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 美しいシアに口説き文句ともとれる言葉を向けられたフランだったが、やがて馬鹿にしたように鼻で嘲笑った。

 フランは、愛を全くと言っていいほど信じていなかった。


「顔も見せない相手を好きになるわけないでしょ」

「あ……」


 フランの言葉に、いまだ着けられたままの仮面にシアは触れる。


「学生なら学校で恋愛しなさいな」


 カードを箱に仕舞い始めるフランを前に、なんと答えればいいか分からずシアは狼狽え、気まずい空気のまま立ち上がった。


「きょ、今日はありがとうございました! ま、また来てもいいですか?」

「お代をいただけるのであれば」


 棘のある返答にハッとし、慌ててポケットに手を突っ込むが青ざめる。服を叩いても何も出ず、財布を忘れたことに気付く。


「すみません……明日必ず持ってきます……」


 フランは真顔でテーブルの下から幾重にも太い鉄製の棘が刺さる武器、モーニングスターを取り出した。


「明日なんてないですよ?」

「っ、これを保険として置いていきますので許してください!!」


 命乞いとして差し出されたのは、王族の紋章付きの懐中時計だった。フランは目を輝かせ、態度を180度変えて営業スマイルを浮かべた。


「お待ちしてます♪」


 シアはホッとしてその場を後にしようと踵を返した。出口へと向かう背中を見つめていたフランだったが、不意に口を開く。


「顔を見せてないのはお互い様」

「え?」


 振り返るシア。フランは自分の目元を隠す布を指で弄りながら言葉を続けた。


「そう言い返さなかっただけ、貴方はクズじゃないと思う」

「!」


 自分を、鈍臭くて何の役にも立たないクズと言ったことに対しての否定に、シアは驚くと同時に嬉しさがこみ上げ、熱を帯びた顔が赤くなる。


「失礼な態度をとって悪かったわ」


 言葉とは裏腹に堂々と腕を組むフランを、シアは全く気にすることなく、目隠しの下の眼を見つめながら優しく微笑んだ。


「人には言えない事情って、誰にでもあると思うので」


 一礼するとシアはドアベルを鳴らし占いの館を後にした。静かになった店内で、手のひらの懐中時計を見つめフランは考え込む。


(信じられるのはお金だけ)


 懐中時計を握りしめ、フランはそっと、もう片方の手で目隠しを押さえた。

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