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御曹司なのに不採用!? ~冷徹女社長と始めるゼロからの恋と成長録~  作者: 優里


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御曹司の接近大作戦




蓮はいつもより早く出社した。


背筋をピンと伸ばし、

心のなかでは既に「優里接近大作戦」の

シナリオが走り始めていた。


(よし……今日は絶対に自然に声をかける!挨拶だけじゃダメだ、ちょっとした会話を作るんだ……!)


(でも、不自然すぎると避けられる……いや、むしろ避けられるくらいがちょうどいい……いやいやいや!)


会社の廊下で、偶然優里と鉢合わせ。


「おはようございます……!」


蓮、つい大きな声で言ってしまう。


(うわっ、声でかすぎた……!)


優里、少し驚いた顔で振り向くが、

すぐにそっけなく目をそらす。


「……おはようございます」


(くっ……まだよそよそしい……でも、今日こそは……!)


蓮は勇気を振り絞り、

優里の横を歩きながら小さな会話を試みる。


「えっと……同窓会、大変でしたね……?」


(自然に……自然に……!)


優里、少し眉をひそめる。


「……はい」


その一言だけで、蓮の胸はドキドキ。


(あれ?会話、成立した……!……でも短すぎる……!)


会議室の前で書類を持つ優里を見つけ、蓮は小声で


「手伝いますか……?」


(あ、あれ……言い方大丈夫か?さりげなさすぎて変に見えないか……?)


優里、ちらっと蓮を見て、

無言で書類を受け取る。


(よし、触れた……!接触成功……!)


蓮、内心でガッツポーズ。


(でもこれ……普通にやったら絶対怒られるやつだ……!)


その後、廊下で少し立ち止まった蓮。

心のなかでシミュレーションを再起動。


(次は……自然にコーヒー渡す……いや、紙コップで渡すと怪しい……手作り感出す……いや、それだと引かれる……!)


そのとき、後ろから同僚に呼ばれ、

蓮はバランスを崩して書類を落とす。


「あっ、すみません!」


同時に優里が書類を拾って手渡してくれる。


(ま、まさか……!これって……自然な接近……!?いや、偶然!?でも、偶然最高……!)


蓮の頭のなかは、

既に「優里との次の接近作戦」の計画でいっぱい。


しかし現実では、まだぎこちない距離感のまま、

二人はそれぞれの仕事に戻る。


(よし……次は絶対、もう少し会話を続ける……!今日の俺は、昨日より確実に一歩前進したんだ……!)


廊下を歩き去る蓮の背中は、

周囲から見ると完全に挙動不審だが、

本人にとっては

「妄想全開で勝利を確信した戦士」の誇らしい足取りだった。


午後の会議が終わり、蓮はふと窓際で一息つく。


(ふぅ……午前中、優里の横を歩いたあの瞬間……完璧だった……!)


しかし、頭のなかですぐに妄想モードに突入する。


(もしあのとき、書類を渡すときに手が触れてたら……!)


(いやいや、あの距離で手を握られたらどうするんだ……いや、握られたら抱きしめるしかねぇ……!)


(でも、そのまま廊下で……いやいや、公共の場だし!いやでも一瞬なら……いやいや、優里に引かれる……いや、でも見つめ合うだけでも……!)


机に座っている同僚たちの目などお構いなしに、

蓮の頭のなかはもう優里とラブコメのワンシーン状態。


(もし窓際で風が吹いて、優里の髪が……その、顔にかかって……俺は手で……いやいや、手で払う……いやいやいや、今ここでやったら完全にアウトだ……!)


蓮、思わず背筋を伸ばして深呼吸するも、

息が荒くなり、手には知らぬ間にボールペンをぎゅっと握ってしまう。


(俺、何やってんだ……完全に妄想で自爆してる……でも止まらねぇ……!)



そんなとき、同僚が肩を叩く。


「蓮くん、大丈夫?なんか真剣に独り言言ってたよ?」


(ぎゃあああ!!見られた!!)


「い、いや、その……資料のことで……!」


顔は真っ赤。

頭のなかでは優里とのラブコメ妄想が加速するばかり。


(くそ、現実に戻れない……でも止まらねぇ……!)


蓮の妄想も虚しく、

結局優里にひとことも話しかけることができずに、

業務が終わってしまった。


夕暮れの街を歩く蓮。


(はぁ……今日も妄想だけで半日が終わった……)


「……っ!?」


目の前に、夕陽を背に立つ優里の姿が飛び込む。


(え、マジで!?こんなところで!?)


心臓がドクンと跳ね、頭のなかでアラームが鳴る。


蓮、心臓バクバク、足が止まる。


優里は涼しげにスマホを見ていて、

蓮の存在にまだ気づいていない。


(この隙に声かけ……いやいや、声のトーンどうしよう……普通に『お疲れ』って言えばいいのか……いやいや、優里の声聞いたらどうなる俺……!)


蓮は、優里の隣に立つまで、

完璧な騎士の表情を保っていた。


しかし、蓮が優里の目の前にたどり着いた時、

優里はスマホから顔を上げ、蓮を一瞥した。


そして、その顔は昨日の朝と同じ、

冷徹な社長の仮面だった。


「偶然だな!」


「そっちこそ、こんなところで何してるんですか」


(やっべ…見つけて追いかけてきたなんて言ったらストーカー扱いだぞ!? 警察呼ばれて連行コース確定になる…!)


「た、たまたま歩いてたら目の前にいたから」


「…そうですか、私は会社にもどるので、お疲れ様でした」


「えぇ!?今から戻るの!?」


「トラブルみたいで…」


優里の声は、冷たく、感情がない。


その一瞬の視線には、

「なぜ私を追いかけてくる?」という警戒心が混じっていた。


優里には、蓮の「騎士道」も

「過去のトラウマへの理解」も、

全く伝わっていなかった。


「い、いや、こんな時間に一人で…」


「関係ありません」


優里は、眉をひそめ、冷たい視線を蓮に残したまま、

そのまま蓮を横切って、再び歩き始めた。


蓮は、運命の再会という最高の舞台で、

愛の言葉を一言も伝えられないまま、

優里の冷たい背中を見送るしかなかった。



(くそっ、これじゃダメだ! 優里は傷ついているんだ! 俺が安心感を与えなきゃ!)


「優里、危ないから、俺の車で送らせてくれ」


蓮は、優里の腕をそっと掴み、

優しく車道へと誘導しようとするが…。


「はい。そうでしたか。はい。では明日の朝確認します。」


(電話してんじゃねーかぁー!!!)


蓮の挽回のチャンスなどガン無視で、

取引先のトラブル対応に対しての連絡をしていた優里。


蓮の挽回はものの見事に打ち砕かれたのだった。


しかし、そんなとき。


「あれ、蓮?」


背後からかけられた、

甘く、馴れ馴れしい女性の声。


蓮の妄想はガラスが砕けるように粉々に打ち砕かれた。


蓮は、ゆっくりと最悪の予感と共に振り返る。


そこに立っていたのは、

数ヶ月前に派手なパーティーで知り合い、

何度か遊びに付き合わせた女性だった。


体のラインを強調したワンピースに身を包んだ彼女は、

完全に「過去の蓮」を知る女の顔をしていた。


「やっぱり蓮じゃない!こんなとこで何してるの?連絡しても全然出ないから、もう飽きられたかと思った〜」


彼女はそう言いながら、

全く躊躇なく、蓮の腕に自分の腕を絡ませてきた。


蓮の顔は、青を通り越して白くなる。


(うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?)


(「飽きられた」だと!?「遊び」だと!?俺が今、優里のトラウマである「ガッカリ」と「みんな同じ」を払拭するために騎士道を誓った直後に、俺の過去そのものが目の前に現れただと!?)


「ち、ちが……っ、俺はっ、これは……!」


蓮は、優里という本命を目の前にして、

自分の過去の尻拭いをしなければならないという、

人生最大の修羅場に動揺した。


優里は一瞥もくれず、淡々とした口調で言う。


「楽しんで。」


そして、何事もなかったかのように立ち去ろうとする。


(え……えぇぇぇ……優里、何この余裕……!?俺の妄想全部吹き飛んだじゃん……!)


心のなかでパニック。


(どうしよう……目の前で本命がそっけない……!)



優里のその一言は、

「あなたは結局、私にとって『遊び人』カテゴリーから抜け出せなかった」という、

優里の最終結論だった。


優里の「みんな同じじゃん」という絶望的なトラウマは、

蓮の最悪のタイミングでの過去の露出によって、

完全な確信へと変わってしまったのだ。


蓮は、腕に絡みつく女性の手を振り払うことさえ忘れ、

二重の絶望によって、

その場に立ち尽くすことしかできなかった。


蓮はもはや過去の遊び人ではない。


優里のトラウマと真の弱さを知った今、

彼の本命一筋の愛が、絶望的な状況を打破させた。


蓮は、腕に絡みつく女性の手を荒々しく振り払い、

女性の抗議の声を無視して、

優里の背中に向かって叫んだ。


「待て、優里!」


蓮は、優里の前に駆け寄ると、

過去の女がまだその場にいることなど全く気にせず、

優里の安全を最優先した。


「今のは違う!誤解だ!だが、今はそんなことどうでもいい!俺が車で送っていく。こんな時間に、二度と一人で歩かせるわけにはいかない」


蓮の目には、

優里の安全への狂気にも似た一途さだけが宿っていた。


「……結構です」


優里はめんどくさそうに答えた。


「送っていくよ。」


蓮はさりげなく告げる。


優里は少し面倒くさそうに顔をしかめながらも、

素直に車に乗り込む。


(なんだよ、そんな顔してもかわいいじゃん……!)




夜の街道を走る車内。


助手席の優里は相変わらずそっけない態度で、

窓の外ばかり見ている。


一方、運転席の蓮は、現実では冷静を装いながらも、

頭のなかでは妄想が炸裂していた。


(助手席に優里……距離は約40センチ……もし信号待ちで手を伸ばせば……いやいや、そんな勇気あるかっての!)


(でももし優里が「蓮……」なんて小声で呼んできたら……あぁ~キス寸前……!)


胸の鼓動はすでにメーター振り切り。


妄想のなかで甘い展開を繰り返しながら、

現実のハンドルを必死に握りしめていた。


そんな時。


「ねぇ。」


突然、優里が声をかけてきた。


「ん?」


気の抜けた返事をしてしまった蓮。


その瞬間、優里は窓の外を見たまま、

爆弾を投下する。


「私の過去が……遊び人だったら、どうするの?」


キィィィィィィッ!!


蓮は、驚きのあまり反射的に急ブレーキを踏み込んだ。


安全な距離を保っていたはずの車体が、

一瞬で前のめりになる。


「ちょ、危ないでしょ!」


驚いた優里がシートベルトを押さえながら蓮を睨む。


「わ、悪い!」


必死に謝りながらも、

蓮の頭のなかは別の方向へ暴走していた。


(あ、遊び人!? 優里が!? あの清純で、恋愛に奥手で、傷つきやすかった優里が、俺と同じ…… いや、俺以上の遊び人だったとしたら!?)


妄想モード、即・全開。


クラブのフロアで、男に囲まれてウィンクする優里。


バーのカウンターで

「ごちそうさま♪」なんて言って

グラスを傾ける優里。


「あーもう、どの彼氏と会うんだっけ?」

なんてスマホを見ながら笑う優里。


(いやいやいや!!そんな優里なんて!!でももし本当に……!?)


妄想がぐるぐる回転し、

心拍数はエンジンよりも騒がしい。


一方の優里は、そんな蓮の混乱をよそに、

涼しい顔で窓の外を眺める。


「……ただのもしもの話なのに。」


それだけ言って、再び黙り込んだ。


蓮は額に冷や汗を浮かべながらハンドルを握り直す。


(はぁ!?今のタイミングでそんなこと言う!?俺の心臓、もう持たないんですけど!?)


現実では安全運転に戻ったが、

脳内では「遊び人優里VS本命一筋の俺」の

妄想バトルが延々と繰り広げられる。



蓮はハンドルを握りながら、

再び妄想の渦に沈んでいった。


(遊び人の優里……!いや、だからって俺は逃げない!)


(数多の男たちを手玉に取っても、最後に俺だけを選ばせてみせる!俺が更生させるんだ!俺が優里の唯一になるんだ!!)


脳内劇場では、

キャバクラ風の衣装で笑う優里の手をガシッと掴み、

真剣な目で言い放つ自分がいた。


「もう遊ぶな。俺のそばにいろ!」


キラキラとスポットライト。

観衆からは拍手喝采。

「きゃー!蓮かっこいいー!」と、

なぜか群衆が盛り上がる。


(くぅぅぅ……!俺、最高に主人公……!)


……しかし、ふと現実に引き戻された。


隣でそっけなく腕を組む優里を横目に見て、

冷や汗がにじむ。


(っていうか……待てよ?)


(遊び人を更生させる俺!とか言ってるけどさ……現実は逆だろ。俺が元・遊び人で、優里は真面目そのものじゃねーか……)


過去の自分の姿が脳裏をよぎる。


飲み会で適当に女の子を口説き、

数日後には別の相手に同じセリフを吐き、

「俺、そういうの器用なんで」なんて調子に乗っていた頃の自分。


(……ああ、最低だな俺。)


(そんな俺が「更生させる!」とか、どの口が言うんだよ。むしろ更生されるべきは俺の方だろ……)


蓮は、優里の過去を更生だとか、

自分のエゴで塗り固めようとした。


だが、本当に遊び人だったのは誰だ?


「……いや」


蓮は、自嘲するように小さく呟いた。


「優里が遊び人だったとして、俺には何も言えない」


蓮は、ハンドルから手を離し、助手席の優里に向き直った。


その目には、熱狂的な妄想は消え失せ、

深い反省の色が浮かんでいた。


「俺の方が、優里よりよっぽど、遊び人だったんだよな」


蓮は、優里の過去をどうこう言う資格など、

自分には一切ないことを認めた。


優里のトラウマも、冷たい態度も、

すべて過去の遊び人時代の自分の報いだと、

蓮は静かに悟った。


「すまなかった。俺が、一番最低だ」


「この間の事も全部、俺が悪かった」


「傷つけて悪かった」


(いっそ俺の過去、全部チャラにしてくれないかな……。いや、チャラにしてくれるのは俺が優里を守れる男になったあとだ!)



蓮はハンドルを握りしめながら、

胸の奥で熱くこみ上げるものを抑えきれなくなった。


(俺は……変わるんだ!もう二度と過去の俺みたいに、チャラチャラして逃げたりしない!)


ぐっと顎を上げ、

まるで映画のクライマックスの主人公のような気持ちで口を開く。


「優里。どんな優里でも……俺は受け止めるよ。嫌いになったりなんかしないから」


蓮にとって、

これは過去の女たちには決して言えなかった、

渾身の甘いセリフだった。


優里の深い傷と、

遊び人であった可能性さえも包み込む、

蓮なりの最高の愛の告白だった。


車内に響いたのは、自分でも惚れ惚れするような低い声。


言った直後、蓮の心は一気に天井まで舞い上がった。


(……キマった!!!完璧だろ今の俺!これ絶対、漫画なら見開きの名シーン!!)


(優里、きっと頬赤くして俺のこと見つめて……)


意気揚々と隣を見た、その瞬間。


「……すぅ……」


優里は静かに目を閉じ、

シートに頭を預けて眠っていた。


(……は?)


(……はぁぁぁあああ!?!?今の俺の超絶イケボ、全部スルー!?)


思わず両手で顔を覆う。


(マジかよ……!俺の渾身の告白未遂が……ただの独り言!?あれ?このままだと、俺、すげぇ痛いやつじゃん!?)


ガクッと肩を落としながら、

優里の横顔を改めて見つめる。


寝顔は、いつもの鋭さや冷たさなんて欠片もなく、

ただ静かで……少し疲れているように見えた。


(……そりゃそうだよな。)


(この数日間、俺はひとりで妄想爆発させて、空回りして、自爆して……。でも優里は社長として会社を背負ってる。俺が遊んでた時間も、あの子は必死で走ってたんだ。)


胸の奥に、じわりと重い反省がのしかかる。


(御曹司とか言っても、結局俺は何もできてねぇ。ただのガキだ。優里の隣に立つ資格、今の俺にあるのか……?)


シートベルトを締め直しながら、唇を噛む蓮。


さっきまでの「キマった!」という自惚れはすでに影も形もなく、

車内には自分の小ささを噛みしめる空気だけが残っていた。


(……ダメだな、俺。もっとちゃんと、変わらなきゃ……)


ハンドルを握る手に、自然と力がこもる。


暗い夜道を走りながら、

蓮の頭のなかでは後悔と自己嫌悪がループしていた。


(……俺、ほんっとバカだな。どんな優里でも受け止める?嫌いになんかしない?あれ、結局俺のための自己満足じゃねぇか。口先でカッコつけて、結局なにも行動できてない。優里がどれだけのものを背負ってるか、俺は分かってやれてない。)


信号で車が止まると、蓮は深く息を吐き出した。


フロントガラスに映る自分の顔は、

情けなく歪んで見えた。


(優里は毎日、社員も会社も守ってる。社長として、誰よりも前を歩いてるんだ。)


(俺はどうだよ?御曹司なんて肩書きに甘えて、女遊びして、妄想して、空回りして……。)


(同じ時間を生きてきたはずなのに、立ってる場所が全然違うじゃねぇか。)


じわりと胸の奥が熱くなる。


それは情けなさからくる涙にも似た感情だった。


(……俺なんかが隣に立っていいのか?)


(今の俺じゃ、優里を守るどころか、逆に重荷になるんじゃないか?)


考えれば考えるほど、気持ちは沈んでいく。


隣のシートに眠る優里の姿が、

余計にその差を突きつけてくるようだった。


(……なのに俺は、寝てる優里に向かってドヤ顔で台詞吐いて、自分に酔ってたんだよな。)


(情けねぇ。ほんと情けねぇ。……優里のこと、本気で想ってるはずなのに、結局俺は俺のことしか考えてないんじゃないか?)


胸の奥で、ギリッと歯を食いしばる音がした。


(変わる。絶対変わる。優里に恥ずかしくない男になる。……でも今の俺は、ただの失敗ばっかりのクズだ。何様だよ、俺。)


そうやって自分を責め続け、

どんどん泥沼に沈んでいく蓮。


車内は静かで、聞こえるのはエンジンの低い唸りと、

蓮の荒い呼吸だけだった。




そしてそのとき。


「……本気、なんですか?」


唐突に、隣から弱々しい声がした。


蓮の思考が一瞬で止まる。


(……え?)


恐る恐る隣を見やると、優里は目を開けていた。


眠っていたはずの彼女の視線が、

真っ直ぐに蓮を射抜く。


(き、聞いてた!?全部聞いてたのか!?俺の独り言反省劇場を!?!?)


血の気が一気に引く。

蓮の脳内で警報が鳴り響いた。


(おわったぁぁぁーーーー!!!)







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