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童話と寓話集―― やさしい話――

ねむりの妖精

作者: ゆきつぶて
掲載日:2025/12/16

「ふぁ~~」


大きなあくびをしたのは、ねむりの妖精の子。

お仕事は、みんなにねむりをとどけること。


みんなに――というのは本当にみんな。

小さな女の子から、おじいさん、おばあさんまで。

木かげでいねむりするライオンから、お母さんにしがみついてねむるナマケモノの赤ちゃん。

働きアリから、チョウチョまで。


だから、妖精たちはおおいそがしなのです。


『どうやってねむりをとどけるの?』


それは、とってもすてきな方法なのです。

夜空にチラチラと輝くお星さまたちから、ちょっとずつ光を集めて、音楽にして聞かせてあげるのです。

お星さまたちから集めた音色だから、すきとおってキラキラと輝いているのです。


『そんなの、聞いたことないよ?』


本当にそう?よ~く思い返してみて。

ねむりに落ちるまぎわの、“ふわぁ“ってなるときに、聞こえたことがあるはずだよ?

みんながねむっちゃうくらいおだやかな音色だから、しっかりと耳をすませていないとわからないのだけれどね。

きっと、みんな“すぅ~”とねむってしまうから、なかなか覚えていられないのでしょう。


妖精たちは、そういうふうに昼も夜も、お星さまの光を集めているからおおいそがしなのです。


「お昼も?」


そう、お昼もです。

だって、みんな、お昼ねするでしょ?


お星さまだって、音色といっしょ。

見えないだけなのです。

よく晴れた青空のときだって、くもり空のときだってそう。

空のずっと向こうで、いつもキラキラとまたたいて、ちゃんとそこにいるのですから。


そういうわけで妖精たちは、みんなで代わりばんこにお仕事をして、順番にお休みをするのです。


けれどもこの妖精の子は、やさしすぎるものですから、じぶんがねぶそくになってしまいました。


『いっぱい、きれいなキラキラを集めてあげないと』


いやなことがあって、なかなかねむれない男の子を見つけたのです。


心配になって、ついつい夢中でお仕事をしていましたら、お休みするのを忘れてしまったのです。


それで、


「ふぁ~~」


って、大あくびをしたのです。


いっつもそんなふうにねぶそくになる妖精の子を、まわりの妖精たちは心配していました。


ですから、相談してねむらすことにしたのです。


まずは、妖精の子がねむるためのゆりかごを用意しました。

ちょうど、三日月に照らされたふわふわの雲が流れていましたから、つかまえて、ちゃんとまくらの形までととのえてあげました。


それから、たくさんのお星さまたちにお願いして、とびきりすてきなキラキラをわけてもらいました。

いつもよりすきとおってあったかい音色になりましたから、作っているさいちゅうに、コトリとねむっちゃう妖精もいたくらいです。


それから、妖精の子をゆりかごにねかしました。


「ぼくがねむったら、男の子がねむれなくなっちゃうよ」


妖精の子は、そうもんくを言いました。


でも、大丈夫。

ねむりの妖精たちは、ねむれない子を、ほうっておくなんてことはしません。

どんなにねむれない男の子だって、さいごにはぐっすりです。


妖精たちのとどける音色には、みんなのやさしさがとけこんでいるのですから。


妖精の子は、雲のゆりかごのふわふわにつつみこまれると、あっというまに音色にとけて、“すぅ~”とねむってしまいました。


次の朝、目をさました妖精の子は、とっても元気になっていました。

もちろん男の子も――目をさましていましたけれど、まだちょっぴり夢ごこち。

枕をだっこしたままです。

よっぽど楽しい夢をみたのでしょう。


けれども、妖精の子と男の子のほうに、いつもより多くのキラキラが使われましたから、ちょっとだけたくさん、いろいろなみんなが、お空を見上げて大きなあくびをしました。

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