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御曹司なのに不採用!? ~冷徹女社長と始めるゼロからの恋と成長録~  作者: 優里


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夜這いの真実






蓮は、閉ざされた会議室のドアに額を押し付け、

荒い息を繰り返しながらも、

「優里との劇的な和解シーン」を必死に妄想していた。


ドアが開けば、全てが誤解で片付き、

二人の愛はより深まるはずだと信じていた。

しかし、現実は無情だった。


「蓮さん……酔いすぎてて、優里さんに何したか覚えてないでしょ?」


声の主は、隣で腕組みしている社員。


蓮はパッと顔を上げると、

すでに周囲には数人の社員が集まっていた。


「な、なにって……同じ部屋で寝たくらいだろ!」


必死に言い訳する蓮。


「寝たというより、寝かせてもらった側ですからね!」


その一言で、蓮の頬が真っ赤に染まる。


(…胸が痛い。刺さる…刺さるぞこれは!)


「刺さって当然ですよ。優里さんに何したと思ってるんですか」


社員の目が真剣すぎて、蓮は目を逸らす。


「覚えていないと思って、動画とっておきました!」


頭のなかで、

昨日の妄想がスローモーションのように再生される。



(いやいやいやいや、これは……赤っ恥すぎる……俺、御曹司なのに何やってんだ……)


額から汗が流れ、膝がガクガク震える。


社員たちの冷静な視線が、

蓮の妄想と現実のギャップを痛烈に突き刺す。


頭のなかで「ここで助けてくれるのは優里しかいない!」と妄想するも、

現実は、優里はドアの向こうで冷静に仕事中。


「動画……ま、まさか……」


蓮は手を伸ばし、必死で隠そうとするが、

周囲の社員は手を止めずスマホを掲げる。


(もうだめだ……この赤っ恥、どう収拾つけるんだ……!?)


妄想の中の劇的な和解シーンは、

現実の前では泡のように崩れ去る。


御曹司・星野蓮、26歳。


名誉もプライドも、一気に崩壊の危機に瀕していた。



蓮の妄想とは裏腹に、現実は無情に過酷だった。



あの日、ホテルに呼び出された蓮。


優里が他の御曹司と談笑している様子を見て、

心臓が張り裂けそうになり、ワインを一気にがぶ飲みした。


普段なら絶対に失敗しない酒量。


だが、優里の存在がすべての理性を吹き飛ばす。


優里に出会う前、

蓮は酒で失敗したことなどなかった。


しかし、優里がお酒飲めないため、

優里に合わせるように優里の前では飲まない。


その「縛り」に慣れすぎていたために、

優里の監視がない場所で歯止めが利かなくなっていた。


会場のパーティーは終盤に差し掛かり、

社員たちは一様に安堵の声を漏らしている。


「みんな遅くまでごめんね」

「とんでもないです。契約うまくいきそうで安心ですね」


その光景を横目に、

蓮は再びワインを手に取り、フラフラとグラスを傾ける。


(や、やべぇ……目が回る……でも……優里のそばに……)


酒に酔った頭のなかでは、

優里と二人だけの空間が繰り広げられる妄想が止まらない。


「蓮さん、大丈夫ですか?」


社員たちの声が現実に引き戻す。


だが蓮の意識は優里に集中していた。


(近くに……あの匂い……あったかい……)


フラフラと歩み寄った蓮は、ついに優里に抱きつく。


「……は?」


優里の冷たい声が刺さる。

しかし蓮は酒と妄想に支配され、意に介さない。


「んふぅ~、いい匂い、あったかい」


その瞬間、蓮の胃が限界を迎えた。


「うぅ、やっべ、気持ち悪い……」


「うぇーーーーー!!」


蓮の吐しゃ物は、もろに優里の服を直撃する。


「あんたねぇ!!」


怒りと驚きで優里の声が会場に響く。


「優里さん、大丈夫ですか!?」

「蓮さんっ!」


社員たちが慌てふためくなか、

蓮は完全に制御不能となり、床に倒れ込む。


頭の中で繰り広げられていた「妄想デート」は、

跡形もなく崩れ去った。


御曹司・星野蓮、26歳。


泥酔と妄想の末に、

まさかの“史上最高の赤っ恥”を更新することとなったのだった。




蓮が優里の服に嘔吐して意識を失った瞬間、

パーティー会場の空気は凍り付いた。


社員たちが優里の汚れた服を心配するなか、

冷徹な現実が蓮の妄想とはかけ離れた場所で動き始めた。


泥酔して倒れ込んだ蓮を前に、

優里が会話していた別の御曹司が、

静かに優里に近寄った。


「君に必要みたいだから」


彼はホテルのカードキーを差し出した。


優里の汚れた服を見て、

部屋の手配が必要だと即座に判断したのだ。


「すみません……」


優里は屈辱に耐えるように、深く頭を下げた。


御曹司は倒れている蓮を一瞥し、冷たい提案をした。


「俺が部屋まで運ぶよ」


意識のない蓮の体は、別の御曹司に運ばれていた。


しかし、蓮の酔いが抜けない脳は、

現実逃避の妄想を続けていた。


(ん? もしかして、俺をバスローブにさせたのって、優里で、優里俺の体みて興奮してたり……。)


(服を脱がせる優里……蓮くん、ととろんとした顔する優里……ぎゃぁー!!かわいい!!)


頭のなかで展開される妄想に、

蓮は自然と顔を赤くしてバタつく。


蓮が運ばれたホテルの部屋。

御曹司は蓮をベッドに下ろした。


御曹司は優里に優雅に指示した。


「俺がこいつなんとかしておくから先にお風呂入ってきな」


優里は安堵と疲労の表情を見せた。


「ありがとうございます」


優里がバスルームへ向かうと、

御曹司は蓮の汚れたスーツを脱がせ、

用意されていたバスローブに着替えさせた。


(優里じゃねぇのかよー!)


蓮の妄想のなかのヒロインは、ただの介助者だった。


しばらくして、優里がバスローブ姿で戻ってきた。


髪はタオルで拭いている。


御曹司は、次の役割を申し出た。


「俺がこいつ風呂につけておくから。」


優里は心から感謝を込めた声で言った。


「何から何まですみません」


「とんでもない」


優里にとって、この御曹司は、

自分の潔癖な世界を蓮の穢れから守ってくれた救世主だった。


御曹司は、泥酔して意識のない蓮をバスルームへ引きずり込んだ。


そして、優里の前では見せなかった、

冷たい目で蓮を見下ろした。


(この泥酔野郎のせいで、優里と二人きりの時間が無駄になった。)


御曹司は、恨み節も込めて、

泥酔中の蓮を真水のシャワーでこれでもかと冷やし続けた。


(こいつ、俺の事殺そうとしたな!)


意識の片隅で、蓮の体が強烈な寒気を感じていた。


シャワーで強引にアルコールを冷やされた蓮を、

御曹司は冷たくベッドに寝かせた。


御曹司は、優里の疲労困憊した顔を見て、

最後に一押しをする。


「泥酔野郎と同じ部屋で大丈夫?」


優里は、蓮の汚い醜態を思い出しながら、

冷徹な瞳で答えた。


「多分大丈夫ですよ。なんかあったら海に沈めるだけですから」


御曹司は満足げに笑い、部屋を後にした。


意識の回復し始めた蓮の脳内には、

優里の冷たい声と、別の御曹司の優雅な献身が、

重い現実として刻みつけられた。


(ちょっと待てよ、俺の泥酔って、あの御曹司と優里の関係をめちゃくちゃアシストしてるだけじゃねぇかー!!!)


蓮の「脈アリ」は妄想で、現実はライバルへのアシスト。


蓮の恋の株価は、ストップ安どころか、

上場廃止寸前まで叩き落とされたのだった。


蓮は、ライバル御曹司の献身という

残酷な真実に打ちのめされながらも、

半覚醒状態でベッドに横たわっていた。


体は真水のシャワーで冷やされていたが、

脳内だけは嫉妬の炎で煮えくり返っていた。


優里とあの御曹司が、

この部屋で二人きりになっているという事実が、

蓮の最大の恐怖を呼び覚ました。


(くそっ、くそっ……! アイツが部屋を出て行ったのは、優里に恩を売って、優位に立ったからだろ!? いや、待てよ。優里が「大丈夫」と言ったのは、その後の出来事をコントロールできる自信があったからか……?)


蓮の妄想が、最悪の展開を創造し始める。


(も、もしかして……俺が寝ている横で……。)


蓮の意識の片隅で、目を覚ましたばかりの優里と、

部屋に戻ってきた御曹司の妄想劇が再生された。


優里がバスローブ姿でベッドサイドに座っている。

そこへ、「忘れ物をした」とかなんとか言って、

御曹司が静かに部屋に戻ってくる。


御曹司は、優里の清らかな横顔を見て、

誘惑的な笑みを浮かべた。



「ねぇ、俺じゃダメ?」


優曹司の声は甘く、囁くようだった。


「えっ?」


優里は微かに抵抗を示す。


御曹司は、蓮という泥酔した敗者を引き合いに出した。


「こんな泥酔男より、君を幸せにしてあげられる自信あるよ?」


優里の心が揺れるのが、

蓮の妄想には手に取るようにわかる。


「でも……。」


「物は試しで、試してみない?」


御曹司は、優里の耳元に近づく。

その声は熱を帯びていた。


「相性」


そして、御曹司は、

優里の白い首元にかかるバスローブの紐に、

そっと手を伸ばす。


紐が解ける……。


その妄想の映像がクライマックスに達した瞬間、

嫉妬と絶望に支配された蓮の心臓が爆発寸前になった。


(いやだぁーーー!!!)


蓮の声にならない心の叫びが、

静まり返った部屋に響き渡った。


最愛の優里が、自分以外の男に、自分の目の前で奪われる。

しかも、その全ての原因は、自分が晒した醜態にある。


額から汗が滲み、心臓は破裂しそうに脈打つ。


(いやいやいやいや!これは……これは……!)


妄想なのに、なぜか身体が熱くなり、顔は真っ赤。


(優里の……優里の体が……いや、やめろ俺の脳内暴走!)



頭のなかでは、

優里の悲鳴や御曹司の甘い声が入り乱れ、

理性は完全に崩壊していた。


(うぅ……こんな妄想、耐えられるわけがない!)


「いやぁぁぁぁ!!俺の優里を……俺の優里を……!」


蓮の脳内で妄想と現実が交錯し、

赤面と動悸の嵐は止むことを知らない。


蓮は動画の再生を終えた……はずだった。


しかし、視界は半分以上が霞んでおり、

肝心の内容はほとんど頭に入っていない。


「蓮さん?おーい、蓮さん?」


社員たちの声が何度も飛ぶ。


だが蓮は、動画のなかの光景と

自分の妄想に完全に支配されていた。


(うわ……優里が、俺の横で、あの御曹司と……いやいやいや、違う!違うんだ!)


頭のなかで妄想は止まらず、心臓は破裂寸前。

汗が額を伝い、手のひらは冷たくなる。


現実では、優里は動画の内容を見て冷静に資料を整理しているだけ。


完璧に平然としているその姿。


蓮はそれを見た瞬間、脳内で小さな爆弾が炸裂した。


(……え、ちょ、待てよ!?今の俺の妄想、完全に現実と乖離してる!)


(優里……めちゃくちゃ落ち着いてる!?俺は……俺は一体なにを……!)


蓮の視界の端で、優里は眉一つ動かさず、

ただ淡々とタブレットを操作している。


その余裕に、蓮の妄想はますます過激化。


頭のなかでは、妄想の優里と現実の優里が同時に存在し、

どちらが本物かわからなくなる。


(いや、待て……落ち着け……現実は現実だ……でも……でも……俺の優里が……あの御曹司と……いやいやいやいや!!)


社員たちの声が再び響く。


「蓮さん、大丈夫ですか?」


だが蓮は手を耳に押し当て、頭を抱え、

もはや現実の声も届かない。



赤面、動悸、焦燥。


蓮の体はそこにあるのに、

心と頭は完全に別世界へ飛んでしまっていた。


(あぁ……このギャップ……耐えられん……!優里は全然平然としてるのに、俺だけ……俺だけが……!)


そして、蓮は完全に妄想と現実の境界線を見失い、

身も心もぐちゃぐちゃのパニック状態に陥った。


蓮は頭を抱え、息を荒げながら地面に座り込んだまま、

視界の端で平然と作業する優里を見つめていた。


しかし現実の優里と妄想の優里が入り混じり、

頭のなかでカオス状態が続く。


社員たちがざわつく。


「蓮さん……大丈夫ですか?」


「も、もう、聞くな……っ!」


赤面と動悸で言葉はうまく出ない。


しかし頭のなかでは妄想が止まらない。


(もし今、俺が優里に抱きついたら……いやいやいや、だめだ、社員に見られてる!でも、あの横顔……あぁぁぁ、かわいい……!)



だが妄想はさらに暴走する。


(もし優里が微笑みながらこっちに近づいてきたら……いや、いやいや!今は会議室だ!俺の頭は……脳内が……!)



床に膝をつき、顔は真っ赤、

汗でシャツは肌に張り付いている。


「……あぁ、優里……こっちに来る……いや、違う、俺が抱きしめる……いや、だめだ、周りに人が……」


そんな妄想のピークに、

現実の世界は静かに容赦なく蓮を叩きつける。


「……邪魔」


一言だった。


たった一言、冷たく、無表情に。


蓮はその声にハッと目を見開く。


(……え、今……聞いた……?いや、妄想じゃない……?)


全身の血が一気に逆流するように顔が熱くなる。


膝をついたまま、声も出せず、体が硬直。


赤面はさらに増し、汗が滝のように流れる。


周囲の社員の視線も、まるで蓮をさらに追い詰めるように痛い。


(……邪魔、って……俺だけ舞い上がって……妄想して……完全に自爆……!!)


蓮は心のなかで叫ぶ。


(いやぁぁぁぁっ!!!これ、もう失神寸前じゃん!!!)


妄想と現実のギャップ、

赤面、羞恥、社員の視線……

全てが蓮を極限まで追い詰めていた。



(俺、御曹司……なのに……こんな赤面して……どうすんだよ……!!)


その瞬間、蓮の頭のなかでは再び妄想がフラッシュバック。


妄想の優里は微笑みながら手を差し伸べ、

現実の優里は冷たく「邪魔」と言い放つ……


二つの世界が同時に襲い掛かり、

蓮は思わず意識を飛ばしそうになるのだった。



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