レポート64
「さて、結構進んできたわけだけど」
「これ明らかにボス扉だよね……」
洞窟を更に進んでいき周りと比べると明らかに異質な扉がでてきた。
いつものボスってここまで露骨だったっけな。
「まあ進もう進もう!」
「呑気なやつだ……」
「うちの妹はそういうやつだから」
俺達5人は扉を開けて入っていく。
中は広い空間だった。
水に囲まれて上からは岩の隙間から日の光は入ってくる。
だがあまりにもその場所は広すぎた。
「なんかいつもと違う」
「すまない。僕は帝都以降のボスは初めてだからよくわからん」
「うーん……ってお兄ちゃん上!」
「は? いきなり何っ!?」
上から岩が落ちてきて二手に分断される。
岩が重なり向こう側にいくのは簡単にはいかなそうだ。
俺、アイちゃんの2人とラン、アサヒ君、ララルの3人に分かれてしまった。
俺は大声で向こうの状況を確認する。
「ラン! 大丈夫か!?」
「一応みんな大丈夫……だけどボスっぽいのでてきたからそっちにいくのはすぐは無理」
「ユミさん……!」
「こっちも出てきたみたいだ。倒したら合流するぞ」
「はいさー!」
俺は視線を前に戻す。
でてきたのは……なんだこいつ。
「アイちゃんこいつなんだと思う」
「ゲームでいうマーマンとかそういう部類のやつかな。あれってゲームによって下半身が魚だったり人だったりと確定はしてないし」
体に鱗があり両手に鰭のようなものがある人型の敵だった。
人型とはいえサイズは少しでかいが今までの巨大なボスとはタイプが違う気がする。
「よし、やってみるか」
「はい。私も槌の技能レベル結構上がってきたからやるよ」
武器を構えて突っ込もうとしたんだがマーマンの動きを見失った。
「どこいった!?」
「ユミさん、水の中!」
「なっ……っ!?」
フィールドの周りは水で囲まれていたが水の中を移動して俺の側面から攻撃してきた。
俺はギリギリで槍で防ぐが吹き飛ばされる。
「痛くねぇけど、痛い」
「たぁっ!」
攻撃した後の僅かに動きが鈍っているであろうところを狙いアイちゃんがマーマンに槌を振り下ろす。
奴はそれを片手でガードするが、仮にも素肌に打撃を与えたためダメージが入る。
「防御は脆いな。回避とか奇襲ってことか」
ガードしたにしては思った以上にダメージが入っている。
俺は体勢を立てなおして攻撃にうつるがまた水に入られる。
水から離れてフィールドの中心近くを陣取って待ち構える。
「どこからくる……」
「右!」
アイちゃんの声を聞いてすぐに右へと体を向ける。
水中からロケットのように飛んできた。
「とらぁっ!」
それに合わせて槍を振り当てる。
この攻防が続いて敵が弱ったが水からなかなか出てこなくなった。
「ユミさんどうする?」
「こっちからいくしかないでしょ」
他の3人のほうが大丈夫か気にしてなかったがなぜか今気になった。
大丈夫かな。
「私がどうにか動き止めるから。とどめよろしく」
「水の深くとかにいられると当てられないけど」
「じゃあこの短槍使ってください。水の中に投げ捨てていいから」
投擲育ててないよ。
「じゃあいくよ! 『グランド・ショック』!」
水に槌を叩きつけると水が揺れ始める。
あのスキルそんな効果あったのか。
水の中にいた敵の動きが止まる。
「おらぁっ!」
投擲スキルなんてないが短槍を投げつける。
だが水の中で失速してしまい命中しなかった。
「もう一回!」
「ならぁっ!」
この後何度か同じことを試すが結果は変わらなかった。
そしてスタンに対する耐性がつき始めたマーマンはこちらに水の中から攻撃をし始める。
「次でダメだったら違うやり方にしよ」
「おう」
もう一度アイちゃんの攻撃でスタンを起こす。
何度なげても失速してダメならもうダメ元でやってみる。
「こいつでどうだぁ!!」
「自由度高いゲーム内でかなり自由度高いことしてるよね。ユミさん」
俺は弓で短槍を打ち出した。
技能がなくて勢いが足りないなら技能があるもので無理やりだ。
現実だったら絶対にできない。
だが幸か不幸かこの方法は成功して槍は敵に突き刺さった。
そしてHPゲージがなくなり倒れた。
「やった!」
「いえい!」
アイちゃんとハイタッチし勝利を噛みしめる。
「勝ったぁ!!」
落ちてきた岩の壁の向こう側からもララルの声が聞こえた。
無事に勝つことが出来たみたいだ。
ところでここのボスってこんな奴という話は聞いたことなかったんだけどな。




