レポート58
イベント終了後、解散してから現在は俺の店に来ている。
賞品のメッセージも届いたことで商品確認をしていたのだ。
「まあ賞金は全員に均一で分けられたとして……これなんだ?」
「見たことないですね、鉱石じゃないけど石みたいな……装飾で使えるんですかね」
『恋のかけら』というアイテムと『愛のかけら』というアイテムだった。
分類としては素材となっているんだけど、今まで見たこともなければ聞いたこともないアイテムだ。
「ミルちゃんメール下の方に説明書いてあったよ」
「え? 本当だ。『このアイテムはこの前大型アップデートがあったばかりですが2月下旬に大イベントを行うための連続中規模アップデート時に追加される親要素にて重要な役割と果たすアイテムです。ドロップアイテムですがドロップ率が低いものを二組プレゼントします。ちなみにアップデートについては近日発表するので周りに言ってしまっても問題はありません』だそうです」
大イベントってなんだろう。
だけど2月下旬か。
中々に楽しみだな。
「それなら、とりあえず分ける?」
そうアイちゃんが提案する。
まあ現状意味が無いなら分けてもいいんだろうけど組っていうんだから恋と愛で一組なのかな。
「もうこれのわけかたは決定だよね」
「ですね」
ミルナちゃんとランの意思疎通具合もすごいな。
実はリアル知り合いだったりするんじゃないかな。
リアル詮索はマナー違反なので気にはしつつも実際に聞くことはないけど。
「私とアイちゃんが『恋のかけら』ミルちゃんとお兄ちゃんで『愛のかけら』これに限るね」
「別にいいけど名前的に私が愛の方がいいんじゃ?」
「恋する乙女が何か言ってるね」
「ですね」
やっぱり女の子の考えはよくわからん。
俺は特に会話に参加はできないが見守っていた。
退屈はしないしな。
でもアイちゃんも誰かが好きなのか。
あの笑顔を独占できるとかなったらそいつは羨ましいな。
「はい、ユミさん。どうぞ」
「えっ!? あ、ありがとう」
気づいたらまた考えというか思考に没頭していたらしく。
アイちゃんにかけらを渡されるまで意識がどっかに飛んでいた。
なんだろう、こう女の子が近くにいるとドキドキするっていうのはこんなに耐性つかないものなのかな。
「さて、今日はなんかやりきった感があるから俺はログアウトするかな」
「私も~」
「では今日は解散ですね」
「お疲れさま~」
その日は解散となった。
ログアウトすると夕飯少し前ってところか。
イベント終わってから結構話し込んでいたらしい。
1階に降りると誰もいなかった。
「そういえば、父さん達は結婚記念日旅行だったか……いつまでもラブラブなことで」
見てて砂糖を吐きそうになるくらい未だにラブラブの夫婦だからな。
絶対に浮気とかはないだろうな。
「今日は……カレーにすっか」
俺が調理をしていると蘭も下に降りてくる。
「今日何~?」
「カレーだ……ってルーがないな。買ってくるか」
「これ何人分作ってあるの?」
「少し多めに4人分だけど。まあ残ったら明日食えばいいし」
カレーならまあ1日ぐらいならちゃんと保存すれば持つはずだ。
「炒めて煮込んでおいてくれるか」
「何分くらい?」
「1400ミリリットルで弱火と中火の間くらいで15分前後」
「はーい。いってらっしゃい~」
まあ蘭もカレーは何度も作らせたから大丈夫だろう。
他の料理は当たり外れすごいけど。
俺は近くのスーパーにいってガーランドカレーを買って帰宅した。
「ただいまー」
「おかえり~。ちょうど煮込み終わったよー」
「あいよ。そんじゃこいついれて」
「食器用意しておくね~。あ、今更だけどもう1人追加してもいい?」
もう1人ってどういうことだ。
まさか隠し子でもいたとかそういう急展開じゃないだろうな。
そんな非現実的なことを考えてしまった時に家のチャイムがなった。
「はーい」
「もう一人ってどういうことだよ……」
ランが玄関へ言って対応してくる。
その間にルーを入れてから煮込み終わり皿へと盛りつけておく。
もう1人って言ってたしちゃっかり3皿用意してあるし3人分でいいか。
「お、お邪魔します」
「ん? どうぞ……って」
「今日家に誰もいなかったんだって~。だからいいかなって」
「す、すみません。突然」
「いや、大丈夫だよ。いらっしゃい愛姫ちゃん」
きたのは愛姫ちゃんだった。
しかし蘭よ、一応俺という異性がいる家だから大丈夫なのか。
何もしないけど親御さんが気にするんじゃ。
「うちの親、結構放任主義なので。お姉ちゃんもあんな感じですし」
「そうなんだ。まあ、座ってよ。丁度出来たから」
愛姫ちゃんと俺と蘭の3人での夕食となった。
リアルで料理を振る舞うのは家族と夕二以外だとはじめてだけど大丈夫かな。
「美味しいです。これ真弓先輩が?」
「ふっふーん。お兄ちゃんは家では一番料理が美味いんだよ!」
「レシピ通りに作ってるだけだけどね。でもありがとう」
よかったよかった。
そして夕食を食べ終えて片付けをする。
愛姫ちゃんも手伝ってくれた。
蘭は部屋を色々整えにいった。
泊まっていいよとかいうなら普段から色々片付けておけよ。
「真弓先輩って女子力本当に高いですよね」
「嬉しいような、悲しいような評価だよそれは」
「本当に羨ましいなって思ってるだけですよ」
「女子力が高い男は意外とモテないんだよな。やっぱり女子にとっての魅力っていうかの一部が見せられないとかなんとかで」
女子クラスメイトにも友達としては長く続いていけるけど多分お互い独り身だったとしても付き合ったりすることはなさそうって言われたことあるし。
あいつは意見をストレートにいいすぎだが。
「真弓先輩って彼女できたことないんでしたっけ」
「まあゲーム内でもたまに言ってる通りないよ」
「告白されたってこととかは」
「ないね。告白って立候補みたいだよねとか意味の分からないこと考えるくらいにね」
自分でも今なんでこんなこと言っているかわからない。
食器片付け終わった当たりで蘭も戻ってきた。
その後は風呂に入ったりなんだりだが、先に蘭と愛姫ちゃんが風呂に入って俺はあとから入ったわけだ。
そして出たあとリビングにいくと風呂あがりの二人がいた。
「蘭は髪乾かせよ」
「だってめんどくさいんだもん……」
「仕方ねえな」
俺はドライヤー引っ張り出してきて蘭の髪を乾かして櫛で梳かす。
「手慣れてますね」
「昔はよくやってたからな。蘭が髪短かった頃くせっ毛が嫌だっていってごまかすために」
「愛姫ちゃんもやる?」
「えっ!?」
「あっ、いやごめん。今のは条件反射というかなんというか」
なんか今日の俺おかしいぞ、どうしたんだ。
「あ、あの……やってもらえたら嬉しい……です」
「えっ……?」
まあそのままの流れでやることになったけど終わるまで特に会話が弾まなかった。
「これで終わりかな」
「あ、ありがとうございます」
少し頬が赤く染まり微笑んだ彼女を見た俺は数秒だったが見惚れてしまった。
その後部屋にもどってベッドの上に寝転がったが果たして俺は今日寝れるのだろうか。
「なんか体温上がっちまったし、色々言っちゃうし。なんなんだこれ……」
今まで体験したことのないような感情が心のなかに生まれていたのかもしれない。
これにて4章が終了となります




