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御曹司なのに不採用!? ~冷徹女社長と始めるゼロからの恋と成長録~  作者: 優里


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御曹司の空回り再び






蓮が車内で自己嫌悪に沈み、

独り言をブツブツつぶやいていた。


隣で眠る優里に、

もう傷つけない。

優里にふさわしい男になると、

自己陶酔から脱却する決意をしては、

自己嫌悪に沈む繰り返し。


そして、蓮の予想を裏切り、

隣で眠っていたはずの優里に

まさかの全部聞かれてしまっていたのだ。



ほんの少し前。

蓮は隣の優里が目を閉じているのを確認して、

安堵しつつも反省モードでつぶやいてしまう。


「ほんと……俺のほうが遊び人だったよな……優里に更生とか言って……バカか俺……」


額に手を当て、ひとり反省会。


優里はシートにもたれかかったまま、薄目を開ける。


(……あ、聞かれたら死ぬやつだこれ)


蓮は思うが、優里のまつ毛は動かず、

寝息だけが返ってくる。



……ところが。

ほんのわずかに、口角が上がっていた。

寝たふりのまま、ニヤリと。


車内の灯りに照らされて、

その微笑は「全部聞いてるよ」と言っているようで……。


蓮は気づかず、

勝手に「やっぱ寝てるよな……セーフ……!」と心のなかでガッツポーズ。



そして現在、

がっつり優里と目が合った。



「いやぁぁああああ!!!!」



そこで記憶は途絶えた。





朝、オフィス。


蓮は「昨日のことは夢だったんだ」と自分に言い聞かせつつ、

パソコンに向かう。


優里がコーヒーを持って隣に立つ。


「……蓮くん」


「えっ!? な、なに?」


「昨日の独白……」


心臓が止まる蓮。


周囲の社員たちが「え?なに?」と視線を送る。


「……聞いてたよ」


しれっと言い放ち、

何事もなかったかのようにデスクへ戻っていく優里。


残された蓮の脳内は大爆発。


(ぎゃあああああ!!)


蓮は心のなかで叫び、机に突っ伏すしかなかった。


優里がデスクへ戻ろうとした瞬間、

くるりと振り返る。


「……でも、どんな優里でも受け止めるって言ってたよね?」


「!?!?!?!?」


椅子から転げ落ちそうになり、周囲の社員がざわめく。


「え?なに?プロポーズ?」


「社長、社長告白されてるの?」


社員たちからは小声が飛び交い、

蓮は顔を真っ赤にして両手をブンブン。


「ち、ちがっ……!あれは、えっと、その……妄想というか独り言というか!」


優里は涼しい顔でさらに追撃。


「じゃあ、遊び人の私も受け止めてくれるんだ?」


「やめてぇぇぇぇ!!!」


オフィスに響き渡る蓮の悲鳴。


完全に公開処刑状態。




昼下がり。


「……まったく、なんだよ、この間まであんなにツンツンしてたのに、俺を好きにもてあそんで」


「楽しそうだから、いいんだけど…」


(沈んで暗い顔してる優里を眺めるより、全然マシだろう)


ブツブツ独り言を呟く蓮に社員が近づく。


「蓮さん、全部聴こえてます」


「いやぁぁああ!!!」


蓮は顔面蒼白。


「ほんと社長にぞっこんですよね。以前はあんなに”俺様”だったのに、どうしたんですか?」


「……俺が入ってきたときって、どんなイメージだった?」


「クズ。」


「ドストレートやめろ!」


「超絶、猛烈、忙しい優里さんに手を焼かせる超絶ドクズです」


「ショック…」


「まぁでも、いまではちゃんと仕事してくれてますし、優里さんも頼りにしてくれてるんじゃないですか?」


蓮は、優里が業務をこなす姿を、横目で盗み見ていた。


優里はただ真面目な社員と、普通の会話をしているだけだ。


(俺を頼ったことなんて、ないくせに…)


蓮の脳内では、優里が冷徹な社長の仮面の下で、

夜の顔を使い分けているという妄想が、止めどなく暴走を始めた。


付き合えない=真剣な関係は面倒。

一夜限りの関係『ワンナイト』専門だから、「彼氏」は作らない。


「みんな同じじゃん」=遊び方を熟知したプロの遊び人同士。

俺の真剣なフリなど全てお見通しだ、という意味。


蓮は、優里の一切の隙のない仕事ぶりさえも、

「夜の顔」を隠すための完璧な擬態だと確信した。


(まさか、俺が惚れた優里は、俺の想像を遥かに超える、夜の魔性だったとは! でも……だからこそ、俺が真実の愛を教えなきゃいけないんだ!)


蓮の心は、「遊び人優里の更生」という歪んだ正義感と、

優里が自分以外の男と遊んでいた可能性への嫉妬で渦巻いていた。


優里は、冷静に書類をめくり、蓮をちらりとも見ない。

それなのに、社員が話しかけると優しそうな笑顔で応じる。


(あああ!優里があんなに笑顔で男社員と話してる!あれは……あれは絶対、遊び人モードの優里だ!)


優里<妄想ver.>「ねぇ、このあと飲みに行かない?会社の近くにいいバーあるんだぁ」

男社員:「えっ、いいんですか社長!?」

優里:「ふふ、内緒だよ?」とウィンク。


(ぎゃあああ!やっぱり遊び人じゃんか!!)


(そんなぁぁぁぁ!!あの優里が夜な夜な遊んでたなんて!俺は……俺はどうすれば……!更生させるしかない!遊び人優里を俺が正すんだ!!)




「社長、こちらの資料でよろしいですか?」

「うん、ありがとう。助かる」


ただそれだけ。普通のやりとり。


蓮は机に突っ伏しそうになりながら、心のなかで叫ぶ。


(なんで俺の妄想だけ修羅場なんだよ!!)


(だぁぁぁぁ!!俺の優里が……夜な夜な男どもをはべらせてシャンパン飲んでるだと!?いやいや、待てよ。あいつ酒飲めないし..。)


(あ、でも!もし遊び人だったら「ノンアルカクテルで誤魔化す系」かもしれんぞ!?)


(やべぇ、想像したら妙にリアルになってきた!)


頭を抱えてデスクに突っ伏す蓮。


(ぐぅぅ……苦しい!遊び人優里を俺が更生させるしか!)



蓮は優里が真面目に業務連絡をする姿を盗み見ながら、

内心で「夜の魔性」である優里をどう「真実の愛」で救うかという、

自己満足的な使命感に悶え苦しんでいた。


(くそっ!あの冷徹な顔の下で、どれだけ夜の虚しさを抱えているんだ!俺が、俺だけが優里を更生させ、心の平穏を与えなきゃいけないんだ!)


しかし、どれだけ妄想を膨らませても、

蓮の脳内には冷たい現実が割り込んでくる。


(いや、待て。よく考えろ。優里は酒もほとんど飲まない。夜遊び?そんな時間があったら会社の決算資料を見ている女だぞ。超絶真面目で純粋で、その純粋さゆえに過去に傷ついたんじゃないのか?遊び人なわけ、ないだろ!)


蓮は、「優里=遊び人」という非現実的な妄想と、

「優里=傷ついた清純な社長」という現実の真実の間を行き来し、

苦悶の表情を浮かべたまま、

目の前の優里に意識が集中できない状態になっていた。


「……聞いてる?」


……無反応。


優里は首をかしげながら、

もう一度声をかける。


「…ねぇ」


それでも気づかない蓮。


優里は仕方なく、

トン、と肩を軽く叩いた。


「うわぁっ!?ご、ごめんっ!!」


ようやく飛び上がるように反応する蓮。


「うぇぇええええ!!! 桜庭優里!?」


優里は冷静に首をかしげる。


「……そうだけど」


「ち、違うんだ!仕事中にボーっとしてたとかそういうわけじゃ…!」


蓮は慌てて弁明しようとするが、

社員たちがフォローにはいる。


「ボーっとっていうよりかは、妄想ですよ」


「妄想?」


「妄想の世界に行ってるんです」


「さっきまで、優里さんの名字の”桜庭”が”星野”に変わる妄想でもしてたんじゃないですか~?」


(してねーよ、失礼な!)


(優里も優里で、「こいつまたか」みたいな目すんなよ……めっちゃくぁあいい<かわいい>から!)



「で、資料のことなんだけど」


(や、やべっ!?俺、提出ミスった!?見積もりの桁、間違えたとか!?いや、それ会社的に大事件だろ!?)


慌てて言葉をかぶせる蓮。


「えっ!?ご、ごめん!俺、どっか間違ってました!?修正すぐします!!」


優里は一瞬きょとんとしたあと、ふっと微笑む。


「いや、そうじゃなくて……。わかりやすくまとめてくれて助かった。ありがと」


(…………え。)


「………………え!?!?!?」


「ちょっと待て、今、なんつった!?『助かった、ありがと』!?」


(これは……これはもしかして脈アリ発言じゃないですかあああああ!?!?)


(やばいやばいやばい!冷静になれ俺!でも今のは絶対何かある!え、もしかして優里、俺のこと……!?)


蓮の頭のなかで、

花吹雪が舞い、結婚式の鐘が鳴り響く。


(やべぇ!今日プロポーズしてもワンチャンいけるんじゃね!?)


現実の蓮、顔真っ赤で固まってる。


「ほらぁ~。せっかく忙しい優里さんが話しかけてくれてるのに、蓮さんすぐこれ(妄想)だから…」


優里は不思議そうに、

首をかしげながらデスクに戻っていった。


(……? まぁ、いっか)



蓮は優里の「脈アリサイン《まったくそんなことない》」に応えるべく、

完璧なアプローチを仕掛けることを決意した。


彼の目標は、「仕事もできる、一途で優しい男」であることを、

優里に視覚的に証明することだった。


「優里、この件なんだけど、俺が代わりにやっておくよ」


優里が難しそうな顔で財務資料を広げているのを見た蓮は、

絶好のチャンスだと確信し、

優里のデスクの前に颯爽と登場した。


優里の負担を減らし、

「俺に頼っていい」というメッセージを伝えるつもりだった。


優里は、突然現れた蓮の自信満々の笑顔に、

怪訝そうな顔をした。


「この件、とは?」


「この、融資の件だよ。複雑そうだろ?俺、こういう金銭絡みは得意なんだ。御曹司の血が騒ぐっていうか?優里は社長業に専念してていい。俺が完璧に片付けておくから」


蓮は、自分の「御曹司の才能」と

「優しさ」をアピールしたつもりだった。


そして、優里が「ありがとう、蓮」と

昨日よりも少し甘い声で感謝してくれるのを期待した。


しかし、優里の表情はみるみるうちに冷たく、

不機嫌になっていった。



「その資料は、融資じゃなくて、特別ボーナスの試算です。そして、『御曹司の血』で騒いで『完璧に片付ける』つもりなら、中身をよく見てから言ってください」


優里は、蓮の思い込みと中身も見ない軽薄な態度に、

心底うんざりした顔をしていた。


「余計なことはしないでください。あなたの好意は分かりましたけど、仕事は自分でやります」


蓮の「仕事もできる男」アピールは、

優里の冷たい拒絶と、

「中身を見てない軽薄な男」という最悪の評価で、

完全に失敗に終わった。


「脈アリ」だと思い込み、自信満々で突っ走った結果、

蓮は優里の信頼を、またしても大きく損なうのだった。




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