レポート33
俺達は最初に降り立った港の船着場に集合した。
「俺が調べてわかった情報は、この街には俺達の他に4パーティーいた。わけかたとしては俺達みたいな戦闘や地上戦パーティーが2つ、建築や生産系のパーティーが1つ、そしてバランスがいいパーティーがひとつだ。俺達は地上戦パーティーだな。そんでこのイベントのチーム分けだが人数には差があるらしい、フィールドの条件ごとに違うっぽいな」
「あぁ、酒場で【木工】特化パーティーを見つけたからそこに追加で俺達合わせて6パーティーだな。すでにフィールドでてる奴らがいたら別だけど。そんで条件ごとに違うっていうのは?」
「あぁ、俺達は港町が拠点となったな。ここが一番いい立地と素材条件らしい、だがそのかわりに人数は少なめ。そして無人島みたいなジャングルにほおりだされたチームがひとつ、そこは立地最悪の条件最悪らしい。まあ材料があっても加工とかまで全部自分たちだからな、だが一番人数が多い。もう一つが海沿いの村のチームだ。ここが中間でそれなりの素材と立地でそれなりの人数だな」
ユウが説明していく。
つまり高拠点少人数と中間、そして低拠点大人数の3チームの戦いってわけだ。
「そして私達からの報告なのです。この街の広さや設備なのですが、船を作るための木材加工などを行ってくれるNPCの工房がありました。広さは王都の3分の2くらいで、ギルドがないということ以外は同じようなものは買えるみたいです」
「あとは設計図とかもクエストをクリアすればもらえるみたいね。ただそんなことしてる間に攻められたらおしまいなんだけど」
ナルとユリナからの報告だ。
王都の3分の2だと徒歩で歩きまわるぶんにはそれなりの広さだな。
「そして俺達からの報告だ! 先ほどユミがいったように【木工】特化のパーティーを発見した。だがこの街で買える木材がない、もしくは足りないのかで木材調達を頼まれたぞ!」
「まあガリウスが言うとおりだな。一応街の外に森があるみたいだからそこで伐採すればどうにかなりそうだけどな」
「やっぱり足りねえのか……後で他のパーティーとも話し合いだな。船つくろうにも人数が少ないからでかい船つくるのかパーティーごとの船作るのかとかも決めねえといけないしな」
ユウはリーダーシップを持っている男だ。
あえていうならリアルがちょっとやる気なさげなだけでな。
「よし、今回のイベントでお前がキャプテンだ。これを贈呈しよう」
「ん? 突然どうした大将……アバター?」
俺はここに来る前に作った海賊コートと帽子を渡す。
具現化せずにトレードという形で渡したからまだどのようなものかはあいつにはわからないだろう。
そしてユウがアバターをイベントリから装備するとオレンジ髪のキャプテンが出来上がった。
「おまっ、これ!」
「いいではないか。イベントの趣旨にもあっているしな」
「それにユウさんがリーダーなのにも反論はありませんしね」
「かっこいいのです!」
「お前のカトラス見てなんとなく作ったが、イベントとビンゴだった」
俺はサムズアップした。
ユウは体を震わせている。
あれ、怒らせちゃったかな。
そんな心配はこの後無駄になった。
「はっはっは! 大将にこんなものまでもらってしまったらやるしかないな! やってやるぜ!20日間限りのキャプテンユウの物語を作ってやる!」
めっちゃ喜んでくれていた。
この日の夜、俺達は外の森へときていた。
あのあとパーティーの代表者達が集まってでた結論がこうだという。
まず船だが大型帆船と小型帆船の二つを作る。
小型帆船に1パーティーのり、他のパーティーは大型帆船となる。
要するに大勢が守って、精鋭たちが突っ込むという漫画的作戦だ。
【木工】技能を持つ人間がいるパーティーやその技能レベルから計算して最速で5日完成にかかるらしい。
予定として明日明後日で木を伐採して加工を終わらす予定だ。
今夜は明日伐採する時のために敵がでてくるか否か。
出た場合レベルがどの程度なのかということの確認をしに来たわけだ。
「今のところいないな」
「ですです」
ちなみに担当は俺とナルとガリウスの3人だ。
というのも空腹システムが実装されたのももう懐かしい話かもしれないが。
今回のイベントの持ち込みアイテムの数の関係上、食料をがっつり持ち込むことはできなかったのだ。
そのため現地調達となる。
街があるからそこで食べてもいいんだが、なんとなくせっかくのイベントだしということで俺が料理をつくろうと思ったんだが。
それならこの際、チームで集まって食べようということになった。
他のパーティーにいる【料理】持ちと一緒に大量生産という形だ。
ユウとユリナは食材集めということだ。
「むっ。子犬よ、あの前の3本目の木を射ってみろ」
突然ガリウスが言う。
「え? わかったです」
そういってナルが矢を放つ。
すると木が小さな声をあげて動き出した。
植物系の敵のトレントだ。
レベル的には俺達なら楽勝だが、今のように木に擬態して不意打ちを受けることがよくある敵だ。
「よく見つけたな」
「俺は【観察眼】のスキルも上げているからな! 造作も無い」
俺達はトレントを倒した。
この後もなんどかトレントを見かけたが他の敵などは現れなかった。
「まあ安全ってことならいいか」
「伐採の時に気をつければいいのです」
「ふむ、手応えのない……だが海戦までの我慢と思っていてやろうではないか」
ガリウスは何やら物足りなげだがまあいいだろう。
この夜はこの後、何事もなく平和に過ぎていった。




