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御曹司なのに不採用!? ~冷徹女社長と始めるゼロからの恋と成長録~  作者: 優里


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醜態の記憶修正は不可能!?






フラフラしながらも、蓮は会議室へ向かう。


(やべぇな…。本命にあんな醜態さらすなんて)


(よし…、みっともない御曹司の姿を記憶から消してもらうために、謝りに行こう…!)


しかし、優里の才能が蓮の足を止める。


「…ん?」


(とっても嫌な予感が…)


「あの子、1回見たら覚えちゃう超絶天才だったんじゃなかったっけ…!?」


「てことは…」


(1回見た俺の醜態も忘れねぇーじゃねーか!!)


「…最悪だ」


(いや、でも待てよ。)


(今日まだがっつり話せてないし、ツンツンしてるふりしてさみしがってたりとか…?)


(閉ざされた扉の隔たりで、「蓮くん、今日はあんまり来てくれないな…」とか内心思ってるパターンとか!?)


「完全脈ありじゃねーかぁ!」


心のなかで小さなガッツポーズを繰り返しながら、

優里との“再会”の瞬間を妄想で演出していた。


「よぉーし!待ってろ俺の優里!今すぐ俺様が愛を注いでやるからなっ!!」


しかし、現実は残酷だった。


会議室に入ると、

優里は荷物を片手にさっさと出て行くところだった。



お昼の3時。

帰るには早すぎるはずだ。


「……お、おい、優里!」


蓮は声を張り上げる。


「え?」


「……ちょ、ちょっと待て!もう帰るのか?」


優里はちらりと蓮を見ただけで、

ふん!と鼻で笑い、足早にそのまま通り過ぎていく。


蓮は必死で声をかけるが、

優里は一言も返さず、颯爽と出て行ってしまった。


蓮は頭が真っ白になる。


(……ふん、って……ふん!?なんだそれ!?デート妄想で盛り上がってた俺は……!?)


そのとき、背後から社員の声が聞こえた。


「あ、社長、今日デートらしいですよ」


「…………は?」


……ズガァァン!


蓮は一瞬、脳内が停止した。


(……で、デ、デート……!?俺、今朝プラン練ったのに……!それ、俺抜き……!?)


赤面はさらに加速し、顔は真っ赤。


手は震え、心臓は破裂しそうだ。


妄想と現実が入り混じり、

頭のなかではいろんな「もしも」が駆け巡る。


(くそっ……俺、優里に会うために赤面と失神寸前で頑張ったのに……!)


(そして、あの社員の爆弾発言……俺は……置いてきぼり……!?)


蓮は廊下に立ち尽くし、唖然としたまま、

赤面と妄想が入り乱れる状態で

次の行動を考えあぐねるのだった。



午後。

オシャレなカフェのテラス席で、

優里とあの例の御曹司が向かい合って座っていた。


蒼司は落ち着いた笑顔でメニューを閉じ、

優里に声をかける。


「ここの豆は、仕入れルートが特別なんだ。契約相手の品質保証に関わるから、今後の交渉の参考になると思う」


「へぇ、そんなところまで調べてるんですね」


「仕事柄ね。…あ、君にはカプチーノが似合うと思う」


優里は少し笑って「ありがとうございます」と応じる。


ただのビジネスの打ち合わせ、そして気遣いの一言。


しかしその光景を、数メートル離れた場所から

望遠レンズのごとき目で見ている蓮。


(ちょ、待て待て待てーー!!!カプチーノが似合うって、それもう口説き文句じゃねぇか!?なに自然にスイーツ男子みたいなことしてんだよ!優里も笑ってんじゃねぇーー!!)


頭のなかでは、すでに妄想が暴走する。


ー蓮の妄想ー


蒼司「優里、君は僕の隣にいるべき人だ」

優里「えっ…」

蒼司「このカプチーノのように、甘くてあたたかい関係になりたい」

優里「……そんなこと言われたら、断れないじゃないですか」


ふわりと笑う優里、差し出された蒼司の手を取る


ー妄想終了ー


(やめろぉぉぉぉぉ!!!俺のカプチーノ返せぇぇぇぇ!!!)


妄想に耐えきれず、蓮は立ち上がる。


しかし足元のテーブルクロスを踏んでしまい、

ガタン!とテラスのイスごとひっくり返った。


「だ、大丈夫ですか!?」


店員が駆け寄る。


「い、いや、ちょっとバランス崩しただけですから!」


だがその大声に気づき、

優里と蒼司がちらりと視線を向けてきた。


優里は一瞬「あ、またコイツか」という冷たい視線を投げ、

すぐに蒼司に向き直る。


「すみません、話を戻して…」


完全に空気の外。


(違う!俺はただ…ただ優里を守りたかっただけなんだ!!…いや、守るっていうか…いやでも、あれもう守るとかいうレベルじゃねぇな!?ただの邪魔だよな俺ぇぇぇ!!!)


顔は真っ赤、耳まで熱い。


周囲の客の視線まで集めてしまい、

赤っ恥フルコース。


カフェテラスで優里と蒼司が

落ち着いてビジネスの話を続けている。


それを数メートル先で、

影のように張り付いて見ていた蓮。


(……やっぱダメだ!このままじゃ優里が蒼司に取られる!!いや取られるっていうか、なんかもう……あの落ち着きっぷり、絶対ポイント稼いでるだろ!俺も行くしかねぇぇ!!)


ガタッ!と立ち上がった蓮は、

そのままテラス席に突入。


「優里っ!!」


突然の大声に、周囲の客が一斉に注目する。


優里は、冷えた目で蓮を見上げた。


「……なにしてんの?」


「なにしてんの、じゃねぇよ!そいつとカプチーノなんか飲んで!俺だって、俺だって優里と飲みたかったんだよ!!」


テラス全体がざわつく。


蒼司は苦笑しながら「落ち着いて」と声をかけるが、

蓮は耳に入らない。


「そいつの“君に似合う”とか、聞きたくなかった!俺だって言いたかった!……優里には、ブラックコーヒーが似合うって!!」


……シーン。


数秒の静寂のあと、

隣の席のカップルがクスクス笑い出す。


「ブラックって…笑」

「ダサすぎ」


一気に赤っ恥。


蓮の顔は真っ赤。


「ち、違う!いや今のは、比喩で!大人っぽいって意味で!深みがあるって意味で!!」


「……邪魔」


優里がさらりと一言。



……グサァァァッ!


その言葉に、蓮のHPはゼロ。


フラフラとその場にしゃがみ込み、

テラスの床に正座する。


「俺、またやらかした……また周り見えなくなって……バカだなぁ」



蒼司は困ったように笑い、

店員に「水を」と頼んでくれる。


優里はもう蓮を見ず、

再び資料に目を落としている。


蓮は水を受け取りながら、自分の胸にぽつりと呟く。


「……俺って、ほんと子どもだな。優里は仕事してんのに、俺だけ勝手に浮かれて……。」

「……次は、ちゃんと大人になって向き合わねぇと」



カフェのテラスから引き下がり、

肩を落として帰ろうとする蓮。


(……もう二度と邪魔しねぇ。俺は俺で、ちゃんと大人の男になるんだ。今度こそ……優里の邪魔なんか……しない!)


そう心に誓った、その瞬間、蒼司の落ち着いた声が耳に届いた。


「今度の出張予定、大丈夫そう?」


「はい。資料さえ整えば問題ないです」


優里の澄んだ声。


蓮はピタリと足を止める。


(しゅ、出張!?)


クルリと振り返り、

気づけばカフェの植木鉢の影にしゃがみ込んでいた。


(ま、待て待て!出張って、まさか二人で……!?飛行機並んで座って……ラウンジで優雅にシャンパン飲んで……チェックインは同じホテル!?いやまさか同じ部屋!?)


「うわぁぁぁぁぁぁ!!」


ー妄想開始ー


脳内スクリーンに浮かぶ妄想映像。


妄想①:飛行機編


優里の隣で、蒼司がさりげなくブランケットをかけてやる。

「寒くない?」

「ありがとう」

(ちょ、ちょっと待てぇぇ!!ブランケットは俺の役目だろ!?)


妄想②:ホテル編


チェックインカウンターで、受付嬢が微笑む。

「ツインでご予約いただいておりますが……あいにく満室で、ダブルルームしか」

「問題ないですよ」さらりと答える蒼司。

「ちょっ……!?」と赤面する優里。

(だぁぁぁぁ!アウトぉぉぉ!!)


妄想③:夜編


ベッドサイドランプの下、蒼司がグラスを片手に近づく。

「君とこうして出張できて嬉しいよ」

優里が少し頬を赤らめ……

(いやだぁぁぁぁぁぁ!!!そんな甘い出張いらねぇぇぇぇ!!)


ー現実ー


「……蓮さん?」


気づけば後ろに社員数名。

全員が蓮の背中を見下ろしていた。


植木鉢の影で頭を抱え、

ブツブツ言いながら赤面している御曹司。


「また妄想入ってる……」

「懲りてないですね」

「いや俺は!俺はただの観察だから!調査だから!企業スパイ的な!」


「企業スパイが顔真っ赤にして床にのたうち回ります?」


……グサァァッ!


蓮は再び真っ赤になり、植木鉢の影から崩れ落ちた。


蓮は優里と蒼司が並んで出張に行く姿を、

頭のなかで鮮明に妄想してしまう。


(同じホテル、隣の部屋…いや、もしかして…)


気づけば、それを小声でつぶやいてしまっていた。


「……ダブルルームとか……うわあああ!」


その声がしっかり優里と社員たちに聞こえてしまい、

場が一瞬静まり返る。


優里は額に手を当てて深いため息。


「……蓮。出張はね、二人きりで行くの。現実でも妄想でも、ややこしいこと言わないで」


その一言に、蓮は顔を真っ赤にし、

嫉妬と混乱で頭のなかはさらにカオス。


(やっぱり二人きり……飛行機の中で隣同士、夜は……!)



社員たちは冷や汗をかきつつ、慣れた様子で蓮の腕をつかみ、

ずるずると引きずって会社へ強制送還。


「はい!お時間でーす!」

「お客様、そろそろお帰りの時間です」

「はいはい、こちらへ」



「お、おい!なんだよお時間って!」

「俺はアイドルの握手会に来たファンじゃないぞ!」

「っていうかそもそも優里はアイドルじゃないだろ!」

「アイドルみたいな可愛い顔してるけど!」



「はいはい。退場です」


蓮は抵抗しながらも運ばれ、

最後まで「二人きりはダメだぁぁぁぁ!」と叫び続ける。


裏アカに上げられた「#御曹司また暴走」の動画。


エレベーター前で社員にズルズル引きずられる

蓮の姿がシュールなBGM付きで拡散されていた。


「おっ!社長がいいね!してくれたぞ!」

「まじ?あのアカウント優里さんでしょ?」

「間違いない!あのアカウント、社内で有名だし」


一気に社員のテンションが沸騰。

その一方で、蓮は耳まで真っ赤にして叫んだ。


「はぁ!?いいね!? お、俺、優里のSNSなんて知らねぇんだけどぉぉぉーー!!!」


バタバタ暴れて椅子から転げ落ち、

さらに笑いのネタが増えてしまう。


〈カフェ〉


同じ動画を優里も見ていた。

スマホの画面に映る蓮の必死な姿に、つい口元が緩む。


「……ほんと、子どもみたい」


ポンっと画面に「いいね!」を押す。


その瞬間、目の前の蒼司が気づいたように彼女を見た。


「君が……仕事の場で微笑むの、初めて見たな」


優里は少し照れ隠しにカップを持ち上げた。


「そ、そうですか? ただの……バカ騒ぎを見ただけですよ?」


蒼司はにこやかに紅茶を啜る。






会社に引き戻された蓮はデスクにうなだれていた。


「俺は、優里じゃなきゃ、ダメなんだよ..」



蓮は「御曹司」として生まれ育ったがゆえに、

若い頃からモテ続けてきた。


金も地位も肩書きも、周囲からの好意も、

欲しいものはだいたい手に入った。


そのため、恋愛もまた「勝手に寄ってくるもの」だった。


だからこそ、遊びもしたし、

付き合いも数えきれないほどあった。


だが、どれだけの相手と関係を持っても、

結局はどれも長続きしない。


その場限りの楽しさや刺激はあったが、

本気で心を揺さぶられることはなかった。


そんな蓮が初めて「この人じゃなきゃダメだ」と

思った相手が優里だった。


出会ってからの彼は、むしろ不器用なほど一途で、

周囲から「遊び人が恋愛初心者に戻った」と笑われる始末。


つまり蓮の一途さは、

散々遊んできたがゆえに辿り着いた

“たった一人” という強烈な確信からきている。



一方の優里は、容姿も能力も性格も突出しており、

常に人に囲まれてきた。

学生時代から告白の数は数えきれず、

社会に出ても、近づいてくるのは有力者やエリートばかり。


最初の頃は戸惑いもあったが、

あまりにも多くの人から好意を寄せられるうちに、

「恋愛」そのものに新鮮味を感じなくなってしまった。


告白されることも、褒められることも、

彼女にとってはもはや日常。


「どうせまた表面的な気持ちなんでしょ」

「本当に私自身を見てる人なんていない」


そうやって恋愛を突き放すうちに、

次第に興味を失っていった。


優里にとって恋愛は、

努力して得るものでも特別なものでもなく、

「勝手に与えられて、勝手に消費されるもの」。


だからこそ、彼女は冷静で、心を揺らさない。

本気で誰かを好きになったことがない。


蓮:散々遊んだ末に「唯一無二の一人」に出会ったからこそ一途。


優里:散々モテたせいで「恋愛に価値を見いだせず」無関心。


まるで反対の立場に見えるが、

根本には共通するものがある。

それは「過去の経験が多すぎたせいで、逆に本物を求めてしまう」ということ。


蓮は優里を「本物の恋」と信じて追いかけ、

優里は「本物の愛」をまだ知らないからこそ心を閉ざす。



蒼司とのカフェでの会議が終わったあと、

蓮が息を切らせながら優里を追いかけてくる。


「優里!ちょっと待ってくれ!」


(肩で息をしながら、必死の形相)


「俺、ずっと言いたかったんだ……。俺は……遊びで誰かと一緒にいるのはもううんざりなんだ。優里といる時間だけが、本物なんだよ!」


「……本物、ね」


(腕を組んで、冷ややかに蓮を見つめる)


「そういう言葉、何度も聞いてきた。“君は特別だ” “本気だ” “一生大事にする”って。でも結局みんな、勝手に盛り上がって、勝手に冷めていくだけ」


「俺は違う! 俺は、絶対に優里から離れない!」


(必死に声を張り上げる)


「他の誰でもなく、優里だからいいんだ。優里じゃなきゃ意味がない!」


(小さく息を吐いて、視線を逸らす)


「……そうやって熱くなれるのはいいけどね。正直、恋愛なんて面倒なだけよ」


(淡々と突き放す口調)


「私は仕事があれば十分。あなたの熱に付き合ってる暇はないの」


「……っ!」


(優里の言葉に胸を刺されて、声が詰まる。それでも食い下がるように一歩近づく)


「じゃあ、俺が証明してやる!恋愛が面倒なんかじゃないって……。優里にとっても必要なものだって……!」


優里は無言で蓮を見つめ、ふん、と鼻で笑って歩き去る。


一人残された蓮は、赤面しながらも拳を握りしめる。


(絶対に、絶対に振り向かせてやる……!)


「ちょっと待てよ!置いていくなって!」


「置いていったところで追いかけてくるでしょ」


「お!それはちょっと心開いてきた証拠ですか?」


「しつこいナンパにあってる気分です」


「な、ナンパぁ!? 優里……俺が本気を出せば、世界中の女がひれ伏すんだぞ?」


「勝手にやって。私は巻き込まないで」


「俺が笑えば、太陽だって嫉妬する。だから優里、見とけよ?」


「……恥ずかしくないの?人前でそんなこと言って」


「俺と出会えた時点で、優里の人生は幸運だ」


「むしろ不運の始まりな気がする」


「俺と手をつなげば、誰だって恋に落ちる!」


「はいはい。で、手をつないだ数だけ浮気したんでしょ?」


「優里、俺の目を見ろ。ほら、吸い込まれるだろ?永遠に」


「……目じゃなくて脳が空っぽに見えるけど」


「俺は選ばれた男だ!神にだって愛されてる!」


「じゃあ、私に構わず天界に帰って」


「優里が俺に惚れるのは運命なんだよ!」


「それ、誰にでも言ってるんでしょ?」


蓮の自己肯定感の高さとナルシストな台詞は、

優里の冷徹な現実主義と過去の行動へのツッコミによって、

全て無力化されるのだった。




そして、社内の社員たちはコーヒーを淹れながら、

二人の会話を『ドラマの最新話』を見ているかのように楽しんでいる。


優里が「目じゃなくて脳が空っぽに見えるけど」と

吐き捨てた瞬間、

社員の一人がコーヒーを噴き出しそうになり、

手で口を覆ってかなり大きく肩を震わせる。


「あらやだ、優里さん、今日もキレがあるわねぇ!」

「それにしても蓮様は…自己肯定感だけは上場確定よね。」




社員たちはくすくすと笑い、

そのまま無言で次の作業に戻っていくのでした。



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