レポート21
次の日、俺は上機嫌で帰路についていた。
そう、ゲーム用の課金ポイントを購入したのだ。
とはいえそんながっつり課金するわけじゃないよ。
あくまでダウンロードコンテンツをちょっとだけ欲しくてね。
ていうか音声案内さんのあのノリで話されてアバターがないのがずっと違和感だったんだから仕方ない。
「ただいまーっと」
「お兄ちゃんおかえり~」
家につくと妹が出迎えてくれた。
というよりは偶然玄関近く通ったからみたいな感じか。
俺は米がたかれてなかったので米を研いで炊飯器をセットし、部屋に戻ってパソコンを立ち上げる。
音声案内のアバターなどについてはVRS内ではなくパソコンでの購入のが色々と楽なのだ。
「えっと、あの感じだと……性格変更とかのは買う気ないからアバターアバター……」
アバター購入欄を見つけたがかなり数が多い。
感覚だけで選んでいく。
そして購入を押してからいざ、VRSを起動する。
「おかえりナサい、マスター!」
音声案内だったのがアバターを持って話してる。
というか今までわかりやすい女の子の声を機械加工したみたいな声だったけど普通に女の子の声になってる。
アバターってすごい。
「なんか、すごい感動したわ……もう今日はここにいてもいいや」
「ゲームはプレイしないんデスか?」
ピンク髪を揺らして音声案内娘が聞いてくる。
俺が直感で買ったアバターを合わせた結果、高校1年みたいな雰囲気のピンク髪で少しちっちゃい子になった。
「するする、今日も料理をしなければ……と思ったけど防具とかそろそろ揃えるようだしアイさんいたら行ってみよ」
「それではいつものデいきマショう!」
「ちょっとまった……今更だけどなんか呼び方ないの君のこと」
「アバター購入のさいに設定場所があったと思いますよ?」
ものすごい見逃してた。
ログアウトしたら寝る前に設定しておこう。
そうだな……『ナナ』でいいか。
「デハ気を取り直シテ リーンクオン!」
俺は帝都へと降り立った。
「よっし、それじゃあやるとするか……っとその前に」
フレンド欄を見てログイン状況を確認する。
ユウはいつもどおりログイン中でアイさんもログインしてるようだ。
『防具の相談がしたいのですがいってもいいですか』
とフレンドメッセージを入れておいて、帝都の西門目の前の草原で狩りをする。
帝都に入る条件がダンジョン10のクリアということもあって、それなりの敵ばかりだ。
『シュロロロロロ』
「どんな鳴き声だよ!」
そんなこといいながら根で歩いてくる木の敵を槍で斬っていく。
やっと槍になれて自由に動かせるようになってきた。
まあ多分システムの補助入ってるからだろうけど。
あとで聞いたら俺はシステム補助が最低限しか入らないほぼ自由な型でプレイをしていたらしい。
特に設定は変えずにそのままやっているがここまで触れるのは多少の補助があるからだと思う。
槍のシステム補助を強く入れた場合はそもそも突きのモーションが基本だそうだ。
「おらっ!」
俺は槍を使って木を斬り倒した。
半分棒術みたいな使い方だろうなこれ
10匹程度倒した当たりでフレンドメッセージに着信があった。
アイさんからだった。
『大丈夫だよ。あと帝都で今度は借り手とかじゃなくて正式に店立てるから荷物運びも手伝ってくれたら嬉しい』
「大丈夫ですよ。今から行きますっと」
返信を返してその場所へと向かう。
アイさんが荷物を一時的に保管していたという倉庫に辿り着いた。
そこにはアイさんともう一人、銀髪の女の子がいた。
「おぉ、ユミちゃんきたきたー」
「どうも、そちらの――」
「お、お兄ちゃん!?」
銀髪の女の子が俺の言葉を遮り言ってきた。
ていうか、え?
「…………ランか。お前?」
「はい……蘭子です」
まさかのゲーム内で妹との遭遇であった。




