レポート44
「ゆうじ~」
「どうしたんだよ、真弓のほうから俺に突撃してくるとは一年の夏の体育以来だな」
俺は次の日、学校で夕二に突撃した。
ちなみに一年の夏の体育の時というのは木の近くにいたら上から虫の幼虫が落ちてきてパニクって突撃した。
俺の虫嫌いはそれほどに深刻である。
大丈夫なのは蚊みたいにすぐ退治できるやつだな、オスのでかいやつは無理だけどな、刺さなくても。
あとギリギリのラインでトンボだな。
害がなくてそこまでむしむしくない。
「狩りを手伝ってくれぇ」
「まさか俺が狩りを頼まれる側になるとはプレイ始めた時には思いもしなかったぞ。とりあえず理由を聞かせろ」
「服系防具のレシピドロップ率高いって森を蘭に聞いて行ったら虫系の魔物の巣窟だった……」
「あぁ……未だにダメだもんな」
なんだかんだ長い付き合いなこいつならわかってくれると信じていた。
「よし、任せろ。ただ明日でいいか? 実は一緒にどこか狩りか攻略行こうって言われてる人たちがいて今日きまって明日行く予定だったんだ」
「邪魔しちゃってすまんな」
「いや、場所決めてなかったしそこは攻略してなかったからそこ攻略しにいこうと提案してくる」
「ちゃっかり場所決めのいいタイミングにされた……ありがたいからいいけど、じゃあ明日学校で集合場所とか教えてくれ」
「あいよ」
よし、これで運さえ良ければレシピ一つぐらい手に入るはずだ。
増築完了予定が来週だったから一つぐらいなら作り出せそうだしな。
そして次の日、夕二に言われた場所へと向かうと顔なじみ勢揃いって感じだった。
「ユミ殿、久しぶりでござる」
「お久しぶりです」
「お久しぶりです。シエンさんにレールさん」
腰に刀を下げ、和服的防具を着ているのはシエンさん。
帝都が出来る前にダンジョンをレイド攻略するという企画立案者だった人だ。
なにげに上位に位置するプレイヤーだったりする。
そしてレールさんだ。
相変わらず綺麗な水色の髪に透き通った声の持ち主。
「あ、ユミさん。よろしくね」
「アイちゃんも知り合いだったんだ」
「おう、両手剣作ってもらってるんだよな。というか生産職って意外と帝都外の街に拠点もってることが多くて会えないんだよ」
「へぇ……」
「お兄ちゃん、なんで私の事スルーするのかな」
いや、そもそもお前がこれを知った上で俺に教えていたのが悪い。
あと、今まで意識して見なかったけどゲーム内のランはツインテールだったんだな。
レールさんがストレート、アイちゃんがポニーテール、ランがツインテール……
見る人がみたら発狂しそうなメンツだよなこれ。
「お前がこのマップのことをもっと詳しく教えていれば……」
「ユミさん、いったいここで何が……」
「言ったらお兄ちゃんは行かない気がしたんだもん」
「ユウさんもしかしてユミさんって……」
「うん、大の苦手だ」
俺とアイちゃんとランが話しているのを横目にユウとレールさんが何か話してる。
「ユウ殿、揃ったので出発しようぞ」
「そうだな、ということで。森の攻略に出発だ!」
「おー!」
こうして俺にとって地獄の森攻略が始まった。




