レポート10
「よっしゃぁいくぜいくぜ!」
ユウが張り切って道中エネミーを吹き飛ばしていく。
パーティーを組んでいる現在は経験値が入ってくるからほっておいてもいいけど。
「しかし、嬢ちゃんは見た目によらずアグレッシブだな」
「そ、そんなことないんですよ!」
ガンツとナルがユウの後ろで話しながら歩いている。
「なんていうか、こう見てると親子に見えますよね」
「あ、俺もそう思った」
レールさんと俺が殿を務めている。
「レールさんってβテストに参加してたんですよね?」
「そうですが?」
「ここのボスってどんな奴なんですか?」
「えっと、たしか木のゴーレムでしたね。道中の動物と比べて突然固くなるんですよ」
木のゴーレムか。
中々に対応に困るものを出してくれやがって、だいたいゴーレムってゲームによって形違うんだよな。
ドラモンクエストの奴みたいのならいいが。
「まあ最初のボスということもあってかなりゆるい設定になってるらしいですけどね」
「というと?」
「ボスの前にセーフティーエリアがあって一回までならデスペナなしでそこに戻って再挑戦できるらしいです」
「全滅して様子見前提かよ!?」
運営は何考えてんだ全く。
しばらくした所でテントが立ったエリアにたどり着く、奥には扉がある。
どうやらセーフティーエリアみたいだ。
「よし! それじゃあ作戦を立てていくぞ!」
ユウを中心に作戦を立てていく。
経験者のユウに戦闘指揮を任せっぱなしだがここまでが限界だろうな。
「とりあえずユミ。お前に教え忘れてたことがあるから教えておくぞ、メニュー開け」
「うん? 開いたけど」
「槍に技が増えてるだろ、武器レベルが上ったから増えたんだが発動方法覚えておけ」
「了解だ」
この後ゴーレムの動きなどの情報を教えてもらい建てた作戦がこうだ。
まずゴーレムは体が固いため物理の4人はスキルを使わないと大きなダメージは与えられない。
ゆえにレールさんの魔法を主体として攻めていく。
ガンツと俺が正面で敵をひきつけ、ユウが俺たちが一時的に下がるときの補助。
レールさんは攻撃を続けて、狙われたらナルがスキルで牽制を行うという流れだ。
俺達は木製の大扉を開ける。
奥にいたのは木のゴーレムだ。
大きさはだいたい俺達の3倍ってところか。
「まずは俺に任せておけ! 『兜割り』!!」
ガンツが勢い良くジャンプし斧で斬りつける。
斧のスキル技兜割りだ。
名前の通り頭から力強く割る勢いで攻撃する技だ。
この技でゴーレムの体が揺らぐ。
絶対ガンツ筋力系にステータス特化させてるだろ。
「はぁぁぁっ!!」
俺も続いてダメージにならなくとも気を引かせるために槍で突く。
『!!!』
ゴーレムは左右の手でガンツと俺と同時に狙い攻撃してきた。
「きくかぁ!!」
「あぶねっ!?」
ガンツは盾で攻撃を受け俺は回避をする。
「『ウォータージャベリン』!!」
ゴーレムが腕と体勢を戻す隙にレールさんが水の槍を何本も叩きこむ。
『ゴォォォォ!!!!』
ゴーレムが雄叫びを上げ、レールさんの方向へと動き出した。
「いかせません! 『スパイラルシュート』!」
ゴーレムの横へと移動していたナルが矢を放つ。
矢に回転がかかりドリルのようになるスキル技のようだ。
「俺も忘れないでもらおうか! 『アッパーカット』!!」
ゴーレムの懐に潜り込む片手剣のスキル技で上へとユウが斬りこんだ。
「俺もやるとするか! 『突進』!」
俺も槍のスキル技で突撃する。
名前の通りまっすぐいって突き抜ける技だ。
体が固く突き抜けられはしないがダメージにはなる。
『ゴオオオオオオ!!!!!』
ゴーレムのHPゲージは3本あるが2本目の半分を切った所でゴーレムの色が変色する。
そうしてフィールドから3本ほど弦が生えてきて、俺達に攻撃してくる。
「おいっ! なんだこれ!?」
「ちくしょう、やっぱり新動作増えてやがったか!」
「ガッハッハ! おもしれえじゃねえか!」
俺は少し後ろに下がりレールさんを狙う弦を迎撃する。
「しつこいっ!」
「本体を狙います! 『ウォータージャベリン』」
レールさんが魔法でゴーレム本体を狙う。
ガンツよナルはゴーレムを攻撃し、ユウが弦の対処をしている。
そして来るべくしてきたのであろうが、ゴーレム本体が俺達のほうへと向かってきた。
「ユミ、レール! そっち行ったぞ!」
「すまん、止めきれなかった」
ゴーレムはこちらへと移動し、腕を振り下ろしてきた。
レールさんを後ろに下がらせて槍で無理やりガードするが。
攻撃に耐え切れずそのまま潰れる。
「やべっ!? のわっ!」
「ユミが死んだ!!」
「死んでないわっ!!」
手がどいた瞬間に這い上がる。
俺が押しつぶされてできた穴ができていた。
ゴーレムの残りゲージも後わずかである、全員で攻撃を集中する。
「おらぁっ!!!」
最後はユウの一撃で幕を閉じた。
「あぁー、やっと倒せた」
「MPがもう空ですよ」
「疲れましたです」
「潰された時は死んだかと思ったわ」
「よく生きてたな、本当に」
実は俺のHPはレッドゾーンまでいってたりする。
「よっしゃあ! そんじゃ次の街いこうぜ。ここからがfowの真髄だからな」
「そのとおりですね」
俺とガンツとナルは公式稼働から始めたため知らなかったがこの二人が言うならそうなんだろうな。
まあとりあえず、俺のVRS初めてのボス戦とエリアをクリアしたことを今は喜びながら次の街へと行くとしよう。