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第9話/地獄の門の先は地獄

「おえええええええ!!!!!」

 ボス部屋の扉を開けると、そこには地獄のような光景が広がっていた。


 あまりにもデカすぎる、蟻と芋虫が合体したような姿の「クイーンアースアント」が部屋の中央に横たわりどんどんと小さなアースアント達を生み出していた。

 しかも生み出されたばかりで表面が少しぬるついて見えるアースアントの子供達が、一斉にこちらへと襲いかかってくる。

 扉の横で顔色のおかしなマーライオンのようになっている僕をよそに、イオスは盾と剣を構え、グリムは爪を剥き出しにして飛びかかっていった。

 どうやら生まれたばかりだからか子供達はまだ柔らかいらしく、薙ぎ払うような一撃で二、三匹ほどまとめて処理されていく。

 なんとなくこの光景には見覚えがあった。100匹の小さな仲間達と共に敵を倒し、母星へと持ち帰るためのお宝を探す、某大ヒットゲームだ。

 その中の敵として出てきた、虫の女王個体。完全にトラウマと化し直視できないまま倒してしまったシーンを思い出し、また胃液が込み上げてくる。

「多分、女王も、転がったりして攻撃しでぐる、から……気をつけ、でッ、おげええええええ」

「分かった。ありがとう!」

「はぁーい」

 頼もしい返事と理解しているのか怪しい返事を聞きながら、口の中に残った胃液を吐き出す。

 二人だけで受け持つにはさすがに数が多すぎるのか、何匹かのはぐれアースアント達がこちらに気付いてしまった。

 口を濯ぐ暇もなく雑に手で口元を拭い、なんとか杖を取り出す。

「アーススラッジ」

 これ以上近寄られないようにアースアント達の足元を泥沼状態にし、女王蟻の方を見る。

 このまま全員でアースアントの相手をしていてはキリがない。誰かしらがあの女王蟻を退治しなければいけないのだ。

 「デッドリーポイズン、デッドリーポイズン」

 泥沼に毒属性の魔術を混ぜ込み、触れたアースアント達が身悶えながら絶命するのを見守る。

 体が小さい分、耐久力もないし毒も効きやすい。ただとにかく数が多いので、一匹一匹に魔術を使うわけにもいかない。そもそも根本を叩かなければこいつらは無限に増え続けるのだ。

「アーススラッジ、デッドリーポイズン」

 また吐きそうになりながらも毒沼を広げ、震える両手でぎゅっと杖を握りしめる。

 あまりの数に押され、イオスとグリムも少しずつアースアント達に囲まれてじりじりと女王蟻から距離を離されている。

 この状態で女王蟻をどうにか出来るのは、まだはぐれ蟻にしか目をつけられていない自分しかいない。

「……フライ」

 ゆっくりと深呼吸をすると、浮遊魔法を唱える。

 飛び掛かってくる蟻に捕まらないように必死で避けながら、女王蟻に近づいて行く。

 今はまだ派手に立ち回っているイオスやグリムに敵が集中しているが、ここで手を出したら僕が狙われるかもしれない。

 ぶるぶると震える手でぎゅっと杖を握り、女王蟻の尻尾に向かって呪文を唱える。

「アーススラッジ、アーススラッジ、デッドリーポイズン、デッドリーポイズン」

 とりあえず女王蜂から生まれてくる蟻の子達をその場で仕留めるべく、毒沼を敷く。

 

ピギャアアアア!!

ピギイイイイイイ!!


 狙い通りに子供達が毒沼に落ちて死んでいくのを確認しホッとした瞬間、異変に気付いたらしい女王蟻がドシンドシンと尻尾を打ち付けるように暴れ出した。

 毒沼にいた子供達が潰れるのも構わず尻尾を打ちつけ、こちらに向けて勢いよく子供達を投げつけてくる。

「うわぁ!! あすッ、あっ、アースフォール!!」

 慌てて土の壁を作って影に逃げ込むものの、どちゃどちゃと壁にぶつかって潰れ、引きちぎれていくアースアントに再び吐き気が込み上げてくる。

「ユーツ、大丈夫か!?」

 蟻の子供達が減り余裕が出てきたのか、イオスとグリムが声を掛けながら近寄ってくる。

「……多分、大丈夫」

 げぇ、と胃液を吐き、最後の手段として鼻で息をするのをやめて杖を構える。

「なんとか女王蟻の動きを止めるから、その隙に尻尾の先か頭を狙ってもらえるかな……」

「いーよ!」

「分かった、なんとか狙ってみよう」

 走り出したイオス達には目もくれず、クイーンアースアントこと女王蟻は狂ったように子供を投げつけてくる。

「アースフォール」

 強度が不安になってきた土壁の横に新たな壁を作り、そろりと様子を伺う。

 すぐさまその場に蟻を投げつけられ、慌てて壁の後ろに逃げる。

 相手が普通のアースアントであれば壁越しでもなんとかなったかもしれないが、相手は巨大な女王蟻だ。

 そんな中途半端な魔術ではどうにもならない。

「バリア、バリア。フライ!」

 あまり得意ではないので気休めでしかないが、自分自身にバリアを貼りながら浮遊魔法でその場から飛び上がる。

 なるべく直線的な動きにならないように飛び回りながら、杖にいつもより魔力を込める。

「アーススラッジ、アーススラッジ、カオスカース、カオスカース!」

 特大の泥沼に女王蟻を落とし込み、呪いで体を拘束する。

 ぐらりと揺らいだ体が地面に倒れる直前、様子を伺っていたイオスとグリムが同時に切り掛かった。

 鋭い爪が子供ごと尻尾を八つ裂きにし、炎をエンチャントされたショートソードが正面から頭をかち割る。

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