レポート63
洞窟へ入ると中は水たまりがそこかしこにあるまさに海辺の洞窟となっていた。
「ものすごいジメジメしてるねー」
「ていうか蟹の殻が固くて矢が通らない」
実際に暑い寒いなどを強く感じたりするわけじゃないんだけど雰囲気的にすごい蒸し暑い。
しばらく進んでいたがその間に出てきた敵は蟹や海老系がほとんどだった。
海なのか川なのかよくわからなくなってくるけどそこはゲームだしで済ませておく。
「あ、そうだユミさん。今度あった時に聞こうと思ってたことがあったの」
「え? 何、アイちゃん」
「【装飾】を育ててくと派生で【魔法細工】が出てくると思うんだけど取る予定って?」
「あぁ、あんまりとってる人の報告がなくて悩んでるんだよね」
情報は調べて見てるのだが装飾品自体が意外とNPCショップでもそれなりのものが買えるから育ててる人が多分少ないのかあまりない。
「たしか武器とか防具に特殊能力をつけるらしいんだっけ? 属性とかもそれって聞いたような」
「そう。それで私が武器作ってそれに効果をつけるってやってみたいんだけど」
「うーん。まあ他に欲しい技能もないしいいけど」
「やった」
まあ本来だったらもっと攻撃力上昇とかそういう技能取るべきなんだろうけど生産と戦闘両立させてるとそういうのは取るに取れなかったりする。
「ラン。お前の兄とアイはその……そういう関係なのか?」
「一歩手前ってところかな、お兄ちゃんがそういう経験ないから」
遠くでなんか同級生コンビが話してるけど何話してるんだろう。
「『ナックル・ブラスト』!」
そして近くでは蟹を殴り飛ばしているララルがいる。
もはやあいつ魔法使いじゃない、だってこの洞窟入ってから使ったの拳スキルかシャイニングナックルだけだし。
「ふっふっふ。見たか! 自称・光のグラップラーのアタシの実力!」
それからしばらく進み中ボスのフロアへとたどり着いた。
そろそろ槍に持ち替えた方がいいかな。
中ボスはでかい蟹だった。
「『ファイア・ボール』!」
ランが先手必勝と火の玉を飛ばすがあまり聞いてないようだ。
当たった部分がゆでた時みたいに少し赤くなってる気がしなくもないけど。
そして攻撃されたことに気づいた蟹が動き出す。
「いがいとはやいっ!?」
「委員長さっき渡した武器でどうにか出来ない?」
「君は無茶を言うね!? 僕だってそんなに万能じゃないんだよ!」
そういいながら鎖を器用に使いハサミ一本を拘束してるアサヒ君。
「よーしっ、ユミさんスタンバイ!」
「はっ!? ……そういうことかよ」
明らかに後ろから助走をつけて右手を輝かせながら俺の方に走ってくる。
「踏み台にされるくらいならきっちりやってやる!」
俺はバレーのレシーブに似たポーズをとる。
昔見たアニメでこんなかんじで足を押し上げてジャンプ攻撃したのを見たことがある。
俺はそれと同じようにララルを飛ばした。
「シャァァァイニングゥ! ナックル!!!」
もはや発音がすごい。
でも発動するもんなんだね。
ララルはそのまま蟹の顔に拳を叩き込んだ。
さすがにこれは蟹も聞いたらしく体が揺らぐ。
「応用でできるか? このゲームの自由度を信じて『サンダー』!」
アサヒ君も何やらいいながら魔法を使ったようだが。
本来飛ばすような魔法だと思うんだがその魔法は鎖を伝って蟹へと流れこんだといえる形で発動した。
電気が流れて蟹はゆでガニのようになって倒れた。
「委員長すごい!」
「まさか私がなんとなくで鎖武器作ったらこんな使い方するなんて思いもしなかった」
「アサヒ君すごいな。このスタイルあってるんじゃ……大丈夫?」
「大丈夫じゃないです」
うまくいっていたと思ったが雷は鎖を通して自分にもダメージを与えていたらしい。
「俺の出番なかったな」
「ララルさんを飛ばしたじゃない」
「アイちゃんそれは出番といえないんだよ……まあ弓通らないから仕方ないけど」
「そおいえばなんで弓なんかを?」
「……虫対策」
「……虫は私に任せてそのままでいて!」
「何いってるのアイちゃん!?」
アイちゃんが何を考えてるかさっぱりわからない俺だった。




