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部長とは、部活動の『長』である。  作者: 銀煤竹
03 朱眼の魔王・碧眼のサソリ
73/146

03-01 prologue

3章突入

月の光が降り注ぐ中、湿った微風が周囲に居る人間の髪で遊んで通り過ぎる。


ここは砂漠の町。

日中は30度近くなる気温も、夜になれば氷点下に落ちる。

そんな寒さの中、数十名の部隊が月明かりの下で作業をしていた。


武装した人々が円陣を組んだその中央に、すでに生きているモノは無いだろう肉の塊が積み上げられており、油をまかれて火の用意がされていた。始末するための準備が着々と進められている。


「これで全てか?」


黒い髪に赤い瞳。1人ラクダに乗った男性が作業中の人に声を掛けると、傍で作業をしていた男性がそれに反応してラクダの方に向き直り頭を下げた。


「はい、アルトゥーロ様」

「そうか。…では、火をくべよ」


男性は短い返事を返した後で火を放つために駆けて行った。高位な彼を見るのは憚られたか、彼の力に畏怖したか、視線を上げて顔を見ることは無い。


アルトゥーロと呼ばれた男は防寒のために巻いていた布を下ろして、目元のみが出ていた状態から顔全てを外気に晒し、深呼吸するかのように息を吸い込んだ。するとそれを見ていた側付きの男性が声を掛ける。


「アルトゥーロ様、冷たい夜気はお体に障ります」

「構わんさエルビー。火がつけばどうせ直ぐに暖かくなる」


そう言って声を掛けてくれた側近の方を振り返った。茶色の髪に赤茶の瞳を持つ男性、エルビーもまた、視線を伏せて彼を直視しようとしない。もう既に慣れたとはいえ、親しい者のよそよそしい態度に少しだけ詰まらなそうな顔をして、そんな考えを振り払うかのように視線を火が付けられた山へと戻した。


夜の闇に立ち上る黒い煙。夜の闇に溶けていき、僅かな煙では月の光をさえぎる事さえできないようだ。

相変わらずに降り注ぐ月の静かな青い光。

それに対抗するかのように赤く燃え上がる炎、そして周囲に漂う炎が肉を焦がす独特の臭い。


“ガサッ…”

「…ん?」


辺りを照らす赤い炎。その中で何かが動いた気がして、アルトゥーロが声をあげた。それに気づいたエルビーも、アルトゥーロを見てから彼の視線が向いている方へ顔を向けて炎を見つめる。


「どうかなさいましたか?」

「いや、何か動いたような…」

「…恐らく身が焼け崩れたのでしょう。明日も早いのですから後始末は我々に任せて、そろそろお戻りください」

「…そうだな…」


エルビーの言葉に頷いて、ラクダの向きを変えようとしたときだった。


“ウオォォー!”


空気を切り裂くような唸り声を上げて炎の中から何かが飛び出した。真っ直ぐにラクダを目指してその上に乗るアルトゥーロに牙をむく。いち早く危険を察知したエルビーが剣を抜いて突進してきた何かを切り伏せようと刃を振うが、仲間の骸を盾にして彼らの攻撃と炎に耐えたそれは、瞬時に身をひねって攻撃を避け一旦距離を置くと、直ぐに周りにいた者たちに囲まれてしまい、うかつに動けない事を察知している様子。それでもとラクダの上のアルトゥーロを真っ直ぐに睨みつけた。


突然の奇襲に驚いたラクダが暴れ出すが、すぐさまエルビーが手綱をひいて落ち着かせる。そんなラクダの背から滑るように地面に降りたアルトゥーロは、此方に向かってきたソレを真っ直ぐ見つめた。


「何だお前は。生きていたのか」


その問いかけに返事が返ることはない。

彼とは対象的な白い毛並みに、今この瞬間の月夜のような深い青の瞳。そして真っ直ぐにぶつかる視線に、アルトゥーロはにやりと笑みを浮かべ、刃を抜いた。



2章終わった!イェーイ!

…って遊んでたら3章を書く時間が無くなった(焦


じ、次回から頑張る!

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