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部長とは、部活動の『長』である。  作者: 銀煤竹
00-00 序章 ~嵐の前の静けさって言うのは、嵐になってみないと分からなかったりするもので~
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00-03 大学部2年生・3年生 吹奏楽部部長・吹奏楽部副部長

「ナガレ?いたの?」


部室正面の出入り口とは違い、横にあるテラスへ向かうための大きなガラス戸。そこから菜園に行けるため、第2の出入り口となっている。

そこから室内に入った彼は【鷹司タカツカサナガレ】。大学部2年男子だ。肩に着かないように切られた髪は黒。そして、やる気が無さそうに見える細長い黒い瞳にかかる少し長めの前髪は左に軽く流している。今は若干汗で湿っているが、普段はサラサラヘアーだ。

かぶっていた麦藁帽子を外してうちわの代わりにして仰ぎながら、猫柳の声に目を軽く伏せるだけで肯定の意を示し。


「めぇ空気?」

「あぁ。「うまい」空気って事だ」


意味を理解できず守屋が繰り返せば、そういう態度に慣れているのだろう嫌な顔一つせず説明してやり、持ってきていた自分の飲み物を取るために一度皆に背を向けて。


「あいづは気管支弱いから。従兄弟で一時期近所サ住んでた俺が、よぐ病院付き添ったんだ」

「嘘…私知らなかった」

「昔の話だ。今は良くなったばって、運動が苦手なんは変わらんね」 


獅戸が思わず声をはさむと、フォローのつもりか今は昔ほどではないと告げながら冷えたペットボトルを己の首筋に当てる。


「おいおい、そういうのは本人が居る時にきちんと話したほうが良いんじゃないか?」


鷹司が入ってきたガラス戸からもう一人。此方も帽子を被った大きな男が入ってくる。

彼は【雨龍ウリュウタクミ】大学部3年の男子。実年齢は35で、実はバツイチの子持ち。欲しい資格と再度勉強をするために入りなおした。苦労が多かったのか、白髪が混じり始めた灰色の髪は短く切り、大体オールバックにしている。薄い髪色に映える鮮やかな赤い瞳。190台の身長とがっちりした体躯は頼れる男性そのもの。学校でもお父さんポジションだ。


「かまんねぇさ。弱い部分サ隠す必要はねぇ。知ってもらってたほうが、いざどいう時助かるべな」


目上であっても鷹司の口調が変わらないのは昔から。そんな彼を気にした様子はなく、雨龍も上がった体温と水分補給のために持ってきていたペットボトルに手を伸ばし。


「なるほど。苦労してるな、お前も」

「…別に」


そっけなく言い放てば、少し離れた場所に置いておいた自分の荷物がある場所に腰掛ける。それを追いかけるように雨龍も椅子に座って一息ついた時、会議室のドアが開いた。


「今年も絶対私達吹奏楽部がいただきます!」

「いいや!今年は絶対軽音部がアコちゃんをもらう!」

「あ、ミッキー…と舞鶴先輩?」


会議室から出てきたのは三木谷ナナともう一人。【舞鶴マイヅルチアキ】大学部3年男子。鮮やかなオレンジ色の瞳に、ピンクが強い紫の髪は緩やかウェーブで猫っ毛。ヘアピンを着けたり、伊達眼鏡をしたりして遊ぶオシャレ男子。チャラくて派手な格好をしているが実は実家が神社で神主の息子だったりする。


「あ、アンナちゃん。ひっさしぶり」

「舞鶴先輩!まだ話は終わってないです!」


声を掛けた獅戸に気づいた舞鶴が数歩近づこうとして、言い争っていた三木谷が慌てて服をつかむ。


「ヘルプ要員のお願いでしょ?…もしかして、日程かぶっちゃったの?」

「…うん。そうみたいなんだ」


九鬼が必死な三木谷に声を掛けると、最後に会議室から出てきた男性が返事を返した。

彼が園芸部部長【八月一日ホヅミアコン】大学部3年。

髪の色は落ち着いた金色。深い紫色の瞳は視力が悪く眼鏡を常備。程よい筋肉にスラッとした体躯、優しい眼差しも時折鋭い眼光を宿し、何かに集中すると周りが見えなくなる没頭タイプ。

2人の話を聞きながら要点を纏めていたノートのページに視線を落として。


「吹奏楽部のコンクールと、軽音部が出る予定のサマーフェスティバルが同日みたいなんだ」

「楽器はコントラバスですよね?軽音でもコントラバス?」

「そうだよ九鬼さん。サマーフェスではアンプをつなげる電子楽器になるんだけどね。曲によってはベースに持ち替えたりも…」

「今年こそは優勝狙ってるんだよ。だからアコちゃん!ジャズ系の楽曲も織り交ぜたいし、音楽部部長としてお願いします!軽音に来て!」

「あ!やめてください舞鶴先輩!吹奏楽だって1位金賞をねらってるんですよ!?音楽部副部長として、そこは譲れません」

「吹奏楽だろ!?なんで弦楽器いれるんだよ。いいじゃん、チューバ居るじゃん!低音居るじゃん!」

「ブレスを必要としない弦楽器の重要性が分かっていないようですね。たとえ1本でも途切れない音があるのと無いのじゃ全然違うんですよ!?」

「…ずっとこんな感じだから休憩挟もうと思って。それに皆の声聞こえたし、お茶くらいださないと」


穏やかに笑む八月一日の声に一早く反応した守屋が椅子から立ち上がった。


「お手伝いしまッス!」

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