そのまま攻撃してきた手に一撃をいれる。
『!!?』
敵もカウンターを受けて少しのけぞる。
その隙に俺とユウで攻撃を行う。
「おいしょぉ!!」
「はぁっ!!」
右からの斬撃と左からの突きをくらいグリズベアーは俺たちを振り払おうと手を振り回す。
ユウはバックステップでそれを交わし、俺は槍で攻撃を受け流しつつ距離を取る。
「お前は珍しいやりの使い方すんな」
ガンツが俺の回避行動を見て言ってきた。
他の槍使いを見たことがないから今の俺にはわからないことだった。
俺達が距離をとったと同時にガンツの背後から水魔法と矢が敵に飛ぶ。
「やぁっ!」
「『ウォーターバレット』!」
その攻撃でグリズベアーのHPが残り3分の1になった。
そうすると敵が地団駄をふみ次の瞬間、速度が上がった。
「怒り状態に入ったから、今まで以上に気をつけろよ!」
「ガハハ! おもしれえじゃねえか」
「そういうのは先に言え!!」
文句を言いながらもさっきと同じ行動をする。
最後はガンツのカウンターが上手く入りグリズベアーは倒れた。
「おっし、終了!」
「ユウてめえ……」
俺は情報を先に渡さなかったユウに蹴りを一発入れ込んでおいた。
「お疲れ様でした」
「お疲れ様です!」
「二人もお疲れ。助かったよ」
後衛の二人の援護がなければ多分ここまで早くは倒せなかっただろう。
「よっしゃ、んじゃこのままボス部屋まで挑戦と行こうぜ!」
ユウがまた突拍子もないことをいったが周りからの否定もなかったためこのまま進むことになった。
俺、大丈夫かな。