レポート17
「うおおおおお!!」
俺は森のなかで一心不乱に植物をみじん切りにしていた。
料理スキルを手に入れてからはレシピなども成功すると登録されるようになり、やる気がモリモリ上がっていた。
「うおおおお……おっ?」
そして料理に夢中になったけっか後ろから敵に襲われて死亡回数も着々と増やされていた。
「またやってしまった」
俺は王都の入り口で膝をつく。
最近料理に本気を出し始めたのはいいのだが注意力が更に落ちた気がする。
いや注意力自体はあるんだがすべて料理方面に向けてしまっている気がした。
「うぅん……でもまだ料理用の施設とかはないんだよな」
料理ギルドなんてものはないし喫茶店を見つけられたのも偶然としか言えないわけだ。
「家でも買うか……いやでもな、それならアップデートまで待ちたいんだよな」
秋にアップデートがあると聞いてからは何事もアップデートまで待ちたくなってしまう。
どうするか俺が悩んでたらフレンドメッセージがとんできた。
ユウからだった。
『これから大型パーティーを組んで一気に第4ステージから第10ステージまでゴリ押し攻略。くるか?』
俺は行くと返して集合場所へと向かった。
「お、きたかユミ」
「おう、間に合ったか?」
俺が集合場所にたどり着くと合計で20人程度の人数のプレイヤーが集まっていた。
「というかなんでこんなことになったんだ?」
「ああ、それがなアップデートでパーティーの人数制限が6人になるらしいんだよ。それで10ダンジョン目って初心者から中級者の切り替わり場所なんだよな」
「まあそれは知ってるけど」
「そんでそこのボスってレイドボスに近いタイプなんだよ。だから人数制限かかって調整難しくなる前にやっちまおうって」
「そういうことだったのか」
そんなことを話していると今回の立案者である人物が拡声器みたいなものを持って出発を宣言し、全員出発をした。
攻略は10ダンジョンボス前までスムーズに進みいまはボス部屋の前の最後のセーフティエリアだ。
最初は小パーティーをくみつつ戦っていったが俺はユウと二人で暴れまわっていた。
周りからすごいと言われたりもしたが何がスゴイのか聞くに聞けない状況で進んできてしまった。
第6ダンジョン目からはレールさんが加わった。
そしてすごいことは現在ゲーム内で有名な高レベルのトッププレイヤー二人の一人が参加していたりする。
「『斬技・諸刃斬り』!」
その人は片手剣を派生させていってとれる技能【刀】を使うプレイヤーだ。
今は剣を使ったプレイヤー達が技能方針を決めるための材料になるということで技の披露しているところらしい。
俺はというと作戦会議に何故か混ぜられている。
「ユミ殿、いかにこやつらを攻略する?」
「なんで俺に聞くんだよ。自慢じゃないが『特攻見習い』持ちだぞ、俺」
「攻めることに長けているのは良いことではないか」
話しているのは今回の企画主である刀使いだ。
さっき言ったトッププレイヤーにはおとらずとも2派生目の刀を使っていることから実力はあるといえる。
「まあ、噂通りの敵なら小隊をいくつかつくってローテーションに近い形が安全だろう」
「やはりか、拙者もそう思うでござるが。いかにして小隊を?」
「まあ前衛系二人、魔法系一人と他二人ぐらいのバランスでいいんじゃないか?」
「回復部隊を別に作るのもいいかもしれぬぞ」
「あぁ……そうだな、光魔法の人達は別舞台で盾持ちの人二人ぐらいで護衛をつけよう」
「承知した」
ここのボスは大型のミノタウロスらしい。
動きは素早くHPがタフなのが特徴で一撃も重いらしい。
この後小隊を作って別れて軽い顔合わせを済ませたあとボスに挑戦することになった。
「俺はユミだ。こんなみためでも男だから、よろしく。武器は長槍だ」
「そして大将の自称親友のユウだぜ。武器は見ての通り両手剣だ。」
「レールです。水の魔法と風の魔法を使えますよ。よろしくお願いします」
俺が知っている二人と俺が挨拶を済ませた。
そしてあと二人この小隊にはいるがこの二人は俺たち全員初対面である。
「ふはは! 覚えさせてもらったら貴様らの名を! 俺の名前はガリウス、召喚魔法を使っている。よろしくたのむぞ」
「召喚魔法? そんなものあったのか」
「あるわよ、ってことでごめんなさい。うちの兄があんな感じで、私はユリナで同じく召喚魔法使いよ。ちなみに召喚魔法は契約した幻獣とか呼び出すタイプと武器とか呼ぶタイプがあるけど私は契約タイプね」
「つまりガリウスは武器ってことか?」
「そういうこと」
自己紹介を済ませて動きを確認したあたりでボス部屋突入の時間がやってきた。
「それでは皆の者、出陣!」
企画主が刀を上げて扉を開ける。
ボス戦が始まって30分がたつだろうか
ミノタウロスは話の通りタフで早くなかなかHPが削れなかった。
そしてようやく赤ゲージまで持っていったがここで怒り状態のようになり更に速度が上がる。
そして次に突っ込むのはオレたちの番だ。
「よし、大将いくぜ!」
「ふはははは! 俺がとどめを刺してやる、ゆくぞ!」
ユウとガリウスがやるきまんまんで突っ込んでいく。
が、二人がミノタウロスを攻撃する前にレールの魔法がミノタウロスへと飛んで行く。
「『スラッシュウィンド』!」
複数の風の刃がミノタウロスの顔へと吸い込まれていった。
「『召喚・雷の鳥』!」
そして次にユリナの召喚魔法が炸裂する。
魔法陣が空中に浮かびそこから雷のまとった鳥が現れる。
その鳥はそのままミノタウロスへと突撃し放電した。
『グオオオオオオオッ!!』
ミノタウロスが雄叫びを上げる。
「ユウ、ガリウスすまんな。俺が突っ込ませてもらう!」
「なっ! ぬけがけとは貴様!」
「大将そりゃないぜ!?」
俺は助走をつけて槍で突きを入れる。
「『チャージアタック』!」
助走をつけて突っ込むことでダメージを上げる【長槍】のスキル技である。
槍がミノタウロスの腹へと突き刺さる。
そして後ろからあとを応用にしてユウとガリウスの攻撃が炸裂する。
「おっしゃあ! いくぜ 『スラッシュアッパー』!!」
両手剣を下から上へと切り抜ける両手剣技だ。
「『デュアルゲート』――そらぁっ!」
ガリウスの後ろにゲートが2つ現れて武器の柄がでてくる。
ガリウスはそれを掴みミノタウロスへと武器を投擲する。
ゲートからは次々に武器が出てくる。
そして俺達のMPが尽きるとほぼ同時にミノタウロスが倒れた。
「っしゃあ、クリア!」
「ふんっ、造作も無い」
「レールさんとユリナさんもお疲れ様」
「ユリナでいいわよ。そっちこそお疲れ」
「はい、みなさんお疲れ様でした」
俺達はミノタウロス撃破を味わい。
王都へと戻りログアウトした。
「今夜はよく眠れそうだな」