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「そんなもの作れるんですか!?」

「作れないわ」

「へ?」

「私は魔女じゃないもの」


 そう言うとフランは『料理レシピ集』と書かれた本の表紙を見せた。


「だから発汗作用と心拍数が上昇する食材で作って、恋をしたと勘違いさせるの」


 本を読み込むフランを見て、シアはうっと息を詰まらせる。自分とは正反対のフランに惹かれつつあるので、想い人がいるとすれば相当ショックだ。


「そ、そこまでして好かれたい相手なんですか……?」

「は?」

   

 おずおずと、怯えた小動物のような顔で見つめてくるシアを怪訝に思い、フランは本から顔を上げた。


「お客様に頼まれたの。大金積まれて何も作らないわけにはいかないでしょ」

(なんだ良かった……でも断る選択肢はないんだな)

 

 シアはホッとしつつも、フランの全く隠そうとしない守銭奴な性格に苦笑した。


「そうだ。昨日の代金を支払いに来たんです」

「そう」


 フランは本をテーブルに置くと、引き出しから懐中時計を取り出して代金と交換した。


「綺麗な懐中時計ね。星空を閉じ込めたみたい」


 シアが懐中時計をポケットに仕舞うのを眺めながら淡々と言うフランを見て、王族の紋章が刻まれていることには気付いてないのをシアは察した。


「もしかして最近移住してきました?」

「そうだけど」

「よかったぁ」

「?」


 昨夜は焦って王族と分かる物をうっかり渡してしまったが、身分がバレていなかったのでシアは安堵した。首をかしげるフランに向かって、優しく微笑む。


「俺はシアです。この国で困ったことがあればなんでも言ってください」

「……じゃあ早速」


 フランは料理の本を広げ、花の写真を指差した。


「この花を見たことある?」

「確かうちの領……いや、咲いている場所を知ってます」

「つれてって」

「いいですよ。その代わりに名前を聞いても?」

「……フラン」

   

 渋々と名乗るフランに、シアは手を差し伸べた。


「俺でも役に立つことがあって嬉しいです、フラン」

「私はお姫様じゃない」

「エスコートしまっ、イタタタッ」


 手を無視し、先にスタスタと外へ出て行こうとするフランをシアは慌てて追いかけようとするが、振り返った瞬間に昨日と同じようにオーナメントに頭をぶつけた。


「道のりは険しそうね」


 その様子を見て、フランは小さく溜息をついた。

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