レポート78
俺は体を若干引きづりながら元の戦場を目指していた。
痛みとかはゲームだからないと何度もわかりきってはいるがデスペナで体が重い錯覚に陥ってる。
槍も普段は普通に持てるが現在は筋力ギリギリで振るのも一苦労だ。
「ロケットマン……もう少し頑張ってくれ」
今戦場にいるのは最後の状況でロケットマンとアイちゃんともう一人支援型だ。
長時間戦闘はできない。
かといって短期間で倒せるかと言ったら微妙だ。
残りのHPは半分より少ないといったところだけどダメージを出す役が少なすぎる。
「どうなった……」
砦にたどり着くとまだ残っていた。
だが支援型の人はMPがつけて下がっていてアイちゃんとロケットマンがやりあってる形だ。
二人共HPとMPはギリギリだしな。
ただ俺がこの状況であいつらに当てられるかどうかってところだ。
動きがかなり鈍い状態だっていうのに。
一つスキルがあるにはあるがバッドステータスでだせない上に当てにくい。
「囮にくらいなれるか」
俺はそう呟いて砦の上から飛び降り着地する。
普通に入り口から入ればよかったと思ってる。
思ったよりめだって即ターゲットにされたから。
「いきなりかよっ!」
右手……いや足か。
振りかぶって爪で攻撃してきたのを槍を横に構え持ち手で受け止める。
だが耐えることは出来そうになりのでそのまま勢いを流して距離を取る。
「ユミさん、大丈夫」
「匠よ。特攻の頂点である俺でしても特攻しきれないぞこいつ」
「しるかよ、というか一人称安定しないなあんた」
ギリギリの距離で攻撃を交わすことを繰り返す。
相手の残りHPはすでに赤のギリギリまで減っている。
ただ止めがさせないといったところか。
「せめてわっちともう一人いれば!」
「何かあるのか?」
「鎖もってるから筋力が高い人と上から鎖で押さえつけてそこに君たちで攻撃を叩きこむということがな」
理屈は分かった。
でもたしかにその役目は今の俺じゃ無理だし他にもう一人いないと。
そんな時、空から雄叫びのような声が聞こえた。
「うおぉおおお!!」
渋い低音の声が空から近づいてくる。
そして目の前に着地する。
土煙がはれると見覚えのある巨体が。
「マスター!」
「アイムバック……仕事からな」
マスターイベント中見かけなかったけど仕事だったのか。
お疲れ様です。
「その役目俺に任せろ」
サムズアップしてグラサンを光らせる。
ロケットマンとマスターが鎖で押さえつけるために動き出す。
「ユミさん……私達も準備を」
「アイちゃん」
「どうかした?」
「今の俺のスキルだとダメージろくなのとおるかわからない」
「私のもあんまり通らないのに!?」
「だから……その……」
「何か秘策が?」
いやすごいこれ言うの恥ずかしいな。
どこのマンガだよ……でもやるしかないか。
「今の状態だと出せない技があるんだけど、2人ならだせる……一番威力がある」
「で? それって……」
「一緒に、やってくれるか?」
「えっ……わ、私で大丈夫なら!」
その返事の直後、轟音が響き渡る。
「少年! 捕まえたぞ! 30秒持つか持たないかだ!」
「匠! お前の特攻で止めを!」
槍を構える。
「いくぞ」
「はいっ!」
アイちゃんも俺の槍を持つ。
「『流星・弾丸突き』!!」
迷いのない一直線に突進突きをする技、本来だと筋力が足りず耐え切れないがアイちゃんと2人ならいける。
そして敵は今動かないなら。
「うおおおおお!!」
「はあああああ!!」
俺とアイちゃんの叫びが重なり敵の体を貫いた。
スキルが終了して槍を持ち直す。
なんか終わってからドキドキしてきた。
手ほぼ触ってたもんな……。
後ろを振り返るとのHPゲージはなくなり粒子となって消失していった。
「ナイスアタックだ。少年」
「さすが匠の称号を持つだけあるね。だけどここまでこれるかな」
「俺はそこまで行きたくない!」
「ユミさんならいつか行きそうだけど」
否定出来ないな。
このイベントでの俺の最後の戦いが終わった。
奥のどでかい奴も倒せたようだ。
後日、色々とイベント参加の賞品などもとどいた。
ただなんというか俺は最後の技を出すときのことが頭から離れなかった。
というかものすごいドキドキしてしまった俺に戸惑っていた。
やっぱりこれってそういうことなんだろうな。
俺の初めての気持ちが始まった。




