表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/4

3

「……」


 自分のことを好きになるには、どうしたらいいか。

 思わぬ言葉に暫くシアを見つめていたフランだったが、やがて口元に笑みを浮かべ、カードをテーブルの隅に退けた。


(はいはい。占いじゃなくて相談のパターンね)


 この仕事をしていればよくある事だ。こういう場合、大抵はアドバイスではなく愚痴の聞き相手を求められるので、適当なところで相槌をうてばいいだけの簡単なお仕事としてフランはやり過ごしていた。


「自分のことが好きな人って、そんなにいないですよ」


 テーブルの上で手を組み、穏やかにフランが語りかけると、俯いたままだったシアはおそるおそる顔を上げた。


「そうなんですか……?」

「嫌いだったり、自信のない人がほとんどです」


 目元は薄紗の生地に隠れて見えないが、慈悲深い聖母のような笑みをフランは口元に浮かべる。


「自分を好きになるのは簡単なことじゃない。貴方もそれを分かってるから聞きに来たのでしょう?」


 その言葉はシアにとって救いだった。誰にも言えなかった気持ちを瞬時に理解されたことで、出会ったばかりだというのにすべてを委ねてしまいたいと思うほど、目の前の占い師に心惹かれた。それをすべて感じ取ったうえでフランは黙っていた。


「あ……当たってます……!」

(単純で助かる~)


 感極まった様子で両手を口元に当て、自分を見つめる姿に内心ニヤニヤする。心の枷がひとつ外れると決壊したダムのように、シアは早口で愚痴をまくし立て始めた。


「俺、勉強も運動も出来なくて! 鈍臭いし何の役にも立たないクズなんです!」

「あらあら」

「家でも迷惑かけてばかりだし、こんな自分が嫌で嫌で仕方なくて……っ」

「……」


 頭を抱えシアは深い溜息をつく。もしかしたら本気で深刻な悩みを抱えているのかもしれない。いつもみたいに適当な相槌をしていれば客が勝手にスッキリして帰るのとは違うかもと、フランは珍しく相槌以外の対応にでた。


「誰かに好きになってもらって、自己肯定感を上げるほうが早いかもですね」

「え……?」

「気になるお相手とかいないんですか?」


 ここで得意の恋愛占いに誘導すればリピーターになるかもしれない。商売根性を親切心でコーティングしてニコニコとしていると、顔を上げて暫く呆けた様子だったシアは、フランを見据えた。


「あなたのことが気になる」

「へ?」

「俺と違ってすごく堂々としているから」


 目を仮面で隠し口元しか見えないのに、シアが初めて見せた微笑みはとても美しいものだった。

 天井窓から差し込む月明かりも照らされる姿に、フランは釘付けになる。


「あなたに好かれたら、きっと自分を好きになれる気がする」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ