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部長とは、部活動の『長』である。  作者: 銀煤竹
00-00 序章 ~嵐の前の静けさって言うのは、嵐になってみないと分からなかったりするもので~
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00-04 柔道部部長+家庭科部副部長・カコウ部部長

「フフッ、ありがとう。お茶うけは…あぁ、クッキーとか残ってるよ」

「とりあえず、全部持って行きます」

「了解。じゃあコレ、お願いね」


元気な守屋の声に思わず笑みを零しながら、お礼を述べる。簡易キッチンまで備わっている部室、其の隣の棚をあけて中をチェックすれば、食べる事が好きな守屋はテンションが上がりまくりで、とりあえず食べられるものを彼に渡す。

彼と入れ替わりでキッチンに入ってきた鷹司が、流しに大きい籠を置く。


「アコン、これ」

「ありがとう、ナガレ。…うん、おいしそうに育ってるね」

「雨龍も水撒きば手伝ったし」


収穫を頼んでいた鷹司が、籠いっぱいに入れた夏野菜を八月一日に渡す。出来を見て満足そうに笑えば、手伝ってくれた雨龍に視線を移し。


「わざわざ悪いね。ありがとう」

「なに、良い材料を提供してもらってるからな」


と、その返答に草加が反応


「提供って…貰って帰ってるんですか?」

「いいや、そういうわけじゃ…無いが…」


雨龍はなんとなく言いづらそうに口ごもる。それでも黙って先を待っていた草加のために、八月一日が口を開き


「雨龍さんは、柔道部部長だけど、家庭科部の副部長でもあるんだよ」

「「「「えぇ?!」」」」


驚きの新事実に一同騒然。衝撃で言葉が出ない彼らを見て、飲み物をトレーに乗せて運び、テーブルに置きながら


「現に、このクッキーも雨龍さんの手作りだよ。昨日食べた人は分かると思うけど、絶品だったよね」

「そりゃぁもう!おいしかったっス!」


もりもり頬張りながら守屋がブンブンと頷いた。



この学校では生徒数が多いため、部活も高校生の部、大学生の部と分かれているが、部長と副部長は両方から1名ずつ出す事になっている。

出来る範囲で掛け持ちに制限は無い。


大体は大学生が部長、高校生が副部長となるが、複数の部活で部長になることは出来ず、力量で決められる事もあるため、この限りではない。


音楽系は音楽部の中の吹奏楽科、軽音楽科となっており、必要ならば吹奏楽のメンバーが軽音の舞台に立ったりと行き来も出来る自由なスタイル。

しかしやはり弦楽器が出来る生徒は少ない。バイオリンやギターなど人気楽器ならともかく、コントラバスは珍しい。そういう場合は外部からのヘルプ要員として人を呼び込む事も珍しくは無かった。


雨龍が柔道部だということは知っていた。

しかし家庭科部を掛け持ちしている事は知らなかったため驚きでしばらく静まり返った室内。その空気を変えようとしどろもどろといった様子で雨龍が口を開く。


「いや、今は一人暮らしでな。学生やってると節約しないと生活に響くだろ?だから自炊を始めたら料理が楽しくてだな…」

「手先が器用だし、雨龍さんに取れたボタンつけてもらったりもしたんだよね。色々気を使ってくれるし、何て言うか…お母さんみたい」

「っておい八月一日!お父さんならまだしもお母さんか?」

「あぁ、それは分かるかも知れないですね。マジ雨龍さんの差し入れ美味しですし、体調悪そうだと色々面倒みてくれるし」


実体験をホンワカした雰囲気で語った八月一日は慌てた様子の雨龍と同意した九鬼に笑みだけを返す。と、一人キッチンに残っていた鷹司がデキャンタに氷を沢山入れて戻ってきた。


「ん。…しゃっこい飲み物サしたいだば、コレ使え」

「しゃっこい?」

「…冷たい」

「おぉ!氷ゴロゴロ。…って、あれ?タカやん何処から出したの?この部室冷蔵庫無いよね」


先ほどのように守屋の突っ込みには淡々と返すが、突然出てきた氷に舞鶴が鷹司へ質問をぶつける。すると感情の読みにくい顔を舞鶴に向けて。


「…作った」

「へ?氷を?冷蔵庫を?」

「…(コクンと無言で頷く)…」

「…え?それはどっち!?」

「それじゃ分からないでしょ。ナガレ」


人付き合いが苦手な鷹司は口数も少ない。見かねた八月一日が助け舟を出す。


「ナガレは高等部から工業科目を専攻していてね、高等部入学時に部員数減少で廃部寸前だった科学・工業部に入ったんだ。その活動の一環で、園芸部の備品を作ってくれるんだよ。で、今回は製氷機」

「今だば、俺どアコンの二人だげだ」

「二人ってことは、アコちゃんは園芸部の部長だから、タカやん科学・工業部の部長?」

「…ん。アコン、副部長」


舞鶴の問いに肯定の意味をこめて一度頷く。続いた言葉に息を漏らしながら天笠が口を開き。


「はぁ~。本当に何でも出来るんですね。でも私、科学・工業部って…聞いた事無いですけど、何してるんですか?」

「えぇっとね、俺が入るまでは工業に関する作業が多かったみたいだよ?それと、学校の方にはカコウ部って名前で出してあるみたい」

「カコウ部?…八月一日先輩が入る前は、ってどういうことですか?」


聞けば聞くほど疑問がわく。

身を乗り出して尋ねる天笠。周りの皆も興味津々で2人を見つめる。


「あのね、俺が入って科学というより、化け学寄りになっちゃったんだよね。だから、漢字で表記すると合ってるような…違うような…って話になって、カタカナにしようって。ついでに科学・工業部って言うのも長ったらしかったので、省略してこんな感じになりました」

「化学寄りってどういうことですか?」


草加の問いにスッと椅子から立ち上がり室内を移動して。


「化学は、様々な物質の構造、性質、相互反応を研究する学問領域で…えぇっとなんて言えば良いのかな?化学反応の応用で花火作ったり、物質の成分を分析したり、化学…生物学にも近いんだけど、バイオテクノロジーもかじってみたりしてね…」

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