レポート46
「あぁあぁあぁあぁ……」
「ユミさん、声の震えが一周してビブラートのような音を奏でてるよ」
もう、嫌です。
帰りたいです。
でも未だにレシピ関係のドロップがゲットできないんだよな。
そして中ボスフロアまでついたみたいだけど。
まさかの蜘蛛だったりしないよね。
「よーし、いくぜぇ!」
ユウが突っ込んでボスを出現させる。
なんか地面が盛り上がったような。
「まさか、あれって……」
「サソリでござるな。かなりでかい」
「よし、やっちゃいましょう! 『ファイア・エンチャント』!」
勝手に火を燃え上がらせて突っ込むラン。
「拙者もまいる!」
「『ウィンド・カッター』!」
シエンさんも飛び込んでいき、レールさんが風の魔法を飛ばす。
レールさんは水魔法と氷魔法を使うが、氷魔法の出現条件がたしか風と水の魔法技能を一定レベルまで上げることだったはずだから、風魔法を使っても何ら不思議ではない。
「よいしょ……『スタン・クエイク』!」
アイちゃんが手に持った槌で地面を叩くと、地が揺れた。
それによってサソリに一時的にスタン効果が入る。
「いまでござる! 『火炎斬り』!!」
「『バスターブレイク』!」
「とりゃぁっ!」
ランとシエンさんの炎の剣と刀でサソリが燃え上がり。
ユウの両手剣の横薙ぎの打撃でサソリがこっちに吹き飛んでくる。
しかも、まだ生きててこっちきた。
「ごめんなさい。そこまで武器技能のレベルあげてないからスキルがまだ使えないの」
「私も風魔法の魔法詠唱速度が強化してなくて」
「あれ? 俺ピンチ……こっちくんな!」
俺が取れる行動はいくつあるか。
逃げよう、そう考えた時にはどう考えても逃げ切れない位置にサソリが見えた。
そもそも中ボスフロアだから逃げ場所がない気もした。
「お兄ちゃん槍使って槍!」
「そうだ、槍のリーチならそこまで近づかなくても……あいつの戦闘スタイルじゃ無理だ」
「いぃやぁぁ!!」
俺は目をつぶりがむしゃらに何かした。
「おぉ……これまた見事に刺さったでござるな」
シエンさんが言う。
ゆっくりと目を開けると槍が突き刺さってHPがなくなり消えていくサソリ。
「アイちゃん俺、何したの?」
「投擲スキルもなしに槍をなげて見事に命中したかな。あと可愛いひめ――」
「お、お兄ちゃんナイス投擲! 虫みたいな魔物のために遠距離武器か投擲今後とるといいんじゃないかな!」
とりあえずさわらないですんでよかった。
「すみません。サソリの敵は昔別のものと戦ったのですが氷の通りが悪かったので風を使ったらこんなことに」
「まあ、風魔法じゃなかったら槍でとどめさすまでHP減らなかった気がするし。いいんじゃね」
「うん、とりあえず早く進んで終わらせよう。ここから引き返すとか逆に嫌だ。あとアイちゃんとランが奥のほうで話してるのは何」
「色々複雑なんだよ。お前が虫関係になった瞬間にあれと同じ光景を俺は4度ほど別の人物で見たことがある」
「ユミ殿。レシピ本ドロップしたので帝都に戻ったら渡すでござる」
「シエンさん。ありがとうございます!」
もう帰ってもいいかなって思ったけど。
ボス部屋までいってポータルとか使って帰ったほうがもういいよね。
中ボス部屋から入り口まで歩いて戻って蜘蛛に襲われたくないから!
ボス部屋へ向かって俺達は進み始めた。




