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御曹司なのに不採用!? ~冷徹女社長と始めるゼロからの恋と成長録~  作者: 優里


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50/60

うなだれ御曹司






蓮は、自他ともに認める超絶ナルシストだった。


幼い頃から容姿、家柄、社交性、全てに恵まれ、

周囲は常に「蓮様」「王子様」と持ち上げる。


本人もその環境にどっぷり浸かり、

「俺ってすげぇ」「俺が動けば世界が動く」と

本気で信じて疑わなかった。


鏡を見ては「今日も完璧」、

SNSに映え写真を投稿しては

「俺って絵になる」と悦に入り、

女性からの黄色い声援を受けて

「まぁな」と当然のように受け止める。


そんな生き方が当たり前だったからこそ、

蓮は「誰かを本気で好きになる」なんて経験をしてこなかった。


いつだって相手から寄ってくる、追いかけられる。


だからこそ、自分から必死に追う恋に直面すると、

赤面と暴走を繰り返すことになる。



一方、優里はその正反対にいた。


彼女は「ナルシスト」を何よりも嫌っていた。


なぜなら、自分の周りは常にそういう男であふれていたからだ。


家柄や財力を笠に着て、自己陶酔と自慢話ばかり。


食事に誘われれば

「俺の高級車」「俺の別荘」「俺の武勇伝」と、

自分の話ばかりで相手を見ていない。


彼女からすれば、そんなものは

「虚しい自己愛の塊」でしかない。


ビジネスの場では相手を尊重して聞き役に回る彼女にとって、

自己中心的なナルシストほど時間の無駄な存在はなかった。


だから彼女は恋愛そのものに冷めていた。


「結局みんな、自分が好きなだけ」と。



蓮と優里。

片や「自分大好き」を公言する男、

片や「自分大好き人間」が大嫌いな女。


まさに正反対の二人が同じ時間を過ごせば、

衝突しないはずがない。


しかし矛盾しているのは、蓮が優里の前に立つと、

そのナルシストな態度がことごとく空回りし、

ただの赤っ恥と化すことだった。


本人は「俺、超イケてる!」と

信じて全力でアピールしても、

優里の眼差しは常に冷ややかで、

まるで「鏡に映る自分に酔っている滑稽な人形」を

眺めているかのようだった。


皮肉にも、優里がもっとも嫌う

「ナルシスト」の極致である蓮が、

唯一本気で心を揺さぶろうと

必死になる相手は優里しかいなかった。





先日のパーティーでは、

お酒で失敗して本命に向かって嘔吐し、

先日の昼間のカフェテラスで醜態をさらし、

優里に致命的な屈辱を浴びせられ、

しかもライバルである蒼司まで現れた蓮は、

夜になっても意気消沈していた。


そんな彼が向かったのは、

親友・晴人からの呼び出しで指定された、

静かなバーだった。


蓮は肩を落としたまま、カウンターの席にぐったりと座った。


「……優里にボロクソ言われて、もう俺、立ち直れねぇわ……」


蓮は深くため息をつき、優里の冷たい目を思い出す。


バスローブ事件からの一連の公開処刑で、

彼のプライドはズタズタだった。


晴人は、蓮の落ち込みを慣れた様子で受け流し、

カウンターでグラスを傾けながら、

落ち着いた声で答える。


「そうか。まぁ、あの子はそういうタイプだ。お前がどう足掻こうと、すぐには靡かないさ」


「わかってるけどよ……俺、どうすりゃいいんだ」


蓮は椅子にぐったりと腰掛け、

自分の無力さを嘆いた。


「この間までのやる気はどこ行ったんだよ」


蓮と晴人がそんな重い会話をしていると、

いつの間にか周りの女の子たちが

チラチラと蓮を見て集まってきていた。


女の子はひそひそと隣の友人に囁く。


「ねぇ、あれ……御曹司の蓮様じゃない?」


他の女の子は目を輝かせて、スマホを構える。


「やばっ、生で見るの初めて! 写真撮っていいかな!?」


(やはり、俺のオーラは隠せない……!)


蓮の耳に自分を称える声が届いた瞬間、

さっきまでの鬱々とした気分は一瞬で吹き飛んだ。


蓮は急に元気になり、ドヤ顔で胸を張る。


「おっと…… やっぱり俺のオーラが抑えきれなかったか」


晴人は、蓮の変わり身の早さに呆れ、

冷ややかにグラスを置いた。


「……さっきまで『立ち直れない』って言ってた奴がどこの誰だ」


女の子は、そんな晴人の視線も気にせず、

無邪気に声をかけてきた。


「蓮様、サインください!」


蓮は自信満々に髪をかき上げながら、

サービス精神旺盛に答えた。


「サイン?いいぜ、ただしハート付きだ」


周囲はざわつき、キャー!という歓声が上がった。


蓮は、失われた自己肯定感を一気に補給していく。


晴人は、蓮の手の付けられないナルシストぶりに、

小声で呆れながら呟いた。


「……ほんと、病気だな。お前のその自信過剰は」


蓮は、気分が高揚し、

酔ったように笑いながら、晴人に宣言した。


「晴人ぃ~、やっぱ俺、まだまだいける気がしてきた! 優里だって、俺に惚れる日は近いぜ!」


晴人は、グラスを傾けながら、

半眼で蓮を一蹴する。


「……勝手に夢見てろ」


蓮はバーの熱狂を浴びながら、

優里に突きつけられた冷たい現実を、

都合よく忘却していくのだった。




「蓮様ってやっぱりオーラ違いますね!」


「その笑顔、反則~! 絶対モテますよね!」


蓮はドヤ顔で髪をかき上げる。


「まぁな。愛とロマンスの申し子だからな」


女の子たちから「キャー!」という黄色い歓声が上がる。


この心地よい承認欲求の波に、蓮は完全に浮かれていた。


(……そうだよな。やっぱ俺にはオーラがある。優里だって、本当は俺に惹かれてるはずなんだ…!)


蓮は、現実の優里の冷徹さをバーの熱気で上書きし、

最高の妄想へと突入した。




ー蓮の妄想スタートー


(場面転換・妄想内。高級レストラン。優里が頬を染めて蓮を見つめている)


優里は、感極まった瞳で。


「蓮……やっぱりあなたは特別です」


蓮は、傲然と受け入れる。


「ようやく気づいたか。俺が世界で一番輝かせられる男だってことに」


(優里が感涙、会場ざわめき「お似合いすぎる!」の声)



ー妄想終わりー



蓮は現実に戻っても、その余韻に浸っていた。


蓮は現実でうっとり顔。



「ふ、ふふふ……やっぱ俺しかいないんだよなぁ……」



女の子たちは「??」となり、

怪訝な表情で顔を見合わせる。


そして、カウンターの晴人は、

そんな蓮を冷めた目で見ていた。




晴人は、蓮の痛すぎる独り言を聞き逃さなかった。


彼はジト目でグラスを置き、決定的な一言を投げつける。


「なぁ蓮。お前、今ここで優里と結婚式あげてなかったか?」


蓮はギクッ!と硬直する。


最大の秘密を、最も冷徹なリアリストである

晴人に完全に見破られたのだ。


「なっ!?な、なんでわかった!?」


「顔に全部書いてあるんだよ。『俺と優里が世界一』ってな」



この「公開処刑」に、周囲の女の子たちも事態を察する。



「なんか……めっちゃ妄想してません?」


蓮は羞恥心で真っ赤になって、必死に自己弁護をする。


「ち、ちげーし!!俺はリアリストだし!!」


しかし、バーはクスクス笑いに包まれる。


蓮は赤っ恥をかきながらも、

この一時の人気を優里への愛の

エネルギーに変えるしかないのだった。



女の子たちの輪から少し抜けた蓮は、

グラスを片手にうっとりモード。



(ふっ……こうして俺がここで華やかに過ごしている間も……優里はきっと寂しがってるに違いない。俺を待ち焦がれながら、今頃ベッドで俺の名前を呼んでるんだ……)




ー蓮の妄想スタートー


(蓮の家のリビング。優里がソファにちょこんと座っている。部屋着で膝を抱え、テレビもつけずにぽつんと俯いている)



「……蓮、まだ帰ってこないのかな」

「……なんだか、静かすぎて寂しい」


(窓の外、雨が降り始める。優里がカーテンを閉め、ため息をつく)


「お前に寂しい思いなんてさせない。俺はもう、二度とお前をひとりにはしない!」


「蓮……!」


ー妄想終わりー



「やっぱり優里には俺しかいないんだ!俺がいなきゃ、優里は寂しくて枯れてしまうんだ!!」


周囲が「ぽかーん」と沈黙。


晴人は氷をカランと鳴らしながら冷静につげる。


「……残念、蓮くん」


「な、なんだよ!」


「カウンター席を見てごらん?」


蓮は、おそるおそる客席の仕切りから顔を上げる。



カウンター席には、優里と蒼司が並んで座り、

グラスを傾けながら穏やかに談笑している。


優里は珍しく柔らかな笑顔を見せ、

蒼司は落ち着いた調子で何かを話している。


その様子はどう見ても“寂しがっている”どころか、

楽しそうな空気そのもの。



(な、な、なんでだぁあああああ!!?)


女の子たちと晴人は蓮の様子を横目に、

冷ややかな視線を送る。


「……寂しがってるんじゃなかったんですか?」


「むしろめっちゃ楽しそうですよね?」


「現実は、残酷だろ?」



蓮は、バーの仕切りから音もなく崩れ落ち、

床にへたり込んだまま動けなかった。


目の前のカウンター席では、

優里と蒼司が親密で楽しげな雰囲気で談笑している。


蓮の心の声は、現実の残酷さに激しく抵抗していた。


(……笑ってる。あの優里が……蒼司と、あんなに自然に……。俺の前じゃ、あんな笑顔見せたことなかったのに……)


その衝撃的な光景が、

蓮の優里への愛と妄想を根底から揺さぶった。


目の前がぐらりと揺れる感覚。


胸がきしむように痛くて、呼吸も荒くなる。


蓮はうつむいたまま、消え入りそうな小声を絞り出した。


「……俺じゃ、ダメなのか……?」



晴人も女の子たちも、さすがに今の蓮の沈んだ、


本気の声には笑えず、しんとする。


バーの喧騒が一瞬遠のいたようだった。


晴人は、カウンターの優里と、

床に崩れた蓮を交互に見比べ、少しだけ眉を寄せた。


(あいつ、ほんとに本気で……優里さんのこと……)


数秒の重い静寂。


しかし、その沈黙に耐えられないのが

御曹司・星野蓮だった。


彼のナルシストなプライドは、

完全な絶望を受け入れることを断固拒否した。


次の瞬間、蓮はバッと顔を上げる。


その目は赤く、涙ぐんでいるように見えたが、

その奥はどこかキラキラしていて、

完全に妄想モードへ逆走していることが見て取れた。


蓮は、最悪の現実を最高に都合の良い解釈で塗りつぶす。


(……いや、待てよ。あれはきっとビジネスの笑顔だ!そうだ、優里は蒼司の前で社交的に振る舞ってるだけ!本当は俺がいないと寂しくて……帰り道に「蓮に会いたい」って涙ぐむに決まってる!!)



蓮は、床に崩れたまま、

誰にも止められない妄想という名の

最終防衛ラインを張り続けるのだった。



床に崩れ落ちた蓮の傍らで、

晴人が呆れたように首を振る。

その時、カウンターから優里の笑い声が聞こえた。


蓮が地を這うような低い姿勢から優里たちを盗み見ると、

蒼司が優里に何か軽く声をかけたようだった。


優里は、さらに楽しそうに笑う。


(くそっ……!優里をあんな笑顔にさせられるのは、本来、俺のはずなのに……!)


蓮の嫉妬の炎が、再び激しく燃え上がる。



優里は小さくため息をついて、

カルーアミルクのグラスに口をつける。


いつもの無表情ではなく、

ほんのわずか柔らかい表情を見せた。



(は……?なんだ今の。優里……蒼司に、ちょっとだけ笑った……?)


ふとテーブルに置かれたグラスに視線がいく。

カルーアミルクの琥珀色と氷の音が、蓮の脳を直撃する。



(ちょ、ちょっと待て……カルーアミルク!?いやいやいやいや、おい!桜庭優里……お酒苦手だったじゃねぇか!?まさか……まさか、これ……完全に“お持ち帰りコース”なんじゃねぇのかーーー!?)



ー妄想内ー


高級ホテルの客室。



優里は昼間の冷徹さはどこへやら、

目はとろんとして、体が熱を持っている。


優里は、か細い声で呟く。


「なんか、ふらふらして……」


蒼司は、優しさと獰猛さが混ざったような目で

優里を見つめる。


「大丈夫だよ、俺が優しくしてあげるから」


蒼司の手が、優里の服のボタンに触れる。

優里は抵抗する力もないまま、服を脱がされて行く。


ー妄想終了ー


蓮は、床に崩れたまま、全身から冷や汗を噴き出した。


最愛の優里が、

自分以外の男に甘い罠にかけられ、

無力化されている。



(やめろぉぉぉぉぉ! 俺の優里に手を出すんじゃねぇぇぇ!!)



蓮の脳内で、最悪の妄想が爆発するなか、

現実のバーカウンターでは、

優里と蒼司の穏やかな会話が続いていた。


蓮は、床に崩れ落ちたままの視線で、

最愛の優里と最大のライバルを監視し続ける。


優里は、カルーアミルクを一口飲んでから、

資料に関する質問をしたようだ。


蒼司は、優里の問いかけに耳元まで顔を寄せ、

小声で何かを囁いた。


(耳打ち!耳打ちしやがったぞあの野郎!!)


蓮の妄想は、甘い囁きを最悪の口説き文句に変換する。



「君は酒に弱いね。この後、僕の部屋で休むかい?」


優里は、蒼司の言葉に顔を近づけて真剣に耳を傾ける。


この仕草が、蓮には親密さの証明にしか見えない。


(なんだその距離は!? 俺が醜態を晒したの知ってて、ワザと俺に見せつけてるのか!? 公開セクハラだろこれぇ!)



優里が、グラスを置こうと手を伸ばした瞬間だった。


蒼司もグラスを動かそうとして、

二人の指先がかすかに触れ合った。


一瞬の静止。


優里は気にする様子もなくすぐに手を引いたが、

蒼司は小さく微笑んで、意味ありげにグラスを傾けた。



(触った!触ったぞ!! 今優里の指に、あの野郎の指が接触した!!)



蓮の脳内では、わずか1秒の接触が、

映画のクライマックスのように引き伸ばされる。


蓮は、自分の体が熱と嫉妬で臨界点に達するのを感じた。



(カルーアミルク飲ませて、耳打ちして、手を触る……完全に段階踏んでるじゃねぇか! 俺の一途な愛が、たった一晩の泥酔で、こんなにも無残に踏みにじられるなんて……!)



蓮は、床にへたり込んだまま、呻き声を上げた。


優里の冷たい拒絶と、蒼司のスマートな誘導という現実が、

蓮の脆いプライドを完全に粉砕し続けていた。



蓮は、バーの床に崩れ落ちたまま、

カウンターで優里と蒼司が楽しそうに談笑し、

カルーアミルクを飲み、

指先を触れ合わせるという最悪の現実を凝視していた。



(カルーアミルク、耳打ち、接触……。もう、これは「お持ち帰り」へのステップじゃねぇか……)



蓮の胸は絶望に支配された。


自分が一途な愛を捧げている間に、

優里はライバルと親密な夜を過ごそうとしている。


「……俺だけ、俺だけが、いつも空回りして……」



蓮はうつむき、呻くように呟いた。


優里の冷たい拒絶と、

別の御曹司との甘い時間の対比が、蓮の心を深く傷つけた。



しかし、絶望の淵に立たされた蓮のナルシスト回路は、

自尊心を守るために最後の抵抗を試みた。


(いや、待てよ! 違う!優里は、俺の醜態に焼きもちを焼かせようと、ワザとあの男といるんだ!そうだ、嫉妬作戦だ!)



蓮は、床に崩れた姿勢のまま、バッと顔を上げた。

瞳には、狂気的な光が宿っている。



蓮は、優里の行動を全て自分への愛情表現として解釈し始めた。


(「耳打ち」は、「蓮に会いたい」って言ってるんだ!指が触れたのは、偶然なんかじゃない! 俺を試してるんだ!「早く私を連れ出しに来て」ってな!)


蓮は、優里に愛されているという妄想で、

熱く体中を満たした。


「……よし、わかったぞ、優里。俺の愛を受け取る覚悟、決まったな!」



蓮が妄想という名の勇気を振り絞り、

立ち上がろうとした、その瞬間だった。


カウンターで会話を終えた優里が、蒼司と共に席を立った。


優里は、自分のバッグに手を伸ばした蒼司を制した。



「大丈夫です、ここは私がお支払いします」


「じゃあ、次の打ち合わせは僕がご馳走するよ。あの案件、急ぎで確認したいから」


「ありがとうございます。じゃあ、失礼しますね」


二人は、何の引っかかりもない、

完璧なビジネスの会話を交わし、

バーの出口へと向かい始めた。


そして、無情にも蓮の前を通り過ぎる。


蓮は、優里の足元に崩れたまま、顔を上げた。


優里は、床にいる蓮を見下ろした。

その目には、愛も、嫉妬も、何もなかった。



二人の間の距離、無関心な視線、蒼司のスマートさ、

そして「次の打ち合わせ」というビジネスの現実が、

カルーアミルクの甘い妄想を一瞬で打ち砕いた。


蓮は、再び、力なく床に沈み込むしかなかった。


彼の赤面と羞恥心は、優里の仕事の前では、

永遠にノイズでしかなかったのだ。



(ダメだ! ここで引いたら、優里は完全にアイツのものになる!俺が、俺が優里を送るんだ!)



蓮は、二人の前に仁王立ちした。


「優里!俺が送る!」


優里は、足を止め、

心底怪訝そうな目で蓮を見上げた。

その瞳には、一切の感情がない。


「……ストーカーなの?」


その冷たい一言が、

蓮の必死な愛の表明を一瞬で犯罪行為へと塗り替えた。


蓮の顔は、赤面から一気に青ざめる。


蒼司はスマートな笑顔を浮かべた。


その笑みは、蓮への明確な挑発を含んでいた。


蒼司は、自然な流れで優里の肩に優しく手を添え、

蓮に宣戦布告する。


「この流れで送るのは俺だと思うけど?蓮くん」


蒼司の紳士的な態度と優位性を示す一言に、

蓮の嫉妬の炎は最高潮に達した。


蓮は、叫びたいほどの怒りで満たされる。


(お前が送れば行き先がホテルになるだろ! カルーアミルク飲ませといて優しく送りますだと!?冗談じゃねぇ! 優里は誰にも渡さねぇ!)



蓮が内心で激怒し、蒼司が優越感に満ちた笑みを浮かべる、

二人の男の醜い争いを前に、優里は何の感情も示さなかった。


優里は、両者の間で繰り広げられる

無意味な緊張感を一瞥し、ふとスマホを取り出した。


そして、冷徹な現実を突きつける一言を放った。


「あの。タクシーで帰るけど??」


優里の言葉は、蓮の必死な猛アピールも、

蒼司のスマートな挑発も、

すべてが自分の送迎権を巡る

「取るに足らない茶番」でしかなかったことを証明した。




「ストーカー」と「ホテル行き」という

醜い妄想を繰り広げた二人の男は、

優里のタクシーを呼ぶ冷静な声によって、

バーの隅に立ち尽くすしかなかった。





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