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夜。扉に閉店の札がかけられた占いの館で、フランは扇子のように紙幣を広げニマニマしていた。
「今日も稼いだ稼いだー!」
夕方に女子学生を占っていた時のミステリアスな雰囲気は嘘のように成りを潜め、むふふと紙幣の扇子で口元を隠しながら一人ほくそ笑む姿は、ただの守銭奴だった。
(借りるの高かったけど、金持ち学校の近くに店を構えて正解だった~)
木造で年季の入ったテナントは床を踏むだけでギシギシと悲鳴をあげるが、トリオール王立学院の通学路に面しているというだけでお釣りがくる。恵まれた環境で育ち、庶民からしてみれば浮世離れした日々をおくるご令嬢たちでも、年相応に恋愛には興味があるようで、決して安くはないフランの占いに惜しみなくお金を落としてくれるのだ。
(この勢いで稼ぎまくって大金持ちになるぞー!)
おー!と拳を上げて決意を新たにしていると、チリンとドアベルが鳴った。フランは反射的に売り上げをテーブルの下に隠し、入口へ視線を向けた。
「すみません、今日はもう閉店……」
フランの言葉はドターン!と男が派手に転んで来店したことにより遮られた。派手な装飾は無いが上質な布だと分かる衣服を着て、なぜか舞踏会用の仮面で目元を隠している銀髪の男……シアが痛そうに呻き、フランは呆気にとられる。
「うぅ……」
「だ、大丈夫ですか?」
「……う……占いを……」
よろよろと立ち上がりながらシアはフランに用件を伝えた。
「あなたに占ってほしくて来まし、イタタタッ」
天井から釣り下げているオーナメントに気付かず、シアは思いきり頭をぶつけた。鈍臭いと呆れるフランだったが、身なりからして良い客になることは間違いない。だから愛想よく営業スマイルで椅子を勧めた。
「どうぞお掛けくださーい」
「あ、ありがとうございます」
それなりの身分だろうにシアは異様に腰が低かった。ペコペコと何度も頭を下げて着席し、座った後は落ち着かない様子で猫背になり縮こまった。
向かい側にフランが座ると互いに目元を隠しているので少し異様な光景となった。だがフランは全く気にすることなく、カードをシャッフルし始めた。
「何を知りたいですか?」
「えっと……その……っ、恋愛占いがよく当たるという噂を学校で耳にしました」
「ああ、学生さんなんですね」
私服なので気付かなかったが、夕方に来店した女子と同じく、彼もトリオール王立学院の学生なのだろうとフランは解釈した。
「はい、あの……恋愛以外の好きも占えたりしますか……?」
不思議な質問をされ、テーブルの上でカードを整えていた手が止まる。
「と、言いますと?」
シアは両膝の上でギュッと拳を握り、俯いた。
「っ、自分のことを好きになるには……っ、どうしたらいいですか……?」




