レポート57
時が過ぎ、イベント当日がやってきた。
参加者もそれなりにいるようだ。
前には大きなステージがある。
というかこんなに【裁縫】とか【装飾】持ちがいるならもっと交流深めて出会っていたかったな。
「エントリーしてきました。私達は12番目ですね」
「全体で何組いるんだ?」
「今回は58組だそうです。そのうちの7割が女性モデルみたいですね」
「緊張してきたよランちゃん」
「大丈夫だよ。アイちゃんの美貌なら!」
そんな風に話しているとステージの上にいたグラサンをかけてバンダナをつけた男の人がマイクを持って立ち上がり話しはじめる。
「それじゃあ! 順番も決まった所で早速始めていっちゃいまショウタイム!」
会場全体から雄叫びが上がりテンションボルテージが上がっているように感じる。
その後はドンドンステージが始まりアピールをしていく。
ちなみに俺達は自分たちの番が12番ということもあって前の組のパフォーマンスは見れてない。
というかあとで録画データが運営からもらえるとはいえ自分たちのチームのすら楽屋裏にいると見れないっていうのは結構来るものがあるな。
『エントリーナンバー12番のチームの方、スタンバイお願いします』
「それじゃあ! いってくるよ」
「いってきます」
「大丈夫。私のコーディネートは今までで最高」
「ま、楽しんできて」
二人を見送る。
「どうなるかな……」
「どうでしょうね、見れないのももどかしいです」
「だな」
「……でも、ここにいても聞こえてくる外の歓声の限りでは良い結果になるんじゃないですか」
「そうだな」
休憩を何度か挟んだりしつつ数時間後全てのチームのパフォーマンスが終わり、結果発表の時間となる。
「それでは発表しちゃうぜ~。優秀賞は――」
会場が静かになりドラムロールの音が響く。
「エントリーナンバー35番のチームだ! フラメンコドレスからの熱いパッションとクールな執事のコンビはまさにビューティフル! だったぜ」
たしかにあのチームはすごかった。
フラメンコの踊りまでパフォーマンスに入れてきたんだからな。
「まあ、あそこは仕方ないよ。お兄ちゃん元気出して」
「別に俺は落ち込んでねえよ」
「私も大丈夫です」
「うぅ……」
「あれぇ!? 一番参加渋ってた人が落ち込んでる!?」
そんなコントみたいなことをランがしているが審査員が続けて話しだした。
「まだなにかあるのか?」
「いえ、そんな話は聞いてませんが」
「更に! 今回は審査員に実はNPCショップなどで売ってるアバターデザインをしているデザイナーの方にも参加していただいたわけで。ようするに特別賞も発表するぜ!」
運営意外とこのイベント本気で作ってるな。
デザイナーさんまでよんだのか。
「特別賞に輝いたのは――」
再び会場が静寂に包まれドラムの音が響き渡る。
「エントリィィナンバー12番のチームだぜぇ! おめでとう! デザイナーさんからのコメントだ『一見スタンダートに見えるギャップの組み合わせだったが服装に愛を感じる装飾などは施されていたのが目で分かった。この愛が服への愛なのか着てるモデルへの愛なのかは不明だが。とても心に響いた』とのことだぜ!」
俺は一瞬聞き間違えかと思ったが、横を見たら喜んでるランと小さくガッツポーツをとってるミルナちゃんがいたので現実だと認識した。
「予想外ですが良い結果です」
「さすがにお兄ちゃんとミルちゃんだね」
「俺は予想外だったりしてるけどな。デザインのリアル知識なんて皆無に近いわけだった――」
「やったー!」
「――ちょっ!?」
話してたら落ち込んでたと思ったアイちゃんに突然抱きつかれた。
え、何そんなに嬉しかったの。
いやそれよりちょっとこの状況はまずい当たってるし、当たってるし!
「やった! ユミさんやった!」
「うん、やった。喜んでるのは嬉しいんだけど。ちょっと離れて貰えたら嬉しいかな」
「大丈夫だよ、お兄ちゃん」
「なにが!?」
「アイさんとユミさんは端から見たら女の子二人が喜びでじゃれてるようにしか見えないから問題無いです」
「俺の精神問題だよ!」
しばらくして離れてもらったけど、絶対これ顔真っ赤だよ。
ていうかめっちゃ笑顔だった。
アイちゃんの笑顔めっちゃ可愛かった……。
「それでは受賞者には明日までに賞品をメッセージにて送ります。今回のイベントはこれにて終了だぜ! これからもみんな、レッツ! ファンタジー!」




