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御曹司なのに不採用!? ~冷徹女社長と始めるゼロからの恋と成長録~  作者: 優里


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49/60

完璧な氷姫への一目惚れ






蓮の永遠のライバル、

一流ホテル「ホテルゴッド」の御曹司・神崎 蒼司。


蒼司は、完璧主義で常に冷静沈着。


女性に対してもクールで、

簡単に心を動かされることはなかった。


その日、神崎蒼司は、国際フォーラムで開催されていた

大規模な展示会を視察していた。


自社のホテル事業に関連する

最新技術やトレンドを確認するためだった。



しかし、彼の視線は、あるブースで立ち止まる。



蒼司は、自身の足がまるで磁石に引き寄せられるかのように、

ある企業が出展しているブースへと向かっているのを感じる。



(…何だ、あの空気は。まるで氷の彫刻がそこに立っているようだ)


蒼司がブースの前に立つと、そこにいたのは、

洗練されたスーツを完璧に着こなす一人の女性だった。


彼女の持つ資料は精緻で、

そのプレゼンテーションは淀みなく、

何より彼女の表情は一切の感情を見せない。


しかし、その無表情さが逆に、蒼司の目を奪う。



蒼司は、彼女の美しさと知性に惹かれ、

思わずブースに立ち寄る。



「…素晴らしいプレゼンテーションですね。興味深く拝見させていただきました」


優里 は、蒼司の突然の言葉にも動じることなく、

一瞬だけ彼に視線を向ける。


その瞳は、まるで深淵の氷のように冷たく澄んでいた。



「… ありがとうございます。何かご質問でも?」



( この、一切の媚びも、動揺もない態度…この完璧な無関心が、何故これほどまでに俺の心を掻き乱す?)


蒼司は、優里のクールな対応に一瞬戸惑いながらも、

その態度がかえって彼の征服欲を刺激する。


彼は、優里の名刺を受け取ると、内心で笑みを浮かべる。


蒼司は、優里のブースを去った後も、

彼女の残像が脳裏から離れなかった。


彼女の冷徹な美しさ、揺るがない知性、

そして、彼にすら一切の隙を見せないその態度。


それら全てが、蒼司の『完璧主義』を満たし、

彼の心に抗えない衝動を生み出す。


(あの女性だ。俺の隣に立つべきは、あの女性しかいない。手に入れる… 必ず手に入れる)


神崎蒼司は、優里のクールな魅力に完璧に魅了され、

彼女を手に入れることを自らの『宿命』として心に誓う。


それは、彼が今までに経験したことのない、

静かでありながらも燃え盛るような『一目惚れ』だった。


蓮の存在など、この時の蒼司の心には、

一片の欠片もなかった。





優里との運命的な出会いの後、

神崎蒼司はその完璧な知性を優里攻略のために注ぎ込む。


蒼司はまず、優里の情報を徹底的に収集することから始めた。


彼の目標は、優里の『弱点』ではなく、

彼女が最も『評価し、求めるもの』を把握することだった。


優里のプロファイルを調査し、

氏名、所属会社、役職、仕事の実績、業界内の評価、

過去のプロジェクト全てを把握。


優里が最も価値を置くのは、

『仕事での実力と公正な評価』であり、

個人的な感情や財力ではないことを見抜く。



(… 素晴らしい。彼女は金や地位に一切関心がない。純粋に実力を持つ者にのみ心を開く。俺のやり方が通用する相手だ)



蒼司は、優里の仕事に対して

『対等な協力者』という立場で関与することを決める。


彼の狙いは、優里の『プロ』としての尊敬を勝ち取ること。



蒼司のホテル「ホテルゴッド」が

優里の会社の新システム導入プロジェクトの

大口クライアントとなるよう仕向ける。


蒼司は自らプロジェクトの窓口となり、

優里をメインの担当者として指名させる。


もちろん、その指名は優里の『実力』を

評価した上でのものという形を取る。


蒼司は、優里との打ち合わせの場で、

彼女の提案を常に真摯に評価し、

自らも鋭い視点から建設的な意見を出す。



優里のクールな対応は続くが、

蒼司は優里の目のなかに

『対等な相手への尊敬』が

芽生え始めているのを確信する。



(… 金で解決するのは愚かだ。彼女は自己肯定感を求めている。俺は、彼女の『実力』を正当に証明する『絶対的な後盾』になる。そうすれば、彼女の心は必ず俺のものだ)



蒼司は、蓮が登場する直前まで、

優里の世界で最も信頼でき、

最も実力を認めるビジネスパートナーという

確固たる地位を築き上げていたと思っていた。


優里 は、

蒼司に対して恋心を抱いているわけではなかったが、

『尊敬』と『信頼』を感じ始めていた。



神崎蒼司の緻密で完璧な『尊敬と信頼の布石』が

優里の心に静かに響き始めた頃。


その静謐な世界は、

ある日突然、暴走する『感情の津波』によって掻き乱される。



優里 にとって、

蒼司は尊敬すべきビジネス パートナーであり、

彼の存在は優里の仕事の

公正さを証明する確固たる証拠だった。


蒼司が思う優里の世界は、

知性と実力に基づく誰にも邪魔されない論理の城だった。




しかし、ある日の午後。


蒼司が優里と打ち合わせを終えた瞬間、

その後を追うように、 派手なスーツで

優里の後ろを犬のように追いかけまわる存在がいた。


「…優里 !相変わらず天才だな!」


「取引先からの難しい提案を、たったひとことでまとめてしまうなんて! ほんと、尊敬しているよ」


そんな蓮の様子をみていた社員たちはポツリ。


「…尊敬じゃなくて、愛ですよね?」


「優里さんに振り向いてもらいたくて毎日飽きずに追いかけまわしてますもん」


「俺様感どこ行った…?」


この暴走する塊のような存在が現れてから、

優里の完璧な世界は音を立てて崩れ去る。


この状況を打ち合わせに来ていた蒼司が目撃する。


蓮の幼稚で感情的な行動は、

蒼司の緻密な計画を根底から踏み躙るものだった。


蒼司は突如として現れた蓮の存在に心底ムカつく。


(あの馬鹿な感情の塊は …星野グループの御曹司の、星野蓮か!彼の関与など、一切予測していなかった!私の優里への布石が、あの下品で幼稚な暴走によって台無しにされるのか?)


蒼司の表情は微動だにしないが、

その瞳の奥は激しく燃え盛っていた。


彼は、蓮の存在を知らなかった

自分の情報収集の甘さにもムカつきを覚える。


しかし、蒼司のムカつきをさらに助長したのは、

優里の蓮に対する態度だった。


優里は、蓮の暴走を罵倒するのではなく、

まるで躾の行き届いていない

ペットを扱うかのように冷静だった。



「… はいはい。静かにして。うるさい。」


蓮は優里に『はいはい』と言われただけで、

犬のように大人しくなる。


( なんだ、この関係は…!あの蓮が、一人の女性に『はいはい』となだめられて静かになるなんて!優里は、感情的な暴君すらも手名付ける完璧な調教者だというのか… !)



蒼司は、優里の手名付けの才能に

さらなる魅了を覚えると同時に、

蓮という感情的な乱入者の存在に対し、

静かで冷徹な闘争心を燃え上がらせるのだった。



蓮は蒼司のことなどどうでもよさそうに、

優里を連れて行こうとする。


「… 優里!会議は終わりだろ?さあ、行くぞ。」


「……ん?誰だ、この男は。」


(ちょ、ちょっと、待て待て待て、こいつこの間の御曹司じゃねーかぁ!)


「あぁ、御曹司様は醜態をさらしていたから初対面?」


「…蓮。紹介する。こちらは『ホテルゴッド』の神崎蒼司さん。重要なクライアント。蒼司さん、こっちは…ええと、”星野グループの御曹司さん”」


蓮 は超他人行儀の優里の対応一瞬ムッとする。


「…噂は伺っています。優里さんの才能は素晴らしい。彼女が私の要求に的確に応えてくれる限り、今後も長期的な取引を希望しています」


蒼司の言葉は穏やかだが、

その裏には

『私は優里の仕事にとって不可欠な、実力で結びついた存在だ』 という

強烈なメッセージが込められていた。


蓮は、蒼司の冷静な視線の奥に、

優里への感情が潜んでいることを見抜いていた。


蓮は、優里の腰を抱き、蒼司の目を真正面から見つめる。


「… 取引ですか。仕事だけで優里を縛れると思わないことだ。優里の全ての時間は俺のものだ。俺は、優里と愛を結んでいる。君とは格が違う」


蒼司は、蓮の『愛』という感情論に対し、

一瞬唇の端を引き上げて笑う。



「…感情もまた、支配の手段の一つでしたね。勉強になりました。ですが、優里さんは無駄な騒音より、静かで確実な『結果』を好むはずだ。今後のプロジェクトで、また優里さんと会えることを楽しみにしています」


「蒼司さん、気にしないでください。この人ちょっと”妄想癖”があって、あぁ、”虚言癖”もか。」


「私はこの”御曹司様”とは何もないのでご安心ください。」


蒼司は、優里に対して完璧な会釈をすると、

蓮に一瞥もくれず、静かにオフィスを去っていく。


残された蓮は、蒼司の冷静さの奥に潜む強烈な敵意に、

全身で戦慄していた。



優里は蒼司をエレベーターまで送り届け、

蓮は奥から蒼司を睨みつける。


エレベーターの扉が閉まった瞬間、蓮の表情は一変した。


彼の目は、嫉妬の炎を燃やしている。


「… どういうことだ!優里!あの神崎といつからあんな親しげに話すようになった?取引先だと? ふざけるな!」


「…落ち着いて。仕事でしょ、 仕事。私とあの人の間に、私的な感情は一切ない。私の実力を評価してくれる、唯一のまともな人間」



優里の冷静な説明は、蓮の嫉妬をさらに煽る結果となる。


『実力を評価してくれる唯一のまともな人間』という言葉は、

蓮に対する痛烈な皮肉だった。


蒼司の『静かで確実な結果』を好むという発言が、

蓮の心に鋭く突き刺さっていた。



( クソ…あの男は優里が最も求めている『公正な尊敬』を与えようとしている。俺の『暴走する愛』とは真逆の、優里を確実に手に入れる戦略だ!こんな完璧なライバル、許さない !)



蓮は、優里の頬を強引に両手で掴み、

優里の顔を自分に向かせる。



「… なら、俺がその『まともさ』を全部ぶち壊してやる。優里。よく聞け。 実力も、仕事も、全て俺にとって二の次だ。」


「… ちょっと! 人前でしょ!」


「… ああ、人前でいい。全部見せつけてやる。優里は誰のものかを。俺の優里だ!あの神崎にも見せつけろ!」



その翌日も、神崎蒼司は、

優里との打ち合わせのため優里の会社を訪れる。


優里は長引く会議中で、

蒼司はオフィス内の応接スペースで待つことになる。


そこで蒼司は、蓮に出くわす。


(… またあの馬鹿か。優里が仕事中にまで押しかけて邪魔をするとは。優里にとっては迷惑でしかない存在だ)


蒼司は、蓮が優里の会社に

社員として潜入していることなど知らず、

蓮を『暴走するバカ』と相手にせず、

手にしていた優里への提案資料を冷静に見直し始める。


彼にとって、蓮は『無視すべきノイズ』でしかなかった。



しかし、蓮の反応は蒼司の予想を裏切る。


蓮は、優里の前で見せるような

情熱や嫉妬のカケラもなく、

蒼司の存在を確認すると、

極めて冷静で事務的な視線を向けてくる。



蓮は優里に対した時とは別人の、冷え切った声で話し出す。


「… 神崎 蒼司 殿 か。『ホテルゴッド』が進めているアジア圏の買収計画、少し無駄がありますね。私の会社のアセットを使えば、コストを三割削減できる」



蓮は、蒼司がまだ公にしていない

極秘情報を知っていることを示唆し、

完璧な論理と数値で

蒼司の経営戦略に対して鋭い指摘を突きつける。



蒼司は、蓮の豹変ぶりに息を呑む。


彼の冷静な知性をもってしても、

目の前の人物が優里に『きもい』と言われて

喜んでいたあの御曹司と同一人物だとは信じられなかった。



( 馬鹿な…こんな完璧な冷徹さ、圧倒的な情報量と経営手腕。これが蓮の本当の姿… ?優里の前で見せるあの感情的な暴君は、全て優里を手に入れるための『演技』というのか!… いや、あれは本物だ。だとしたら、こいつは二つの顔を持つ、恐ろしい怪物だ)



蓮は、蒼司の動揺を完璧に見抜いているが、

優里がいない今、優里に対する愛の言葉は一切口にしない。


ただ、静かで絶対的な『格の違い』を蒼司に見せつけている。



「… 優里を狙うのは勝手だが、ビジネスと愛とで、私に勝てると思わないことだ。時間の無駄だ」


蒼司は、蓮の予測不能な『二面性』に打ちのめされ、

優里を手に入れることが

予想以上に困難な道であることを痛感する。



蓮は、蒼司の顔が動揺で

微かに歪んでいることを確認すると、

優里の会議室の扉に意識を集中させる。


彼の冷徹だった瞳の奥に、僅かな『熱』が宿り始める。



カチャッと扉が開く音がした瞬間。



蓮の顔から、数秒前まで見せていた

『超一流経営者』の仮面が跡形もなく消え失せる。



( …なんだ。何が起こる?)



優里が疲労の色を浮かべながら会議室から出てきた、

その 瞬間。


蓮は瞬間的に『暴走するバカ』モードへと戻る。


その変わり身は、

まるで人格が入れ替わったかのような速さと徹底ぶり。


蓮は、先ほどの冷徹さが嘘のように、

甘えた、大声で叫びだす。


「優里 !! やっと終わったのか!寂しかったぞ、この俺を待たせるなんて!愛してる!」


蓮は、蒼司が座っていることなど完全に無視して、

優里に飛びつく。


その抱きつき方は、

まるで大型犬が飼い主にじゃれつくかのようだった。



「…うわぁっ!うるさい!蓮、人前で…ていうか、蒼司さんがいらっしゃるでしょ!」


蓮は優里の抵抗すら愛の言葉として受け取り、

優里の耳元で熱烈な愛の囁きを始める。



「…いいだろ、どうせ邪魔者だ。優里の疲労は俺のキスでしか癒されない!」



蒼司は、優里の冷徹な瞳が、

蓮の暴走に対してだけ、

微かに呆れという名の

『緩み』を見せていることを見逃さなかった。



( 恐ろしい…恐ろしい男だ!あの冷酷な頭脳が、優里の前では一瞬で『愛のスイッチ』を 入れ、この完璧な『バカ』を演じられる … いや、演じているのではない。彼にとっては両方が真実だ)



そして、この瞬間、

蒼司の知性は蓮の二面性の真の意味を悟る。



冷徹な顔は、自分を『ビジネス的な存在』と

認識している人間に対してのみ見せる、 格上の王の顔。


暴走の顔は、

優里が最も求める

『安心感と愛情の確約』を得るための、

究極の『依存と独占 の愛情モード』。



蒼司 は、自分が優里に対して

積み重ねてきた『論理と尊敬』の城壁が、

この蓮の予測不能な二面性によって

いつ崩されるか分からないという、真の危機感を覚える。


彼は、蓮から優里を奪い取ることが、

単なるビジネスや恋愛の勝負ではなく、

二つの異なる世界観を持った

王同士の『戦争』になったことを理解する。



蒼司は、静かに立ち上がり、

窓の外の東京の摩天楼を見下ろす。




(優里 …あの騒音のなかで、なぜあれほどに冷静でいられる?あの暴走する愛を、まるで当然のものとして受け止めている?)



優里のクールさは、

蒼司にとって『完璧な知性』の象徴だったが、

蓮との関係に見せるあの『諦めと容認』は、

優里の完璧さに潜む唯一の『隙』に見えた。


それは、蒼司の心を掴んで離さない、抗えない魅力だった。



蒼司は再び、窓に映る自身の冷徹な表情を見つめる。

蓮が見せた二面性は、蒼司の闘争心に火をつけた。


(暴走するバカの仮面と、冷徹な支配者の素顔。どちらも本物だというのか。私の予測の範疇を超えている。だが…)



蒼司は、スーツの内ポケットから

優里の名刺を取り出し、指先で静かになぞる。


(…だが、蓮。お前の愛はあまりにも『感情』に頼りすぎている。優里は、その感情の津波に疲弊している。いつか必ず、その重圧から逃れたがる瞬間が来る)



蒼司の戦略は、蓮の圧倒的な『熱』に対抗するため、

より冷徹に、より優里の本質に響くものへと進化する。



蒼司は、優里の世界が論理と実力に基づくことを再確認し、

蓮の『愛の暴走』とは真逆のアプローチを取ることを誓う。



感情で対抗せず、優里の『仕事の世界』を完全に掌握する。


優里が仕事で得る全ての公正な評価と成功は、自分。

つまり、蒼司からであるという認識を優里に植えつける。


優里にとって

『最も居心地の良い、最も安全で、最も完璧な場所』を創り出すこと。


その場所こそが、自分の隣であることを証明する。



(… 蓮。優里を手懐けたつもりでいるなら大間違いだ。優里の心は、感情に流されることなく、冷静に価値を見抜いている。私こそが、優里の求めている『完璧な所有者』だ。必ず、お前から奪い取る)




神崎 蒼司は、敗北を知らない王の闘志を胸に、

次の一手を打つため、応接室を後にするのだった。



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